第171話 湖にて①
今日は色々と話し合って『うでの湖』に来ている。
しかし過去の転移者や転生者は半端ないな。
何処まで再現すれば気が済むんだ…
この場所だけ切り取れば『日本にしか見えない』
スワンボートに、洋風の豪華客船に似せた大きな船まである。
ご丁寧に近隣にあるお店や家は、どこかおかしい物の昭和のレトロ風の建物だ。
しかも看板が…日本語で書いてある。
最も下には異世界語で訳が書いてある。
『貸しボート』『黒糖饅頭』『スンゲン持ち』
『餅』が『持ち』と書かれているのが愛嬌だな。
前世で海外にある『リトル東京』とかいう日本の東京を模した街があったが、まさにこれは…それだ!
この場所は『良く静子に似合う』
静子は異世界育ちの異世界人だが、先祖に日本人がいるせいか、綺麗な和風美人に見える。
『静子』という異世界には不似合いな名前からも親が日本を好きなのは良く解る。
「どうしたのかな? セレスくん!」
思わず見惚れてしまった。
「いや、この場所は凄く静子さんに似合うと思って…」
「あの…セレスくん…そのね、ありがとう!」
こんな関係になっても、ふとした瞬間に顔を赤くするのが凄く可愛く感じる。
こういう何とも言えないしぐさは若すぎると出来ない。
うんうん、凄く可愛い。
「セレス、なに二人の世界を作ってるのかな? 私はこの場所に似合わない?」
「セレスさん、私は似合わないの?」
「セレスちゃん私はどう?」
「に…似合うよ」
前世の箱根は結構な観光地だった。
よく考えたら外人も沢山来ていたから…そういう意味で似合う。
観光している外人…いや少し違うかな。
「あれ?!なんだか静子と扱いが違う気がするー-っ」
「姉さん、それは…」
「セレスさー-ん?!どうしてかなぁ~」
「セレスちゃん、ちょっと扱いが違わない?」
「皆、セレスくんは別にそんなつもりじゃ…」
「「「静子は黙っていて」」」
「はい」
『ゴメン、助けられない』そんな目で静子は俺の方を見てきた。
ううっ…さてどうしようか?
此処は本当に前の世界の日本の箱根にソックリだ。
「この場所は本で読んだ日本という異世界の国にソックリなんだ。静子さんはまるで日本人みたいな容姿だから、似合うなぁ~とそう思っていたんだよ!」
「確かに『静子』なんて変わった名前、異世界人贔屓じゃなくちゃつけないよね…なるほどね!」
「『静子』なんて異世界の漢字の名前があるのは本当に珍しいから、そう言われてみればそうね」
「確かに静子の容姿は珍しいから…そういう事なのね」
確かにそうなんだよな。
ハルカもミサキもサヨも異世界『日本』にありそうな名前だけど漢字じゃなく、この世界の文字でそう読んでいるだけだ。
静子だけがこの世界の文字以外に漢字がある。
祖先や親が『日本贔屓』じゃなくちゃまずありえないよな。
「だけど、私自身が『静子』という名前の由来は知らないのよ」
俺も流石に、解らないな。
流石に前世の記憶は虫食いだからな。
『しずかなこ』位の意味は解るけど、これでは名前としての意味までは…流石に解らないな。
「『静か』には『せんさい』とか『しずか』という意味があるそうですよ? 流石にそれ以上は俺も知らないですね」
「流石はセレスくん…物知りね」
「まぁ、あくまで知識として知っているだけだよ! 折角、うでの湖まで来たんだから、名物のワカサギフライとブラックバスのお刺身を食べない?まずは腹ごしらえしよう!」
ちなみに両方とも本物じゃない。
ワカサギは小魚で似ているような気もするが、ブラックバスは本当に真っ黒な魚で口が大きい以外は…全然似ていない。
「そうね…私もお腹が空いたわ、そうしましょうか?」
「そうね、私も楽しみだわ」
「こういう、その土地にしか無い物を食べるのって良いわよね」
『三葉亭』と書かれているお店に入ってみた。
凄いなぁ~ ワカサギフライ以外にも天ぷらまである。
「いらっしゃい!」
見た感じからして定食屋の親父その物の人物が声を掛けてきた。
凄いな過去の転移者や転生者…ここまでやるのか?
「随分、その変わった服装ですね」
「ああっこれ? 大昔の異世界人が伝えた由緒正しい定食屋の服らしい、うちは先祖代々、これだ」
「似合っていますよ」
「そうか…ありがとうよ!」
皆が任せると言うので、俺はワカサギのフライと天ぷら。
そして偽ブラックバスの刺身…その他の料理を数品頼んだ。
見た瞬間…思わず感動してしまった。
フライと天ぷらや元より、刺身にワサビと醤油がついていたのだ。
「これはまさか、醤油にワサビ…」
「はい!この辺りは水が綺麗なんで『ワサビ』の栽培も盛んなんですよ!しかしお客さん凄いですね! ワサビや醤油を知っているなんて」
「まぁ、料理が好きなんで」
「だったら、食事を堪能してくれ! 自慢の一品だ」
「はい」
俺はフライに天ぷら、刺身の味に感動したが…
静子達皆からの評判は余り良くなかった。
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