第166話 本当は違うから
誰だ、こんなの作ったの…
あらかじめ予約を取った宿は コハネ大極園。
日本風の老舗高級旅館を思わせる綺麗な日本家屋の旅館だ。
こんなすごい旅館に泊まったら日本でも1人1泊5万円位はいきそうだ。
そんな凄い建物が異世界にある…凄いな。
昔の転生者、転移者...凄い…何もない所からこんな物を作るなんて。
最早、なんでも有りだな。
「凄いわね、セレスくん…なんて言ったら良いのか解らないけど…凄く立派な作りに見えるわ」
「セレス、凄いね、お城と違う意味で立派だね…うん」
「セレスさん、凄い宿だね…こんなの私見たことないよ」
「セレスちゃん、初めて見たわ、こんな珍しい建物」
皆が言うのも良くわかる。
この宿だけを見るなら『日本』にしか見えない。
異世界の中で此処だけ日本になった。
そう言われても信じてしまう位…此処は日本だ。
「ああっ本当に凄いね! 驚いたよ…」
転生者の俺から見ても凄いんだから、皆が驚くのは当たり前だな。
「「「「いらっしゃいませ~コハネ王セレス様~」」」」」
俺たちを歓迎するかのように…着物姿の女性が数人…?
なにやっているんだ?!昔の転生者、転移者!
確かにこれは着物だ。
うん…着物だよ…だけど…違うよ!
なんで丈がすごく短いんだよ…ミニスカ着物?
そんな感じだ。
おかしな着物じゃなくて普通の着物を膝上20センチ位にした感じの着物、それが一番近いかも知れない。
しかも、猫耳のカチューシャまでしている。
「セレスくん、何見ているのかな?」
「セレスっ、女の子の足ばかり見ないでよ、恥ずかしいよ」
「まぁまぁ、セレスさんも男の子なんですから…仕方ないですよ?」
「セレスちゃん、後でお話ししようか?」
「いや、違うよ!着物なんて珍しいから、つい見ちゃっただけだから」
「あら、お客様、着物を知っているなんて、なかなか通ですね!」
「そうそう、本では読んだ事あるけど、本物を見るのは初めてなんで驚いたよ」
「まぁ、こういう場所じゃなくちゃ、見られませんから、確かに珍しいですよね」
静子達4人は訝しげに俺を見ているけど…どうやら危機は一旦過ぎ去ったようだ。
「それじゃ、お荷物を…あらっ」
「ああ、荷物なら収納袋に入っているから、大丈夫だよ!」
「そうですか? 今回は貸し切りになっていますので、ご安心ください! それでは当旅館が誇るプラチナスイートにご案内させて頂きます!」
そういうと、着物姿の女性が先立って部屋に案内してくれたのだが…
階段で思わず驚いてしまった。
『見えてはいけない物がモロに見えている』
思わず見間違いじゃないかと目を疑ったが…後ろの静子達も驚いた顔をしているから…見間違いじゃない。
「あの…下着履き忘れていますよ」
小声で注意したんだけど…
「嫌ですよ!お客さん、着物を着るときは下着を身に着けちゃいけないんですよ。流石のお客様も此処までは知りませんでしたか?最初は凄く恥ずかしかったですが、これが異世界の『正式な旅館の正装』なんだそうです。今では慣れて誇らしく感じます」
誇らしげに胸を張る女性に俺は…
「そうですか…」
しか、もう言えなかった。
しかし、昔きた転生者に転移者、好き放題だな…
「「「「セレスくん(さん)(ちゃん)…異世界って凄いね」」」」
そういう静子達に…
「そうだね」
しか言えなかった。
本当の『日本は違うんだからね』
と反論しても仕方ないよな!
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