第165話 温泉へ!



コハネと言えばリゾートだ。


この前は海に行ったが、この辺りには山もあり温泉もある。


今度は何処に行こうか考えた俺は皆をつれて温泉に行く事にした。


ちなみに、今住んでいる城にも温泉は引かれている。


だが、どうせならちゃんとした温泉宿に行ってみたい。


そう思った。


最初は全員で行くつもりだったが諸事情で減ってしまった。


今回、参加するのは、静子にハルカ、ミサキ、そしてサヨだ。


セシリアやマリアーヌ、フレイ、シャロンに幼馴染三人は今回は不参加だ。


まず、セシリアだが


「私が今回は教会関係を押さえておきますので、ゆっくりして下さい」


そう言ってくれたので甘えることにした。


最近は教会関係が何かと仲良くしようと煩い。


確かに元聖女で教皇とも名誉教皇とも仲が良いセシリアなら歯止めがきくから、凄く助かる。


教皇達と一緒に温泉なんて浸かるのは出来たら避けたい。


フレイとシャロンは余り温泉に興味が無く、セシリア1人じゃ寂しいだろうと残る方を選んでくれた。


マリアーヌはかなり悩んでいたが結局は来ない方を選んだ。


もしかしたら、皆には、かなり気を使わせてしまったのかも知れない。


そして三人の幼馴染は、温泉そのものに興味が殆どなかった。


この世界では若い子に余り温泉は人気が無いようだ。


凄く気持ち良いのに…そう考えるのは俺が前世持ちで心がやや、おじさんだからなのかも知れないな。


それはそうとして久々の5人水入らずの旅。


村での生活を思い出して今から楽しみだ。


◆◆◆


馬車に揺られる事おおよそ1時間位で、最初の目的地、地獄谷に着いた。


今回は竜にならない…竜になれば一っ飛びだが風情がなくなるから敢えて馬車にした。


それでも同じ領地内だから1時間もあれば着くし問題ない。


「凄いわね、セレスくん、本当に地獄みたいね」


「凄い光景だけど、なんだか卵が腐ったような臭いだね」


「凄いわね、あちこちでボコボコと音を立てていてガスなのかな?噴出しているわね」


「この臭いのが硫黄の匂いらしいよ、慣れたらうん気にならないね」


「ここがコハネの名所の一つ地獄谷だよ!噂では黒卵が名物みたいだ」


「黒卵? セレスくん、卵は白い方が美味しそうだけど?」


「セレス、それ大丈夫なの?」


「まぁまぁ、名物なんだから見て見ましょうよね?!ねぇセレスさん」


「そうね、見てからの判断で良いわよね、セレスちゃん!」


「そうだね…まぁ嫌なら俺が全部食べるから平気だよ! 早速買いに行こう」


「「「「ええっ」」」」


ここコハネは俺の前世の記憶にある、箱根や小田原に近い。


だから、この黒卵も想像がつく。


確か、温泉池で卵をゆでると、その成分が何か…忘れた。


兎も角、それで卵の殻が真っ黒になるんだ。


だが、実際の卵は真っ黒じゃなく、紺とかに近かった気がする。


「おじさん、黒卵下さい!」


「あいよ5個入りで小銅貨5枚(500円)だ!」


「あちちっ、袋の上からでも熱いな!」


「そりゃ、そうよ…出来立てだからな!」


流石は観光地、コハネには他にも色々な物が売っていた。


何でも黒にすれば…良いってもんじゃない気もするが…


黒カレーに、黒アイス…黒い食べ物で一杯だ。


俺が作るカレーライス(モドキ)は皆に評判が良かったから案外いけるかもな。


「黒カレーも5つ下さい!」


「あいよ…これは結構スパイスがきいててうめーぞ」


「そう…楽しみにしている!」


アイスを買うかどうかは、卵とカレーを食べてからで良いだろう?


「お待たせ、早速買ってきたよ!」


静子達はやっぱりすごいな…


しっかりと場所を取って、飲み物とか準備してくれていた。


こういう細かな気配りがやはり違う。


「セレスくんが好きなのは紅茶よね?レモン入れて持ってきたわ」


「場所もとって置いたよ、セレスなかなかな眺めでしょう?」


「出先でどうかと思ったけど? 漬物を持ってきたのよ、セレスさん、これ好きでしょう?」


「セレスちゃん、私は煮物を持ってきたのよ!どうかな、これ好きでしょう」


「ああっ…ありがとう!」


俺は人に何かするのは嫌いじゃない。


寧ろ好きな人には『自分から尽くしても良い』そう思っている。


だが…


それでも、返して貰えたら嬉しい。


「なに言っているの!セレスくん」


「そうだよ、セレス!これは私達の為にセレスが準備してくれたんでしょう?」


「そうですよ?セレスさん!旅行なんて連れてきてくれる人はセレスさん以外いませんよ!」


「そうよ、セレスちゃん…お礼を言いたいのは私達の方だわ!」



「そんな…うん…まぁ良いや…黒卵と黒カレー買ってきたんだ食べようか?」


「「「「そうね」」」」


一緒に食べた黒卵に黒カレーは俺には凄く美味しく感じた。


だけど…


「セレスくん!あら、これ殻は黒いけど、中身はただのゆで卵なのね?」


「このカレーも、黒いけど、味はセレスの作ったカレーの方が美味しいわね!」


「そうね!セレスさんの味の方がもっと美味しいわ」


「これはこれで美味しいけど、セレスちゃんのカレーの方が上よ」


そう言われると…嬉しいけど、黒卵と黒カレーが微妙に思えてきた。








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