第159話 上手くいかないよな
「ごめんなさい、セレス様、本当に断ったのですが…なんならブレスで皆殺しにされても構いません」
セシリアがこんな事を言っているがそんな事出来る筈が無い。
俺の目の前にはロスマン名誉教皇にロマリス教皇、その後ろにはザンマルク4世にサイザー帝王…そして後ろが見えない位に長蛇の列になっていた。
「偉大なる我らが神竜セレス様、どうしてもお会いしたくはせ参じました」
「神の降臨、まさか私が教皇の時に起きるなんて…この奇跡を…」
頼むから泣きながら拝むの止めて欲しい。
折角のバカンスもこれで中止じゃないか。
◆◆◆
こういう時の宗教は怖い。
まずは、さておき、ロスマン名誉教皇にロマリス教皇と話す事になった。
なんで俺が世界で1.2の権力者と話さないといけないんだよ。
横にはセシリアが氷の笑顔で二人を睨んでいるが、気が重い。
なにを話せば良いんだよ…冥界竜バウワー様と女神イシュタス、どういう関係だ。
まさか異端だなんてならないよな?
ニコニコして俺を見ている二人に嘘をついても仕方が無いので、様子を見ながら話し始めた。
「まず、俺は女神には会ったことは無い…俺の仕える神は『冥界竜バウワー様』になる…そしてその眷属が俺の立場だ」
「めめめ冥界竜バウワー様…ですか? 死の世界を支配すると言われている、女神より遥かに神格が高いと言われている伝説の神竜様」
「まさか、本当に存在するなんて思いませんでした、確かに教会は一神教ですが、その女神を超える存在が居るという話はあったのです。その中でも冥界(死後の世界)を支配している存在がおり、その存在がバウワー様だという話でした。その眷属なのですね…女神降臨処の騒ぎじゃない…セレス様は…ハァハァ心臓が止まるかとおもいました、これは不味いですねロスマン名誉教皇」
「そうですね…すみませんセレス様! そこ迄、そこ迄の方とは思わなかったのです…神竜様とはいえ、女神様より神格は下だと思っていまして…どう詫びて良いか…うぅっスミマセン」
「どういう事ですか?」
不味かった。
バカンスなんてしている時では無かった。
名誉教皇と教皇が大司祭や司祭に命令して女神の横に黄金の竜の像を、全ての教会で設置したと言い出した。
その像が女神イシュタスより小さいのだと言う。
冥界竜バウワー様の眷属であれば神格は、もしかしたらイシュタスより上の可能性があるから、大きく作り替える…そんな話だ。
「あの…どうにかなりませんか?」
ただでさえ、可笑しな生活を送っているのに…もうこの辺で勘弁して貰いたい。
「どうにかとはどういう事でしょうか?:」
「神竜様の願いなら何でも聞きますよ! そうだ中央大聖教教会を住みやすい様に作り直して住みますか?」
いや、俺が望んでいるのは『平穏な暮らし』だ。
今の暮らしで充分。
まして神等と扱われたくない。
「いや、俺は、今のままで良い、いや寧ろもっと静かに平穏に過ごしたい」
「セレス様、神竜様、それを望むのであれば…教会は全力で応援しますよ、ですが…既に貴方様は神なのです」
「そして、それは全教徒に知らせてしまいました…今現在、勇者保護法は英雄保護法になり…そして撤廃しました」
「それでは、俺にはもう特権は何も無い…そういう事で良いですか?」
「何を言われるのですか? セレス様は『神』なのです!」
「法律の外に居る存在…欲しい物があれば何でも言って下さい! それが人であろうが物であろうが聖教国が責任を持ってご用意します」
「そうですよ、生きとし生ける者全てはセレス様の物…はははっ冥界竜バウワー様の眷属なら死後もセレス様の物、この世界の全ての物は女神イシュタル様の物という考えがあります。それより上かも知れない存在のセレス様の物と考えて良いでしょう」
「それはどういう意味でしょうか?」
「「この世の全てはセレス様の物、そういう事です」」
なんでこうなる?
「俺は静かに暮らしたい、それだけが望みだ」
「ならば…王や帝王に命令して、叶うようにしましょう」
「お任せ下さい」
絶対に、そんなに上手くいかないよな…これ。
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