第157話 バカンスへ② これはこれで



「「「「「「「「「「お待たせ」」」」」」」」」」


なんだこれ?


『これは俺が思っている水着じゃない』


今、俺は露天風呂に来ている。


今思えば、俺はなんて馬鹿な事をしたのだろうか?


一緒にお風呂に入るなら水着より『そのまま』の方が良かったんじゃないかな?


混浴を楽しんだ方がきっと、もっと素晴らしい物が見られたはずだ。


しかもな…しかもな…


「セレスくんが見たいと言うから着てみたけどどうかな?」


「恥ずかしいのを無理して着ているんだから、もう何かい言いなさい!」


「セレスさん、どうかな?」


「セレスちゃんどう?」


「こう言うのは初めて着ましたが恥ずかしいですわ」


「薄着の防具の方が露出凄いんじゃないか?」


「水着なんてどうして見たかったのですか? 似合ってますか?」


「皆、似合っているよ!」


「セレスはどうして、これが見たかったのか僕には解らないよ」


「リダ、セレス様だよ…まぁ同感だわ」


「セレスって、偶に変なこだわりがあるよね」


「だから『様』はつけようよ? 私達は家臣なんだからさぁ、リダ、メル、でも変わっているのは確かだけどね…」


俺が見たかった水着はこれじゃない。


これは、俺の知っている水着じゃない。


ビキニでもワンピースでも無く、一番近いのは縞々の無い前世の囚人服だ。


今迄、海が無い地域だから知らなかったんだ。


確かに川遊びの時は普段着だったよ。


記憶違いかも知れないけど、スク水っぽいの着ていた子供がいた気がしたんだけど、上にシャツを着ていたから、もしかしたらブルマみたいな物だったのかも知れない。


転生者、転移者…何やっているんだよ。


色々あるなら、此処はしっかり…伝えるべきだよな。


これなら、混浴の方が良いよ。


失敗したな~まぁ良いや。


「セレスくん? もしかしてガッカリしていない? だから言ったじゃない…私達はもう良い歳なんだからね」


「そうそう、もう若くないんだから期待されてもね」


「そうね、せめてあと10歳若くないと肌に張りが無いから」


「うふふ、だから言ったじゃない」


浴衣はしっかりあるみたいだから、この後に期待だ。


「いや、そうじゃ無くて、俺の知っている水着と違う…ぶっ」


「どうかされたのですか? 急に顔を赤くされまして」


「どうかしたのか?」


「どうかされましたか?」


「可笑しな奴だな、母さん達を見て急に赤くなって」


「どうかしたのかな? セレス」


「リダ『奴』は流石にないわ、メルもまた呼び捨てになっているよ気をつけないと…だけどセレス…様顔が赤いよ」


そうか…気がついてしまった。


転生者や転移者は『この光景が見たかったから』敢えて普通の水着を伝えなかったんだな。


はっきり言えば、これは水着処じゃない位にエロい。


薄い生地だから肌に貼りついて透けている。


よく時代劇で高貴な人が薄い着物を着てお風呂に入っているシーンで白い着物が肌に貼りついて透けて見えるシーンがあったが、あれと同じ。


しかも見た目が囚人服でも長袖長ズボンじゃなくて半袖半ズボン位の丈だから…全てが見えてしまう。


「いやだ、嘘、これお湯を浴びると透けちゃうわけ…うふふ凄いわねこれ、セレスくん以外の男性には見せられないわ」


「セレス…知っての? これ凄いよ…」


「セレスさん、これ流石に恥ずかしいわ」


「これ、貼りついて肌が透けてみえるじゃない、セレスちゃんも大人ね」


「まぁ気にしたら負けですわね…これはこういう物だと思えば良いのですわね」


「そうだな、皆でプールで泳ぐときにはこの恰好だから、まぁそう言われてみれば恥ずかしくなるけど」


「見られて困るものじゃないですが、これは裸より恥ずかしいですね」


「セレス、これ知っていたの? 凄いねこれ」


「確かに凄いかも」


「だけど、もうセレスにしたら慣れっこじゃないかな」


確かに同じパーティの時には否応なしに裸を見るような事はあったし、静子達とはもう…


だが、それとこれは別だ。


だけど…前世の水着なら、普通にガン見出来るけど。


此処迄透けていると、それをしたら…変質者みたいに見える。



結局、俺は…鼻血が出そうになり、恥ずかしさから、余り皆を見られなかった。









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