第155話 魔族の信仰




正体を見た瞬間から解ってしまった。


あれは最早、人や魔族がどうにか出来る存在ではない。


もし、今現在余の元にマモンが居て、四天王が全員揃い踏みで魔族が全員で掛って勝てるか?


恐らくは『全員が殺されて終わる』そんな未来しかない。


そう思えてならない。


だからこそ降るしかない。


幾ら余が魔王でも『神』なんて存在に勝てるわけが無い。


この世界には人間側の神として『女神イシュタス』が存在する。


そして我が魔族にも祀るべく『邪神様』が存在する。


だが、この二人の神は理由は解らないが直接魔族と人間の戦争には関わらない、精々が神託がおり声を聞く事があるだけで顕現すら無い。


そして魔王と一部の存在だけが知るこの世界の『真実』がある。


それは死後の世界を支配しているのは『女神イシュタス』でも『邪神』様でもなく、『神竜の一族』という事だ。


『冥界竜バウワー』を中心に偽りの不死ではなく『真の不死』を持つ一族がいる。


伝説ではなく稀にだが見かける事がある一族だ。


伝承であれば竜を殺し続ければ、何処からともなく現れると言う。


その伝承を恐れ魔族は竜を基本的に狩ることは無い。


ある意味共存共栄をしていた。


そして、その存在を余達は目にした。


凄い隠形だ。


あった瞬間はまるで人間。


あれなら高位魔族であれば殺せる…その程度の存在に思えた。


だが…その正体は、まるで山の様に大きな竜であった。


大きさだけでもとんでもない脅威だ。


下手すればその一撃で魔王城すら大打撃を食らうであろう。


体が震え、最早頭の中には『服従』の二文字しか浮かび上がらなかった。


四天王のうち二人が『神』と認めてしまった。


フェザーの翼の一族は、今でこそ血が薄れてしまったが気の遠く成程昔に堕天した天使の末裔と言われている。


そしてスカルキングは『死』に関して口が重いがそれを知る者だ。


その二人が『神』という以上あれは『神』で間違いない。


「魔王よ、良き判断である、あの方こそは冥界の支配者の一族『神』である、真に怒らせてしまえば『死』を持っても逃げられぬ苦痛を味わうであろう…だが味方になって貰えるのであれば、まさに新たな神を得た物のようなもの」


「あれはまさに『神』私の心の中に眠る忠誠が、逆らってはいけないと語り掛けてくるのです」


「俺はそんなのは知らないが、あの方がこの世界で最強なのを知っているぜ」


「あの方を敵に回したら、一緒に死ぬ未来しかない…」


戦う前に既に四天王は役に立たない…そして余もあの方を前には『死』しかない。


「解っておる…あんな姿を見て気を浴びてしまったら逆らう気など起きぬ、だからこその大魔王の地位だ…最早『忠誠』それしか無い…だが、これからどうするか大きな問題がある」


「魔王ルシファードよ、あれこそが冥界の支配者の一族であり『神』である。それはこのスカルキングが保証しよう」


「私も『神』であることは保証は出来ます」


「それは解る…セレス様は『神』だだからこそ大魔王になって頂いた。これから先は中立で頂き、最早人間とは戦う事が無い未来を目指すしかない…だが魔族には既に『邪神様』という祀っている神がいる、そして余は幾度となく神託を受けているではないか? どうすれば良いのだ?」


人間を守護する女神イシュタスと対になる『邪神様』と常に顕現し存在する『神竜』


我々は今後2柱の神…その間で我々はどうすれば良いのだ。


「四天王よ…悪いが魔王城についたら邪神神官と今後について話し合いを頼む」


「「「「はっ」」」」


何故、余が支配している時にこんな大事ばかりが起きるのだ。


どうすれば良いのか、余にも最早解らぬ。






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