第154話 大魔王…



俺の背後に老人が一人たっていた。


今現在、ゾルバ達はこの国の外れに仮住まいさせている。


そして、その外にはスカルキング達の住んでいる場所がある。


途轍もない気が駄々洩れしている。


こんな存在、マモンの部下や四天王が見逃すはずはない。


よく見ると、老人の横に綺麗な女性が立っている。


1人じゃなく2人なのか?


この風格にたたずまい、その横の綺麗な女性には羽がある。


まさか天使か?


不味い不味い不味いぞ…天使を従えている存在。


それは神だからかだ。


神であれば、スカルキングやゾルバが素通りさせるわけだ。


だが、この世界の神は女神1人の筈だが…


冥界竜バウワー様が居るのだから、他にも神が居ても可笑しくはない。


「夜分遅くにすまぬな…こうでもしないと話が出来ぬのだ、済まないが他の者には眠りの呪文で眠って貰った、当事者である二人は暫くしたら此処にこよう」


眠らせる?


静子達もそうだが、一応此処には三職がいる。


三職も含み全てを眠りにつけるような呪文…そんな物を行使できるのであれば、それは神だ。


だが、神にしては可笑しい…バウワー様の時に感じた恐怖は感じない。


精々がマモン位しかも、アークスになったマモンじゃなく、魔族の時のマモン位だ。


頭の中でシミュレートしてみたら…簡単に殺せる。


だが、何か隠し玉を持っているのか?


「貴方は一体…」



「余の名前はルシファード、魔王と言えば解るかのう、そして此処に居るのはフェザー、そしてその横にいるのはダークゴルダーだ。ダークゴルダーはもう知っているな」


もう一人居たのか、なかなかの隠形だ気がつかなかった。


「確かにマモン軍団を連れてきた時に居たな」


「そうだ、それでお前に聞きたい! お前は神なのか?」


神?


俺が?


神竜だからか…


「俺の正体は兎も角、俺はただ平凡な生活が送れれば良いそう願っている、人間のつもりだよ」


「ただの人間なら跪くのだ魔王御前である」


「そうね、たかが人間なら魔族の我々に跪くべきだわ」


なんだか面倒くさくなってきたな。


「貴様聞いておったぞ!たかが魔王の分際で偉大なる我が盟主、我が神にあだなすとは殺すぞ…ルシファードにダークゴルダー、フェザー」


「ふっ、お前等などセレス様の手に掛かれば数秒で消し炭だ」


「貴様、魔王様を裏切った挙句に、その言い分はなんだ斬る」


「出来る物ならやって見よ…」



本当になんでこうなるんだよ。


此処に魔王を始め魔国の重要人物がそろい踏みじゃないか?


「あんたが魔王だと言うならこの場を上手くおさめてくれないか?」


「ふぅ、どれ程の存在かと思えば、たかが人間が図が高い、我は魔王、ルシファード、この場で一番弱いお前が何故指図をするのだ? 死にたく無ければ、そこで震えているが良い」


そうか、最近怖がらせない様に気を押さえていた。


だからこれか。


もう良いや…このままじゃ不味いから『押さえつけるしかない』


「竜化」


此処は外で皆が寝ているなら問題はない。


「たかが魔王や四天王の分際で…良く跳ねたものだ、我が名は竜公が1人黄竜! 死の世界を支配する冥界竜バウワー様の眷属が1人だー――っ」


「これで解ったであろう魔王よ、セレス様こそが『神』この不死の王が真に仕える神なのだ」


「この世で1番強いのはセレス様よ!マモン様無き今俺達が心から仕える存在なのだ」



「かかかっ神…神竜、私は逆らいませんよ、我が翼の一族はその昔は天使から堕天した一族の成れの果て、神竜、しかも竜公なら仕えるに不足はありません、こんな爺じゃなく貴方に仕えます」



「フェザーお前は裏切るのか...」


「無理ですよ…この人本物の神です、私達『翼の一族』は元は天使に繋がりますから…神に反応して逆らえなくなるのです…スミマセン」


「ダークゴルダー、お前は」


「諦めましょう…幾ら考えても勝てない、魔王様を脱出させる事も無理、戦った瞬間に死にます」


「そうか余は馬鹿な事を、偉大なる神竜セレス様、この度の事は余が全て悪い。余の命で他は許して欲しい、馬鹿な事です、本当は貴方に庇護を求めるつもりが侮り、馬鹿にしこの始末…」


俺、何も言ってないよな…ただ恫喝して名前名乗っただけだよな。


「待て、魔王ルシファード、庇護とはなんだ」


「最早魔国は風前の灯び…ゆえに庇護を求めて来たのです」


魔王が来たなら簡単だ『返品だ』『返品』


「そうか、それならスカルキングにゾルバ、すぐにでも魔国に帰るのだ」


今は停戦中とはいえ魔国が弱体化したら人間側がどう動くか解らない、元に戻した方が良いだろう。


「待って下さい、偉大なる我が神よ、我が忠誠は貴方様だけの物です」


「俺も同じだぜ!マモン様が認めた唯一の男、セレス様にしか仕える気は無い」


「私の祖先は天使…身も心も捧げます」



いい加減にして欲しい。


今追い返せれば、全てが丸く収まるのに…帰ってくれないかな。


「それでは魔王様、こんな提案は如何でしょうか?」


「ダークゴルダー、何か妙案があるのか?」


なんで小声で話しているんだ。


聞こうと思えば聞けるが、それは無粋だな。


スカルキングにゾルバにフェザーも加わって…あっこっちを見た。


「セレス様、皆は魔国に帰る事を了承してくれましたぞ」


「そう良かったな」


「それで庇護の話ですが」


「そんな話だったな」


嫌な予感がする…なんだこの顔。


4人と魔王ルシファードのこの顔、まるで教皇みたいな顔だ。


「魔国の支配をセレス様に譲ります…最も余が代わりにおさめますのでご安心下さい…」


何を言い出すんだ。


なんで俺に跪く。


「「「「「偉大なる『大魔王 神竜セレス様、我々は貴方様に生涯変らぬ忠誠を誓います』」」」」


「はい?」


はぁ~もう良いや。


今だけでも平和なら…もうそれで良い。


「もう、大魔王で良いから…人間側には言わないでくれれば良いよ….そして頼むから魔国に帰ってくれ」


「「「「「はっ仰せのままに」」」」」


取り敢えず危機は去った。


だが…どうしてこうなるんだよ…これ本当に幸せなのか…





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