第153話 平凡な幸せは手に入らないのか




俺はただ、嫁さん達や幼馴染と楽しく過ごしたいだけなのに…


そんな願いは叶わず、どんどんトラブルが押し寄せてくる。


黄竜の幸運は俺の気持ちなんて考えてくれないのだろうか?


これの何処が幸運なんだか解らない。


傍から見れば幸せなんだろうな…


気がついたら一国の国王。


自分にとって理想的な女性が1人でなく全部嫁さんになってまるでハーレムみたいな生活。


そして神にも等しい『竜』の力を持ち敵を圧倒する。


普通に考えたら何処のチート野郎だ…そう思うよな!


文章にすると幸せだよ、確かに。


でもな、俺の現状は、思ったより凄く『辛い』


本当に辛い。


此処はコハネなんだよ!


最高のリゾート地なのに、買い物をして、海鮮を食べて、リダと魚釣りをしただけだ。


此処の城にも風呂はあるから、温泉の湯には浸かったけど。


まだ露天風呂にも行って無いし、海水浴もしていない。絶景と呼ばれる場所にも勿論行って無い。


何も未だに楽しんでないんだ。


それでも『羨ましい』そう思うんだろうな?


だが、胃が痛い。


まぁ『竜』だから本当は痛くないけど、髪を掻きむしる位、悩みが一杯だ。


スカルキングとゾルバで近くに国を作り、俺が王になるなんて話をしていた。


確かにコハネの自衛に繋がるし『要らない』といって他で暴れたら困るから断れないじゃないか。


だが、魔族の軍勢の半分を持った国の王。


最早これ第二の魔王じゃないか。


実際にこの話が進んでいったら、教皇から各国の王まで話をして調整しなくちゃならなくなる。


人間側が受け入れてくれても、果たして半分の軍勢をとられた魔王が黙っているのだろうか?


きっと何かしてくるに違いない。


これだけでも頭が痛いのに…


竜化した姿を見られて人間側では『神竜』扱い。


神様なのは良いけど…もう下手したら人間として扱われないんじゃないかな?



今はどうにか待って貰っているが近く教皇達が来るそうだ。


最早、もう滅茶苦茶じゃないか。


これの何処が幸せなのかな?


俺は本当に『平凡』で良いんだよ。


コハネの王。


もう此処でストップで良い。


なんなら、それすらも要らない。


『オークマンが羨ましい』


あれで良いんだよ!


普通に一生懸命働いて、大好きな嫁さん達と楽しく暮らす。


お金に多少余裕があり、嫁さんや子供と美味しい物を食べ、欲しい物を買ってあげられる位の余裕のある生活。


家は王都でも帝都でも良いしジムナ村でも良いんだ、そうだな人数が多いから、家の広さだけは欲しいが、後は普通で良い。


皆で畑を耕し、早目の風呂に入って、夜は嫁さんとエールを楽しむ。


それで良かったんだよ。


◆◆◆


俺は今の現状を静子達に話した。


「セレスくんが思うようにして良いのよ?」


「そうそう、そんな難しい事私は解らないから、セレスに任せるよ」


「そうねセレスさんのお好きに!」


「セレスちゃんの好きにして良いのよ」


「貴方はもう神なのですから、ご自由に!」


「多分、私のお父様も..もう何も反対はしないと思います…絶対に」


「あははっ、私の方も大丈夫だと思うよ!帝王なんて言われても、実はもう勇者ゼクトにもビクビクしているんだから、絶対に文句なんて言わないよ」


「そうだな…そうか…」


最早、相談にならない。


ちなみに幼馴染三人は「「「家臣だから」」」そう言ってこの場にも居ない。


「この際、シャロンでも良いから、何か意見ないかな?」


この際、何でも良いし、誰でも良い。


「私は使用人ですから…その」


「そう言うのは良いから、何か意見を頼むよ」


「あはははっ、そうですね、セレス様は『ゴッドギャンブラー』ですから自由にすれば良いと思いますよ! 博打で絶対に負けないんですから! 博打だと思えば、絶対に良い結果しか出ません…大丈夫です!」


「そうか…ありがとう」


誰も意見を言ってくれない。


結局、俺一人で決めるしか無いのか?


仕方が無い…『1人で』考えるしかないな。


本当に何時になったらゆっくりとした生活が送れるのだろうか?


全部誰かにそういえば、すっかり忘れていたがここコハネはコルダという優秀な代官が居る。


すっかり忘れていたよ。


そうだ…


「セレス様、私はあくまで代官ですよ? 地方領主の仕事は出来ても、そんな世界を揺るがすような仕事は出来ません」


俺にとっての『幸運』じゃないのか?


俺が望むのは『平凡な幸せ』だけなんだ。


誰も頼れない…そう考えた俺は、頑張るしかないと一人考え始めた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る