第151話 【閑話】魔王の憂鬱




「スカルキングが離反しただと!」


「はっ、済みませぬ、もし止めるなら戦うと言われましたので」


「その判断は仕方が無い」


シルフィードが死に、フェザーにはまだ四天王の荷は重過ぎる。


マモンは居ない。


今の魔王軍にスカルキングを止められる存在は余とダークゴルダーしか居ない。


そしてダークゴルダーはまだ帰ってきていない。


スカルキングを止められなくても責められない。


問題は、多すぎる。


マモン軍団は追放した。


その上四天王の一人は処刑した。


ダークゴルダーとスカルキングこの二人は魔国の為に必要だった。


特にスカルキングは『死霊』という人間に対しての切り札を持っていた。


殺した存在が『死霊』になる。


つまり、殺した人間が死霊になりこちらの味方になる。


人と戦う為に必要な最強の切り札の一つだった。


それが失われた。


ダークゴルダーだけじゃ防戦は出来ても、攻撃に出られない。


フェザーじゃ名ばかりの四天王でまだ指揮は出来ない。


今もし戦争になれば、もう終わりだ。


「そういえば、スカルキングが何故此処を出て行ったのかは解っておるのか!」


「それが…」


「それがどうした? 怒らぬから言ってみよ!」


この間から、こう皆から恐怖の目で見られて困る。


確かに少しやり過ぎた。


だが、こうも委縮されたら話もしづらい。


「はっ!それが…」


「それがどうしたのだ、はっきりと言うが良い」


「はっそのまま伝えます『我は神を見つけた!真に仕える存在が見つかった今、偽りの王等に仕えている暇など無い』」


「なっ余を『偽りの王』と愚弄しおってからに!」


魔王相手に良く言った物だ。


だがスカルキングが言う『神』とはなんだ!


魔族が信仰する『邪神様』ではない筈だ。


あやつは『不死の王』もしこの世界に女神が顕現した所で仕える筈が無い。


あの不死の王スカルキングが仕えると言う存在。


そんな存在は1柱しか思いつかない。


『冥界竜バウワー』だ。


竜でありながら神を超える存在。


幾人もの神を食したと言われる恐怖の象徴。


そして『死の世界を統べる存在』


どんな存在も『死ねば全部バウワーの物になる』


『死』の世界を統べる存在。


『不死の王』が崇めていても可笑しくはない。


「そうか、解った!下がっても良いぞ」


「はっ」


相手がバウワーであるなら、もうスカルキングは帰ってこないだろう。


◆◆◆


考えれば考える程解らない。


マモンを倒したのは竜の力を持った人間。


余はドラゴニュートと考えていたが、果たしてそうなのだろうか?


マモンは完全なバグだ。


普通のドラゴンなら簡単に倒し、万の軍勢ですら敵わない。


もしマモンを倒せるようなドラゴニュートなら、かなりの高位の竜と人間との間に生まれた存在という事になる。


そんな存在いるのか?


普通に考えたら居ない。


しかも、もし居たとして若いドラゴニュートな訳ない。


幾らドラゴニュートでも強い存在になるまでは、時間が掛かる筈だ。


マモンを倒せるような力を蓄える間、無名でいるものだろうか?


そんなわけないだろう。


それに人に与するなら、何故今なのだ。


そう考えたら『今迄存在しなかった』それが正しいのかも知れない。


だったら、冥界竜バウワー本人、もしくはその眷属が『冥界』から来たのかも知れない。


繋がった。


冥界の支配者…それならスカルキングが『神』と呼んでも可笑しくはない。


これは人と争っている場合ではない。


『魔王』そんな地位になんの価値がある。


冥界竜バウワーに繋がる様な存在。


マモンを倒し、スカルキングが『神』と仰ぐ存在。


それがコハネという国に居る。


今は人とは停戦状態。


すぐには戦争にはならないだろう。


だからこそ『コハネ』だ。


この先、魔族の安全を望むなら…コハネの庇護下に入る。


そういう選択が正しいのかも知れない。


マモンを倒し、スカルキングが『神』と呼ぶ人物には礼を尽くすべきだ。


余が直に会いに行く。


それしか無いだろうな。

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