第149話 どうして良いか解らない。
俺は今、人生最大の危機に陥っている。
「僕の方を見ても無理だよ! 言ったよね? 帰ってきたら大変だって…それじゃ…」
「私に頼っても無理だから、今のママ達は…ごめん、マモンより怖いから…」
「ごめんねセレス、私は役に立たない」
「リダ、マリア、メル、家臣という者は、こういう時こそ守ってくれる物じゃないか、頼むよ!」
「「「無理だから」」」
「ああっ」
「ああっ!じゃないですよ!セレスくん!なんでいつも黙って行くの!心配したんだから!」
確かに、そう言われたら言い返す言葉も無いな!
女性の涙は本当にズルい!
「ゴメン、静子さん」
バシツ。
ハルカに頭を叩かれた。
いつもの事だ。
「姉さん痛いよ!」
「ふんっ! 痛いで済んで良かったわね! 相手はマモンだったんでしょう? 場合によっては死ぬわよ!」
うん、本当に死んでいた。
これは黙っておこう。
「セレスちゃん反省しましたか?」
「反省はちゃんとしています、ごめんなさい!」
「セレスさん、口だけじゃ駄目なのよ! 昔はあんなに素直だったのに…目が泳いでいるね! それは反省して無いんじゃないかな?」
嘘は良く無いな。
「心配掛けた事は、心から反省しているよ!だけど、もし俺が蹴ったら、きっと皆が大変な思いをするだから、逃げられなかったんだ」
「まぁ、セレスくんならそう言うわよね! セレスくんがもし受けなかったら、多分次に話が行くのはうちの馬鹿息子に行くわ…仕方ないな」
「静子…甘いよ! 別に私はセレスが行った事を責めているわけじゃ無いのよ!セレスが行かなければ、うちのリダにまで話が行くかも知れない、幾ら戦えない、戦いたくないっていってもあの子は『剣聖』だからね! 私が怒っているのは何も言わないで出て行った事に怒っているの! 察しなさいよ!」
泣きながら叩かれたらどうして良いか解らなくなる…
「セレスちゃんがマリアの事を気遣ってくれて戦ってくれたのは解ったわ、だけどなんで一人で行くの? 相談もしないで」
「セレスさん、いつも何で相談もしないのかな?」
答えは決まっている。
それは彼女達が『妻』だからだ。
俺は、前世の記憶があるから、精神的に老けているのかも知れない。
だから、強い旦那で居たい。
時代遅れと言われるかも知れないが『家族を守る人間』になりたい。
「きっと相談したら4人とも『来る』って言うんじゃないか? そう思ったんだ! それにもし止められたら心が鈍るかも知れない。だから…幾ら言っても言い訳だね…ごめんなさい」
「セレスくん、ズルいな…そう言われたらもう怒れないじゃない」
「そうね、もう良いわセレス」
「セレスさんが反省しているならこの話はこれで終わりで良いかな」
「セレスちゃん、余り心配掛けないでね」
「これからは気をつける、ごめんなさい!」
「「「「解ったなら(いいわ)(いいよ)(いいですよ)(いい)」」」」
もう、あんな怖い相手と戦かう事は二度と無いだろう。
うん、もう大丈夫だ。
「話は終わりましたわね! まずは私の国を救ってくれてありがとうございます。セレス様!お父様からの伝言で欲しい物があったら何でも言って欲しいとの事ですわ? 国宝でも欲しい土地でも何でも差し上げると言っていましたわ」
「特にないな」
「そうですの? あの後王国に顔を出して欲しかったとお父様が言われていましたわ。大掛かりなパレードや宴を行いたかったそうですわ」
「ああっ、流石にマモン相手に戦って疲れていたから顔を出さずに帰ってきたんだ、宜しく言って置いて…でも恩にきてくれるなら4人相手に少しは庇ってくれても良かったんじゃない」
「それはですね、怒っている静子さん達には…私では無理ですわ」
王女でも無理なのか…
「そうそう、それに今回の件はセレス様が悪いんじゃない」
「確かにそうだね、マリアーヌにフレイ、俺が悪かったよ」
「『神殺しの神竜様』が謝る事はないですよ! この世で唯一この世に存在する神なのですから! セレス様は私達の夫でもありますが『神竜様』なのです。しかも、別世界に旅立った神、軍神アークス様と死闘をし、死にながらもこれを払いのけたお方…このセシリア、身も心も全て捧げます…それにロスマン名誉教皇様もロマリス教皇様も、日程を合わせてこちらに来るそうです、その際にはザンマルク4世とサイザー帝王も伴って来るそうですよ」
「それ上手く断れないかな」
「セレス様が嫌なのであれば『本気』でお断りします! セレス様は女神様と同等の存在!名誉教皇でも教皇でも断れますからご安心下さい! 教会ではセレス様の像を作り全ての教会に設置も考えて」
不味いな。
しっかり見られていたのか…
「セシリア、セレス様が『神竜』ってどういう事?」
「私も初耳ですわ」
「あらっ静子さん達は兎も角、王族が知らないなんて、しかもマリアーヌは国を救って貰いましたのに…教えて差し上げます! セレス様は黄金に輝く神の竜なのです! 教会に密かに伝わる女神以外の神の一族、まさか会えるなんて思いませんでした」
「「「「「「「それは嘘でしょう」」」」」」」
近くで給仕をしていたシャロンまで固まってしまっている。
普通に考えたら信じられるわけが無いな。
だが、もう此処迄来たら、話すしかないだろうな?
「まぁ、理由があって『竜公』セシリアの言う神竜になったんだ」
俺は皆に説明をしようとしたが…
いきなり騎士が駆け込んできた。
「大変です! 大勢の魔族が此処に押し寄せてきた」
「「「「「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)」」」」」」」
「あっ皆は此処に居て、行ってくる!」
「「「「「「「待(ちなさい)って」」」」」」」
◆◆◆
見渡すばかりの魔族がコハネに押しかけてきていた。
なんだこれ、まさか魔国と戦争になるのか?
こうなったら
「ドラッ…」
「偉大なるセレス様! 貴方に仕える為に此処に来ました、生涯の忠誠を貴方に!」
「マモン軍団…」
「もう、我々はマモン軍団じゃない! セレス軍団です! マモン様は軍神アークス様になって別の世界に行かれました! 我々が仕えるべき存在は『強き男』です! この世で一番強いのはセレス様だと気がつき仕える為にきました」
『きました』じゃない。
そうするんだ、これ?
「四天王より魔王の方が強いんだろう? 魔国に帰れよ」
「はっはっはお戯れを、軍神となったマモン様とあそこ迄戦える存在などセレス様しかいません! 貴方様に比べたら魔王なんて虫けらです」
これ、何人いるんだ…
「何人いるんだ、こんな人数俺には養えないぞ」
「はっはっは!流石にこのゾルバでも数は把握していません。ですが魔国の戦士の約1/4以上は居る筈です」
「「「「「「「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)」」」」」」」」」」
「これどうすれば良いんだ」
妻達も幼馴染たちも状況を見て青ざめていた。
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