第145話 VS軍神①
「どうしたセレス! お前の凄さはそんな物じゃないだろう? 本気のお前じゃなくちゃ意味が無い、さぁ本気を出せ!」
「嘘だろう!あれで本気じゃなったのか?」
「それなら、どれだけ凄いんだ!」
不味いな!
『本気を出す』という事は黄竜になると言う事だ。
此処から王国は割と近い。
場合によっては王国に被害が出るかもしれないし、そうじゃなくても『その姿』を誰かに見られる可能性が高い。
やれる事をやる。
それしかない。
「解った、アークス」
そう言うと俺は竜の気とでもいう物を自分の体の中でまわし始めた。
竜の気を流し込んだ状態で竜化しない方法をとった。
恐らく、今の形態と竜の間の形態…その姿は。
殆ど人間だった。
多分、この状態こそが黒竜がとっていた『人間形態』だ。
黒竜は人間が竜になったのではないから、人間の姿は仮の姿だ。
つまり『人化』した事になる。
まさに今の俺はその状態だ。
人ではなく竜が人化した状態今迄とは違い、外見は人だが中身は『竜』だ。
「もう、良いのか! なら此方から行くぞ!」
アークスが俺に向かって走ってきたが…
「うわぁぁぁ、なんだこれは?ー-っ痛ぇぇぇな」
石に躓いて盛大に転んだ。
「どうした? アークス足がもつれたか?」
「痛ててクソ、こんな所になんで石があるんだ! 仕切り直しだ」
凄いスピードのパンチが繰り出される。
以前のマモンとは全く違う。
流石は軍神アークスだ。
だが、当たらない。
はっきり言えば、目で追う事も真面に出来ないが、ただ適当に避けるだけで当たらない。
「どうした?当たらないな」
「何故だ、何故お前はこれが避けられるんだ」
はっきり言っておく、竜化した俺でも全く見えない。
下手したら黒竜より速く、強い一撃。
目で追えないから、適当に避けているだけだ。
それなのに『運よく当たらない』
「さぁ? だがこの位なら普通に避けられる」
これはハッタリだ。
当たらない理由は薄々解っている。
これが『黄竜』の力。
『運』を完全に味方につけた状態だ。
「馬鹿な、この神速の攻撃すら当たらないだと!」
「あれすら、当たらないのか?」
「俺にはマモン様の攻撃が全く見えない、どんな戦いだよ」
「あれは達人が使う見切りという奴か、全て紙一重で躱している」
アークスの部下達も騒ぎ出した。
本当は見切って等いない。
全てが『運』だ。
今の俺の状態ならじゃんけんを1000回やっても1000回勝てる。
「こんな攻撃当たらない」
「お前は逃げてばかりだな、防御だけか?」
「それじゃ行くぞ!」
こんな攻撃をする奴に普通は攻撃は効かない。
素早い攻撃が出来るのだから、こちらの動きも見切れる筈だ。
「来い、なんだ!そんな物か? それじゃ俺にはグハァっ!なんでこうなる…」
完璧にアークスは俺の動きを見切っていた。
だが、偶然にも落ち葉が何処からか飛んできて、直前でアークスの目に貼りついた。
更に俺は転び、当初は顔面を狙った攻撃が、みぞおちに当たった。
だが、軍神って凄いな。
爪こそ生えていないが、竜の力で殴って『グハァ』だけで済む。
この力ならオーガだったら千切れて体が飛んでいく。
その攻撃が『グハァ』だけか。
「俺の攻撃はよけられないんだな!」
「一発まぐれで当てた位でなんだ! こんなパンチ1万発食らってもビクともしないわ!」
確かにそうだ。
こんなパンチ確かに効いて無いだろう。
「確かにそうだな! だが、此処からはピッチを上げていくぞ!」
「それはこっちも同じだ!」
『運』が完全に味方についている俺にはアークスの攻撃は当たらない。
その反面、俺の攻撃を食らってもアークスには効かない。
この勝負は『最高の運』VS『最強』そんな感じだろう。
だが、ふと気がついた事がある。
アークスが最強?
あり得ない。
何故なら『もつと強い存在』を知っている。
どう考えても冥界竜バウワー様には届かない。
死の世界を支配し、もし戦えば簡単に俺を殺せる存在。
少なくともアークスは俺を簡単には殺せない。
だが、今はそれは意味は無いよな。
意味が無い?
何か引っかかる。
「すげー、彼奴何者なんだ! マモン様の攻撃を避けきっているぞ」
「しかも、効いていないが、マモン様が一方的に殴られている」
全く効いて居ないわけでは無い。
少しずつアークスの体力を削っている。
だが、こちらも素早く動いているから、体力が消耗していく。
この天秤はどちらに傾くのか解らない。
この勝負…どちらが死んでも可笑しくない。
「ははははっ楽しいなセレスよ! 自分と同等の奴と戦うのは!」
俺は脳筋じゃない。
ただ静かに楽しく暮らしたいだけだ。
「そうか? 俺は『ごめんなさい』といえばお前が許してくれるなら、そうしたい」
「馬鹿言うな! こんな至福の時間止められる訳がないだろう!お前だって口ではそう言うが、目が語っている!『楽しい』とな!」
そんな訳あるか…いや、俺は楽しいのか?
恐怖の象徴マモン。
俺が人間だった時は『此奴とだけは出会いたくない』そう思っていた。
だが『あの時から怖くなくなった』
そして、今は…正面きって殴りあっている。
嫌なら逃げれば良い。
恐らく『軍神アークス』はこの世界の神じゃない。
ならば居られる時間に限りがある。
アークスに翼は無いから、本気で逃げれば逃げられるかも知れない。
それなのに…俺は戦っている。
何故だ!
俺の中の何かが『此奴とはもう戦えない』のを惜しんでいる。
「なぁ、アークス! 俺はそんなに楽しそうか?」
「目が笑っている!お前は俺と同類だ!」
そうなのかも知れない。
「なぁ、アークス、それなら『とっておき』を見せてやる! 少し手を御互いに止めないか?」
「ほう! この上があるのか? 良いぜ!」
どちらからともなく手を止めた。
「完全竜化」
相手は神だ。
出し惜しみは失礼だ。
だから、俺は黄竜の真の姿に変わった。
「やはり人で無かったか! その姿は高位の竜、どうりで強い筈だ! ならば俺も本気の本気を出そう! 神衣! この世界のではない上の世界の軍神の力がこれだ、行くぞ」
此方が山より大きな竜の姿に対しアークスは神々しい鎧を纏った姿になった。
「軍神アークス、胸を借りるぞ!」
俺は岩をも溶かすブレスをアークスに吐いた。
◆◆◆
ゼクトが主人公
【リクエスト作品】ハーレム欲しさに『仲間』を追放した勇者の俺は『仲間』の凄さを知り人生をやり直す!
話が大きく分離し始めました。
良かったらお目汚し下さい。
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