第144話 絶対絶命



「さてどうする?全員で来るのか? それとも1人1人で来るのか?好きにして良いぞ!」


「ほう!流石は英雄、マモン様を倒しただけの事はある!俺の名前はブラン! マモン様、ゴルバ様に代わりこの軍団のまとめ役だ、まずは一対一の決闘を申し込む!」


ヤバいな。


此奴が一番強いのか?


今の俺は日に日に『勝手に強くなっている』多分、見栄えと違い『竜化』が進んでいる。


もし、もう一度マモンと戦う事があっても、本気なら簡単に方はつく。


どうしたものか。


「お前には敬意を表し、この姿で戦うとしよう!『ドラゴーーーン』」


「貴様、ドラゴニュートか! どうりでマモン様が負ける筈だ! 相手にとって不足無し!参る!」


全力は不味い。


俺はドラゴニュートなんかじゃない!


竜公だ、多分冥界竜バウワー様や、他の竜公じゃなければ相手にならない。


だから『中途半端な竜』になってみた。


人間の大きさで手足が竜。


羽を生やして口には牙がある。


「来い!」


わざと相手の一撃を受けてみた。


「はははっ! 確かにお前は強いが経験が無い…あっ」


俺が軽く気を使いながら手刀を落としたら…


ドガッ!


凄い音がして叩きつけた地面にクレーターが出来ていた。


慌てて胸に耳を当てて心音を聴いた。


「良かった、死んで無いようだ…」


下手に殺してしまったら全面戦争になり、皆殺しにしなくちゃならない。


そうはしたく無いんだ。


「「「「「ブラン様が一撃だと!」」」」」


「どうする?もう止めるか?」


「我々はマモン様の部下だ、それは無い! いかに貴方が強敵でも背は見せぬ! だが、セレス殿貴方は間違いなく強者だ!敬意を払い、全員で行かさせて貰う! 貴方はそこ迄の強者だ!」


「解った、掛かって来い! 言葉は要らぬ拳で語ろうぜ!」


俺はこう言うのは好きではないむしろ『嫌い』だ。


俺の前世はサラリーマン。


「行くぞ!セレス!」


「語る必要は無い」


手加減して殴るが、当たった相手はあさっての方向に飛んでいく。


争いごとは好まない。


ただ、家族で楽しく暮らせればよい!


それしか望まない。


「流石はマモン様を、ぐはっ」


魔族とはいえ人型。


殴るのも心が少しは痛む。


だが、止めるわけにはいかない。


「凄い手練れだ!流石は英雄と呼ばれる事はある! 囲みながら行くぞ」


「「「「「おおっ」」」」」


残念ながら『全然効かない』当たっても痛くもかゆくも無い。


ドガッバキ。


ただ、殴るだけで再起不能になっていく。


相手は魔族、そしてマモンの軍団。


多分、死なないよな?


死なないように手加減しながら殴る。


その加減が難しい。


前世の子供の時、死なさないようにトンボを捕まえた。


あれを思い出せ。


「強い! これ程の相手と戦えてマモン様も幸せだったろう! 貴殿に敬意を表す、ぐはっ」


あくまで軽くだ。


そうしないと『簡単に死んでしまう』


敢えて手加減するのは…大変だ…



「これが竜の力を使う人間ドラゴニュート、勝てるわけが無い…」


俺はただ、妻と一緒に幸せに暮らしたいだけなんだが。


何故こうも戦いに巻き込まれるのだろうか?


『黄竜』は運が良い。


その話は何処に行ったんだ。


全く、運が良いなんて全然思えない。


「不退転の思いで行くぞ! 一斉に飛び掛かれー-っ」


「「「「「おおうっ」」」」」


あれっ!


周りに誰も居ない…


まさか…


気がつくと周りには誰も居なかった。


正確には全員が伸びていた。


「ううっ無念…」


「まさか、マモン様以上とは…」


「マモン様に勝つだけの事はある」


どうやら死人は出ていないようだ。


『良かった』


「この喧嘩、これで終わりで良いよな」


「我ら全員を持ってしても貴殿には…」


ようやくこれで終わる。


「それじゃこれで遺恨なく」


「まだだ! セレス久しぶりだな! 再戦と行こうぜ!」


幻聴が聞こえてきたのか?


居るわけが無い。


鍛えぬいた鋼の様な体、2メートルを超える大男。


間違いない。


だが、マモンの体は俺の収納袋に入っている。


だったら此奴は誰だ…


「「「「「「「「「マモン様――――っ!よくぞ御無事でー-っ」」」」」」」」」」


「ふっははははははー-っ! 俺は最早マモンではない! 我が名は軍神アークス! セレス、お前が焼き滅ぼした部分は俺の魔族としての部分だ! お前に倒され今の俺は純粋な軍神として蘇ったのだ!」


軍神?


軍神と竜公どちらが強いんだ!


ヤバいぞ…俺は勝てるのか…神だぞ…神!


この世界は一神教で女神イシュタスしか居ないんじゃないのか。


「アークス様、この世界は一神教で女神イシュタスしか居ないんじゃなかったでしょうか?」


「はははっその通りだ!俺は此処と違う世界の軍神だったのだ、何故か記憶が無く魔族の四天王マモンとして暮らしていた! 恐らくこの世界に居られるのはそう長くない…この世界で居られる最後の時間はお前に使う事した! 喜べセレス!お前はこの世界で唯一『神』と戦った男になれる、さぁどこからでも掛かって来い!」


マジですか?


なんでこうなる?


今のマモンは恐ろしく強い。


隙が無い。


「戦わない選択肢は?」


「無い…俺は負けっぱなしは嫌だからな」


なんでこうも、平和に過ごせないんだ。


黄竜は運が良いんじゃないのかよ…








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