第142話 消えたマモン




マモンの残党を迎え撃つのは王国の手前で良い。


おかげで時間が少し出来た。


その時間で俺は黒竜に会う事にした。


暫く飛んでいると…


「またセレスか? お前俺に会いたいとまた願ったな」


こういう所は黄竜は良い。


幸運値が高いせいか、願うと大概の事は叶う。


「黒竜、実は聞きたい事がある」


「解った、一体何を聞きたいんだ?」


「冥界竜バウワー様にマモンについて聞きたいんだ!」


「バウワー様にか? 仕方ない俺が聞いてやろう!」


そういうと黒竜は通信水晶みたいな物を取り出した。


「黒竜は冥界竜バウワー様と連絡がとれるのか? 凄いな!」


「俺はバウワー様の手伝いをしているから持たされているんだ、まぁ実質神に近いから、バウワー様なら、何時でも俺達の前に顕現すら出来るし、神託も出来るんだがな」


黒竜がバウワー様に連絡をとってくれた。


「何かようか?」


「実は…」


こうして見るとまるで前世のスマホで話している姿に見えるな。


竜、更に一方は神に等しい存在なのに。


「マモンか? その様な存在は冥界に来たという報告は受けておらんぞ!」


「本当ですか?」


「くどいぞ! 我は冥界竜ぞ!死後の世界で知らぬことなぞないわ」


それで通信は切れてしまった。


「セレス、怒られたじゃないか! 本当に殺したのか?」


「ああっそれは間違いない!」


そう伝え黒竜にマモンの体を収納袋から出して見せた。


「死体があるのに…魂が冥界に行ってない? 確かにおかしいな」


「だろう?」


「だが、バウワー様は嘘など言わない。普通の人間なら兎も角あれが冥界に現れたなら解らない筈がない」


「魔族は別の世界に行く…そう言う事は無いのか?」


「それは無い、死ねば人間も魔王も皆、冥界に…悪いこれは世界の理だから詳しくは話せないが死ねば皆行く場所は一緒だ」


「ならマモンは」


「恐らく、まだこの世界に魂がとどまっているか…それとも何かイレギュラーが起きたかだな」


「イレギュラー?」


「まぁ彼奴は俺達からしたら雑魚だが、魔族と考えたら異常な強さだ、世界の理から外れた存在、何か可笑しな事が起きても不思議ではない」


「確かにマモンなら…そう思えてしまうな! まさか復活などしたりしないよな!」


「セレスが肉体を持っているんだ、復活しても元の力は無いだろうな、それは安心して良いぞ」


「そうか?」


勝てる。


それは解っている。


黄竜の力は凄まじい。


日に日に力を増していき、今の俺なら『あの時のマモン』が目の前に現れても倒すのに5分と掛からない。


だが、これは俺が努力で手に入れたんじゃない。


黄竜という存在になり、種族が変わったからに過ぎない。


「幾ら考えても解らない物は仕方が無いな、バウワー様が解らないんだ誰にも解らない。他に聞きたい事はあるか?」


「特にないな」


「今回のはお前に呼びつけられた様なものだ。次に会った時には美味しい酒でも奢れよ!」


「ああっ、解った楽しみにしていてくれ」


「それじゃぁな!」


黒竜は俺から離れて飛んでいった。


これで俺の作戦は頓挫した。


マモンを生き帰らせるか、もしくは呼び出して何かしらの交渉をする。


そう考えていたが、冥界にも居ないなら無理だな。


もう、戦う以外に方法はないのかも知れない。





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