第139話 【閑話】セレスの正体はドラゴニュート?



なんでこうなったのだ!


あのマモンが死んだ。


その事実だけを王であれば考えなくてはならない。


あのマモンは『バグ』だ。


あり得ない力を持ち、たった一人で一国に匹敵する。


剣も魔法も通用しない。


大きな岩の下敷きになろうが壊れない体。


恐らくは聖剣ですらマモンは斬れない。


魔族は強い。


魔族は強大だ。


だが『バグ』であるマモンはその中でも飛びぬけて化け物だ。


それは余からしてもそうだ。


恐らく、今いる四天王が3人全員で戦ってもマモンに勝てるとは思えない。


魔国の魔族全員で戦えば勝てるであろうが、恐らく半数以上が死ぬ。


そんなマモンを殺せるような化け物。


それが『人間側に生まれた』


魔族にマモンが生まれたのだ。


人間側にも『バグ』が生まれても可笑しくはない。


『バグ』VS『バグ』その戦いにマモンは負けた。


此方の『バグ』は居なくなり、相手側には『バグ』が居る。


その恐怖をしっかりと考えるべきなのだ。


マモンに人間が怯えたように魔族が今度は人間に怯える世界が来る。


だからこそ、余は停戦を急ぎ、争わない選択を選んだのだ。


恐らく戦えば、かなりの犠牲がでる。


マモンを倒せるような相手…人間。


想像はついた。


人であって人でない化け物。


人を使い情報を集めたのだ。


見ていた魔族が居た。


その魔族は遠くに居たそうだが、見ていたそうだ。


最初は人の様に戦っていて、その全てがマモンに通じなかった。


だが、満身創痍の体で噛みついたところから、風向きが変わり。


『もぐもぐがぶがぶっゴクリッ…案外美味いな』


『マモン…お前美味しそうだな…』



セレスという男はマモンの指を食べて、そして美味しそうと言ったのだ。


つまり、セレスと言う存在はこの瞬間から捕食者になった。


両手を一瞬で生やした。


マモン以上の力に目覚めて蹂躙し始める。


これだけでも可笑しいのに、此奴は更にあのミスリルですら斬れないマモンの体を更に食べた。


マモンとてそれで終わらない。


角を食べ、最終形態になった。


あの最終形態のマモンには余と四天王全員どころか魔国の軍勢を使い数の暴力をもってしても勝てぬ。


だからこその停戦だ。


あのマモンを殺せる人間。


そんな人間に心当たりはある。


マモンを裂ける様な爪を生やし、口から炎を吐き、そして竜の様な羽を持つ人間。


その時セレスと言う人間は叫んだそうだ。


『ドラゴンウィング』とな。


竜は気まぐれだが、人に一方的に加担しない。


だから、正体が竜とは考えにくい。


人でありながら竜と同じ力を持つ人間。


恐らくは『竜人』ドラゴニュートではないか?


その昔、竜と人間が恋に落ち生まれた存在。


まさか、そんな伝説のような存在が現れるとは…


ドラゴニュートが相手となると少々厄介だ。


何処まで竜に近い力を使えるか、それは個体差があるが、マモンを殺したという事は、竜の力を自由に使えた可能性が高い。


竜に限りなく近い、マモンを殺せるドラゴニュート。


相手にするには分が悪るすぎる。



そんなドラゴニュートにも一つ弱点がある。


それは…寿命だ。


高位の竜は不死だという。


我々魔族の長寿の者は数千年生きる。


だがドラゴニュートは人間の血が入ったせいか、精々が200年だ。


だからこその300年の停戦。


その後であれば、セレスは恐らく居ない。


今が最悪のタイミングだ。


勝てるタイミングまでの時間稼ぎ。


それを無駄にして…


どうすべきだ…余の行動一つで魔族が終わる。







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