第138話 【閑話】 死と命令



俺は今、魔王ルシファード様の謁見室に居る。


ついでに言えば、四天王の他の3人も傍に控えている。


「ゴルバよ、この平和な世の中で余になんのようだ!四天王まで全員招集するとは何事だ!」


「ゴルバ、貴方は四天王とはいえ序列は一番下、呼び出すという事はそれなりの理由があるのでしょうね?」


「…」


「私なら兎も角、魔王ルシファード様まで呼び出すとは何事でしょうか? ちゃんとした理由をお聞かせ願おう!」


「はっ、マモン様の事でございます!」


「マモンか? それがどうしたと言うのじゃ」


「部下が、しかも四天王が殺されて魔王であるルシファード様はなんとも思わないのですか!」


「余とて辛い、だが、魔族が生き残る為には必要だった。マモン程の者を葬る人間が存在する以上は仕方が無い事なのだ」


仕方が無い…だと!


マモン様をはじめ我が軍団は、ルシファードお前の命令一つで戦いにその身を投じてきたのだ。


その中で死んでいったマモン様の死が…仕方ない!


『ふざけるな』



そう言いたい。


此処に立った時から覚悟は決めた。


俺は副官として駄目な男だ。


本来なら仲間を諫めるのが俺の仕事。


『マモン様の事など忘れろ!』


そう言うのが恐らく俺の仕事だ!


だが出来るかそんなもの!


俺を含む、マモン軍団にマモン様を忘れて生きる。


そんな奴は居ない。


今のマモン軍団は誰にも止められない。


ならば、俺のする事は決まっている。


「お恐れながら…そんな戯言等聞く気にはなりません!」


「貴様、四天王の序列で一番下の癖に、魔王様に戯言だと!分をわきまえよ!」


「黙れ!ダークゴルダー見ておけ!ルシファード貴様もな!」


「貴様、魔王様を呼びつけに等…おいぃぃぃぃぃー――っ」


「ハァハァ黙って見ておけぇぇぇぇー――っ」


俺は自らの手刀を胸に突き入れ心臓をえぐりとった。


魔族、それも生命力が俺は強いから暫くは生きている。


だがあと数分もすれば確実に死ぬ。


「ハァハァ、俺はこれでも四天王だぜ! 四天王は自分の命と引き換えに1つどんな無茶な命令も出来るハァハァ」


「まさか貴様…マモンの仇を討たせる権利…」


「違うな、そんな中途半端な事はしねーよ!ハァハァ…俺の命令は『全ての魔族が全員、死ぬまで人間と殺しあえ』だ。うわははははっグファッー――ッ」


「そんな命令は流石にきけん、悪いが口を噤ませて貰おう! この場に居る者に次ぐこの話は口外無用、なっ」


無駄だよ、手は…うってある。


「うわぉぉぉぉぉー――っ! ゴルバ様ぁぁぁー-」


「ゴルバぁぁぁぁぁぁー――っ」


「おい、おい、ゴルバ、ゴルバ、これをする為にお前は」


「ハァハァ…反故にされる可能性がハァハァ、あるから部下を呼んで置いたんだ…数人がもう言いまくっているからな…あとは頼んだぞ…」


これで良い。


四天王は自分の死と引き換えに『どんな命令でも一つ』出来る権利がある。


これは始まりの魔王が決めた事だから、誰も覆せない。


「ああっマモン様の仇…頼んだぞ」


もう何も見えない。


後は…頼んだぞ。


「さてと、私は翼の軍団を率いてこれから王国を襲いに行くわ!久々に人が殺せるわね!うふふふふっ、あはははははははははっ、私は停戦なんて嫌だったんだよ!ゴルバ良く言ったわ、人間はこれから私達のおもちゃで餌よ!うふふあははははっ楽しいわね」


「待てシルフィード、余は許さんぞ!」


「従えませんわ魔王様! これはいにしえからの決まり事、もう止めれませんわよ!じゃぁね魔王様」


「我が死霊の軍団は、宿敵の聖教国を滅ぼしに行く…今回は死霊もゾンビも解き放つ」



「馬鹿な、そんな事をしたら…世界が終わる」


「待つんだ、魔王様が、停戦を人間側としたんだ、それをこんな風に反故にしても良いのか? これは魔国全部の問題だ」


「ならば、ダークコルダー様、貴方死にますか? 死んで『停戦』の命令を出せば宜しいのではないでしょうか?」


「貴様』


「もう良い、余の負けだ…」


なにも見えなかったが…声は聞こえた。


これで仇が討てる。


だが、きっと俺はあの世でマモン様に怒られる…









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