第137話 【閑話】魔族ゴルバ
「マモン様が殺されて黙っているのですか?」
「俺は認めねー、人間みたいな弱者と停戦等もっての他だぁぁぁぁー――」
「だが、マモン様がたった1人の人間セレスに殺されたのは事実だ、魔族は強さこそ正義だ、卑怯な騙しうちでなければマモン様の戦いに泥を塗る事になる」
「その人間だが、翼が生えて空を飛んだらしいぜ! 空を飛べる人間なんて聞いた事がねーぞ!」
俺の名はゴルバ。
今現在は四天王にあるが、それはマモン様の副官をしていたからに過ぎない。
副官等と言うが、他の四天王の様に何かすることは無い。
ただ『出来るだけ目的地を決める』それだけしかしたことは無い。
『言う事を一切聞かない』
それがマモン様だからだ。
我らはマモン軍団等と言われているが、一人で一国に匹敵するマモン様、それに陶酔して部下になっている。
それに過ぎない。
そんな軍団はマモン様以外に統率等出来ない。
当然俺の言う事等聞くことは無い。
恐らく俺の言う事を聞く奴など1/10も居ない。
全ての奴が身勝手で自由気まま。
それが旧マモン軍団だ。
マモン様の言う事ならいう事を聞くだろうが、マモン様は命令などした事が無い。
『俺は自由にするからお前達も勝手にしろ!』
それがマモン様の言葉だ。
最もそれが許されるのはマモン様こそが魔族最強の男であり、バグと言われ魔王様より強いという話に他ならない。
一人で正面から攻めて一国を亡ぼせるマモン様に手下等要らない。
だが、マモン様は亡くなられた。
名前だけ貰った四天王の地位。
実質機能していない。
◆◆◆
「ゴルバよ! 幾ら魔王に言われてもこれで良いのか? 仇は打たぬのか!」
我ら軍団は瓦解している。
魔王様の事を今や魔王と呼び捨てにする程に魔王様への忠誠は薄れている。
「貴様はマモン様の腹心であろうが! これで良いのか!これで!」
何も言えない。
「ゴルバぁぁぁぁ、お前も俺もただ部下だった訳じゃねーよなぁぁぁ、マモン様の親友だったんじゃねーか、違うのか!」
ああっ親友だったとも、酒を飲みかわし、言わせて貰えればまだ若き時には娼館まで一緒に行った程だ。
「悔しくねーのかよ!」
悔しーぜ。
お前等と同じだ!
だが、マモン様から俺は後を頼まれたんだ。
迂闊には動けない。
『良いか!ゴルバ、俺は馬鹿だ!全て腕力と暴力で解決してしまう、そして部下も馬鹿だ!だからよ、お前は出来る事なら冷静に物事を見て考えてくれ!』
そう言われたんだぜ。
どうすれば良い…
マモン様、いやマモン、俺だって仇を討ちてーよ。
だが、その為には『魔王様の背かないといけない』
停戦協定を結び、戦ってはいけないと言ったのは魔王様だ。
それを厳命して魔族や魔物の殆どを魔国に戻した程だ。
それに背くのだ。
それ相応の物がいる。
それに四天王の他の三人の動きが気になる。
もし、俺達が戦いを選んだらどう動く…
『空の女王シルフィード』
見た目は天使の様な金髪美人。
天使との違いは羽が黒い事、堕天使という噂もあるが真相は解らない。
多分だが「勝手にすれば」で済ませる可能性が高い。
マモン様以上の自由人だから文句は言って来ないだろう。
『不死の王 スカルキング』
何を考えているか解らない大きな鎧を着たスケルトン。
沢山の死霊やスケルトンを操る。
だが、マモン様は何故か気にいって飯や酒を稀に飲んでいた。
ボタボタと零れ落ちていたが。
恐らくはマモン様と親しいし『親友』とマモン様が呼んでいたから反対はしない。
問題は…
『魔界の騎士 ダークゴルダー』
魔王様には一切逆らわない忠臣。
見た目は美しく綺麗な騎士だが、魔王様に言われるならどんな事でも顔色一つ変えぬ男。
恐らく此奴と魔王様を納得させる必要がある。
仕方が無いやるしか無いな。
「悔しいぜ!皆の気持ちは解った、そこ迄言うのなら俺が魔王様に話を持っていく、だが転がり始めたらもう止まらねーんだ、覚悟を決めやがれー――っ」
「「「「「「「「「「「うおぉぉおぉぉー――っ」」」」」」」」」」
俺は覚悟を決めた。
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