第134話 コハネ王
お忍びでの行動が終わり、俺達はコハネの小城に来ている。
小城と言っても『城』屋敷とは比べ物にならない。
お堀りがあって跳ね橋もある。
流石に王城に比べたら1/8位しか無いがそれでも大きい。
最も『城』だから、全部が俺達の物じゃない。
執務室や従者やメイド等の居住施設がある。
それでも、所有者の生活スペースだけでもけた違いに広い。
元は村人の俺にはこの広さは…必要ないな。
前世では座して半畳、寝て一畳だったか?
もう思い出せないが、僅かなスペースで暮らしていた気がする。
恐らくは家族を持つまではワンルームで暮らしていた。
しかし、虫食いが進んでいる気がする。
本来は前世の記憶があるのが可笑しい
もしかしたら、時間が進むにつれ前世の記憶は薄れていくのかも知れない。
「セレスくん、まさかお城で暮らすような日が来るんなんて」
「確かに、ジムナ村に住んでいた時には考えつかなかったね、セレス」
「セレスさん、本当に凄い!」
「セレスちゃん、本当に、領主様以上じゃない」
「これがコハネ城ですか、凄く綺麗ですわ」
「帝国の王城より綺麗だな! 美城と評判なだけあるな」
「静子さんや俺達は兎も角、マリアーヌやフレイは王女なんだしセシリアだってお城には慣れているだろう」
「王城に住んでいましたが『歴史のある城』ですから案外住みにくいのですわ。冬なんて石壁ですから、寒くて」
「帝国も同じだよ! 決して住みやすいとは言えなかったな」
「聖教国のお城は大聖堂を兼ねていますので教会と余りかわりませんよ」
確かに言われて見れば大きな部屋だし、寒いと言われれば納得してしまう。
「それなら、此処だって同じじゃないのか?」
「コハネは城としては新しいのです。ですからその辺りは工夫がされていると聞いていますわ」
「そうみたいだよ」
流石、王女だけあって詳しいな。
「お城でも違いが随分あるんだな」
「歴史のある城程、実は余り住み心地は良くないと言われているのですわ」
「そうだな、案外商人の屋敷の方が快適だね」
言われてみればそうかも知れない。
◆◆◆
城の跳ね橋に着くと沢山、見た感じ50~60人位の人数の人が居た。
小城でもこの位の人数が住んでいるんだな。
俺と目が合うと一歩前に立っている人物が大きな声をあげた。
「我らがコハネの王セレス様に礼――っ」
声を掛けると一斉に腰を折る様に頭を下げた。
その中にはオークマンも居る。
多分、前にいる人が恐らく代官のコルダだな。
「そんなに気を使わないで良いよ、英雄なんて言われても元は村人だからね、普通に接して貰って構わないよ」
「何を言われますか、ロマリス教皇様にザンマルク国王様、サイザー帝王様、三大国のトップより『自分達より上と扱うように』と言われております」
英雄だからか?
あれは名誉的な役職であって実権は無いのでは無かったか?
「あとコハネの王って何か意味があるの? 俺は領主だけど王ではないと思うんだが」
「何を言われますか!コハネは三大国(聖教国、王国、帝国)をはじめとする人族の国すべてが認める正当なる独立国家でございます。セレス様はそこの正式な王でございます」
まてまて、確かにザンマルク四世は…
『今現在は我が国の法律で動いていますが、実質セレス様の国とお考え下さい…法律を作るも何でも自由です…勿論、税収も我が国を含み聖教国、帝国にも納める必要はありませんので…ご自由にお使い下さい…王より偉いセレス様に言いにくいですが…コハネの王様と思って頂いて構いません』
そう言っていたが『思って頂いて構いません』だった筈だ。
正式に王になった記憶はないし、独立国家なんて話は聞いてないぞ。
「それは正式な話なのか?」
「はい、それにセレス王の奥方様のうち二人は王位継承権第一位の王女、お一人は元聖女で実質聖教国の次の教皇候補でございます。これは確定ではありませんが、この先の未来においてコハネを中心に置きまして四国統一の話も出ております」
そんな話は聞いてないぞ。
「お父様の考えそうな事ですわ」
「確かに考えていても可笑しく無いな」
「ロマリス教皇様もロスマン名誉教皇様も、望みそうな気がしますね」
俺はコハネでゆっくりするつもりだったのに、なんでこんな大事になっているんだよ。
まさかこれも黄竜の幸運だとかじゃ無いよな。
幸せなのか不幸なのかもう解らないな。
【お知らせ】
※皆様のリクエストに応えまして『ゼクト』が主人公のスピンオフ
【リクエスト作品】ハーレム欲しさに『仲間』を追放した勇者の俺は『仲間』の凄さを知り人生をやり直す!
を書き始めました。
途中までの展開は同じですが、恐らく途中から分岐して違う物語にするつもりです。
IFもしくはパラレルワールドだと思って下さい。
勿論、ゼクトはこちらの【閑話】でも活躍するし、これからも出てきます。
宜しくお願い致します。
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