第135話 【閑話】勇者ゼクトのやり直し⑮ 解らない
「ほら、ルナ服を買ってきたぞ! 今度から外に行くときにはこれを着ろよ」
「わーい、ありがとうゼクト…」
『わーい』という割には顔は喜んでいる様に見えない。
表情にあまりでないのは何時もの事か。
「へぇ~ゼクト様の趣味ってそういう服なんですか? 私の分は無いんですか?」
「それは、ルナ専用の服なんだよ!闇の羽衣って言ってな光を遮断できるんだ。マリンの服はすまない、忘れていた。明日でも買いに行くか?」
「そう言う事なら別に良いですよ!明日宜しくお願い致しますね。ですが、それルナちゃんが着るんですか? 少しセクシーだと思いますよ? ちょっとルナちゃんが引いているみたいだし」
それであの『わーい』か。
確かに、かなり胸の所があいているし、スカート部分も短いからそう見られても仕方が無いか。
「ルナ、悪いな、明日マリンの服を買いに行くついでに、それ治して貰うから一旦返してくれ」
「…大丈夫、ゼクトが買ってくれた服だからこのままで良い…」
「そうか? 試しに着てみてくれるか?」
「解った…」
マリンの言っていた意味が解った。
胸が小さいルナが着ると胸回りが覗き放題になるし、スカート部分は下着がチラチラ見えている。
「ルナ、流石に寸法があっていないから、明日調整して貰おう」
「うん…確かに大きさが合っていない」
「ああっ、だから明日なおして貰おうな」
「うん…解った」
明日、三人で買い物がてら出かければ良いな。
「それじゃ、明日はマリンの服を買いに行きがてら街に出かけよう」
「ありがとうございますゼクト様」
「ゼクト…楽しみ」
まぁ偶には一日遊ぶのも良いだろう。
◆◆◆
「それじゃ出かけるか」
「もう支度は終わってます、出かけましょう!」
「うん…出かけよう…」
「それで何処に行く? マリンやルナは行きたい場所はあるか?」
「ルナは…無い」
「私はゼクト様に任せます。エスコートをお願いします」
俺がエスコート?
俺はエスコートなんてしたこと無いぞ。
リダもマリアもメルもどちらかと言えば自分から出かけまわり、俺は付いていくだけだった。
良く考えたら、俺自身も余り何かしたいと思った事も無いな。
「悪い…俺は今迄戦いばっかりだったから、エスコートなんてやった事が無い」
「そんなに気にしなくて良いんですよ?ゼクト様が行きたい場所とか好きな場所に連れて行ってくれれば良いんです!」
俺が行きたい場所?
好きな場所?
弱ったな。
俺…どちらも無いわ。
「マリン、済まない、俺は今までの人生で『そういう楽しみ』を知らない…女性に何かを買ったのも露店でネックレスを買った位で、それ以外は精々が飯を食いに出かける位だ、悪いな」
勇者だった時は『自由になりたい』そう思っていたが、いざ自由になったら、何を楽しめば良いのか解らないな。
「言われて見ればそうですね、ゼクト様は勇者として旅から旅でしたから、そういう時間はとれなかった。当たり前ですね。私が浅はかでした。それならゼクト様は美味しいお店に連れて行って下さい。買い物は、私がエスコートしますから、最も私もお城から滅多に出られなかったから、そんなに得意じゃ無いですけど」
「ルナも…出来ない」
「皆が出来ないなら気張る必要は無いんじゃないかな? 服の用事だけ済ましたら適当にプラプラしていれば良いんじゃないか?」
「そうですね」
「うん…それで良い」
結局、三人で出かけてマリンの服を買って、ルナの服の寸法調整を店に頼み、適当にプラプラして1日を過ごした。
何者かにつけられている気がしたが…恐らくは気のせいだな。
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