第132話 枯れているのかも知れない。



最後はマリアーヌとシャロンか?


二人は『買い物』をしているだけだから、合流するだけで特になにかする事は無いだろう。


同じく二人は直ぐに見つかった。


「セレス様?!どうかされましたか?」


「セレス様、その…」


なんで驚くんだろう?


「どうかしたのか?」


「いえ、セレス様がこの場所にくるなんて、想像もしていなかったのですわ」


「こんな所に来られるなんて、驚きました」


「いや、俺だって買い物位はするよ。ゼクトのパーティに居た時には買い出しは俺の仕事だったんだ。マリアやメルやリダは意外にも無頓着だから下着から衛生用品まで全部俺が買っていたんだ」


「セレス様、可笑しいのですわ!年頃の女の子の下着を殿方が買うなんて!」


「彼女達に羞恥心は無いのですか?」


俺に対しては全く無いんじゃないだろうか?


良く考えて見ればゼクトと一緒の時には三人の下着の洗濯すら俺がした時期もあったな。


更に言うならトイレの見張り番までした事がある。


俺に関して…そう言うなら多分無いな。


全身虫に刺されたマリアの看病も小さい頃にしたよな?


あんなに腫れた姿、男だと思っていたら見せないだろう。


メルが、おねしょしたシーツを親が気がつく前に替えて洗った記憶や、食中毒に掛かったリダのゲロの始末をした記憶もある。


うん、絶対に男とか殿方とか思って無かったんじゃないかな?


俺はその経験について二人に話した。


「それは凄い話ですわね」


「本当に凄い話ですね」


「そうかな?」


「それで此処に普通に入って来られたのですわね、他の男性なら躊躇する所ですわ」


「私もそう思います」


俺は色々と麻痺しているのかも知れない。


三人を自分の子供の様に思っていたからか、異性として意識もしていなかった。


それに、前世の記憶が断片的にあるから余り抵抗が無い。


だが、この世界は前世の世界よりやや封建的だ。


『女性の下着専門店』に男はまず入らない。


「悪いデリカシーに欠けていた。買い物が終わるまで外で待つよ」


前世で中年まで生きた。今では顔も名前も思い出せないが、妻や娘と一緒にショッピングモールに行き、下着を買うのを待っていた記憶が薄っすらある。


この世界と違って下着の店でもかなりオープンで普通に女性が下着を買う姿が見られる状態だった気がする。


下着と言えば前世で結婚したての頃に透けた下着を嫁に勧めてジト目で見られた記憶や、娘にまだこんな派手な下着は早いと怒った記憶も薄っすらとあるな。


「セレス様、お待ちください、私は貴方の妻なのですわ。お見せするのはセレス様だけなのですから、良かったらセレス様に選んで欲しいのですわ」


「わ、私も一応奴隷でもあるので、ご主人様のセレス様に選んで欲しいです」


成程、そうきたか。


「俺が選んで良いの? それじゃあ…」


今思えば幼馴染は子供の様に本当に思っていたんだな。


子供とまでは言わないが、姪っ子とおじさん。


その位に感じていたのかも知れない。


買っていた下着は白の木綿の物ばかりだった。


ゼクトも案外『女癖』が悪いわりには純真だったのかも知れない。


下着を買う時は一切お店に入って来なかったな。


10代の子供じゃ無く、30歳前後のセクシーな女性の下着。


なかなか選びがいがある。


二人にだけプレゼントするのもなんだから、この際、嫁全員分買っていくか。


「ええっ、お願いしますわ」


「お願いします」


何となく二人は俺が恥ずかしそうな顔をするのが見たいんじゃないか?


そんな気がするが、残念俺はこの手の事は恥ずかしくない。


「そうだな、マリアーヌはお姫様でゴージャスな感じがするから白が良いかな? レースが付いてシルクで生地が薄く透けた感じが似合いそうだ、これなんか良いんじゃないかな? ついでにガーターとガーターベルトがあれば更に…そうこの組み合わせが良いや。どうかな?」


「確かに私に似合いそうですが、なんでそんなに詳しいのですか? 不思議ですわね」


「さぁ、なんでだろう?雑用に慣れていたからかな?それとも俺の理想が年上の綺麗なお姉さんだから少しませているのかも知れないな」


「年上の綺麗なお姉さんが理想…確かにセレス様の好みは私も含んでそうでしたわね。そう考えたら納得ですわ」


「セレス様、私のもお願い致します」


「そうだな、シャロンは元カジノでディーラーしていたせいか黒い服が多いよな、だったら同じ黒でこんな感じか、もしくはいっその事、赤いこっちの下着が似合うと思う」


どちらもTバックだ。


黒い短めのタイトスカートを良くはいているから、うん似合う筈だ。


「これがセレス様の趣味なんですね、それなら両方貰おうかな」


「下着は俺がプレゼントするから、ちょっと待って、折角だから全員分買っていくから、選ぶ間待ってて!」


俺はそれぞれの妻に似合いそうな下着を3着ずつ選んだ。


「もしかして、全員分のサイズを把握されていますの?」


「妻の服のサイズ位解らないとね」


「他の方が言ったら気持ち悪いですが、セレス様が言うと下心が感じないのは何故でしょうか?」


「不思議よね? シャロン、私もそう思いますわ」


俺には前世があるから精神年齢が高いからかもな。


前世を思い出せば、この位の年齢の時にはこんな事をしたらドキドキしたかも知れない。


前世の記憶がある分、俺には枯れている部分があるのかも知れないな。







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