第130話 聖女と元聖女
今度は教会に行ってみるか?
俺自身は四職(勇者 聖女 剣聖 賢者)で無いから本来は縁が無い場所だ。
特にその中でも更に二職(勇者 聖女)にやたらと固執する、そんな感じなのが教会、しいて言えば聖教国だ。
当然、聖教国以外の教会も聖教国の息が掛かっているから、その力は絶大だ。
コハネの教会に着いたんだが…
なんだこれ?!
凄くでかいし立派。
それに尽きる。
これ城でも通用するんじゃないかな?
普通の教会の5倍下手したら10倍位あるぞ。
門の横には聖騎士が立っている。
俺と目が合うと嬉しそうに聖騎士が俺に話かけてきた。
「英雄セレス様ですね、会える日が来るなんて光栄です、握手して貰って構いませんか?」
「別に構わないが…」
俺は右手を差し出して握手をしていると、どんどん人が集まってきた。
「英雄セレス様~私も握手して下さい!」
「私も、お願いします」
「私も、私も、お願いします」
「うちの子を抱き上げてくれませんか? この子が貴方のような英雄になれるように、お願いします」
暫くは相手をしていたが、このままだと何時まで経っても教会に入れないな。
だが、この状況だと流石に困るな。
「皆の者、セレス様がお困りじゃないか?今すぐ道をあけなさい! さぁセレス様こちらへどうぞ!」
「ロスマン名誉教皇…様?!」
「はははっ、様はいりません! ロスマンとお呼び下さい」
「ロスマン...これで良いのか?」
なんでコハネに名誉教皇が居るんだよ。
普通に考えて『教皇』や『名誉教皇』が聖教国から出るなんて事は普通は無い。
「はい、今後は決して私の様な者に様をつけたりしないように、セレス様は『英雄』勇者保護法は今や停止状態です。魔族との戦いがおさまり、勇者本人が勇者を辞めて四職が全員元になったので当たり前と言えば当たり前です。ですが英雄保護法は健在! 今や聖教国が保護する存在は貴方だけなのです!」
「俺はそんな素晴らしい存在じゃない! ただただ、幼馴染を助ける為に、少し頑張っただけだ」
「確かにそうなのでしょう…ですが、その為にあのマモンにすら戦いを挑んだ、そんな方は他には居ません! しかも勝利したのですからその功績は明白です」
一緒に話しているうちにどうやら目的の部屋に来たようだ。
「貴賓室?」
「セレス様を迎えるのですから、当たり前です。どうぞ!」
そう言いながらロスマン名誉教皇が自ら扉を開けてくれた。
「セレスくんも教会に来たのね」
「セレス様もいらしたのですね」
静子とセシリアがソファに座り寛いでいた。
「二人だけ? マリアは?」
「マリアちゃんなら、今は奉仕でヒーラーの仕事をしているわ」
「奉仕?」
「教会でのヒーラーは結構な修行になるのよ。結構な人数の患者に的確に短い間で治療を施さなくちゃならないからね」
「そうなのです! しかも、魔法を使う、使わないの判断も必要です。使える魔力に限りがありますから、より多くの人を治療する為には温存もしないといけません。良い経験になりますよ」
二人は既に結構な数の治療を終えて、祈りを捧げ終わった後なのだそうだ。
「マリアはまだ治療中なんだ」
「ええっ、マリアちゃんはジョブが聖女だから、スタミナが凄くあるのよ!まだまだ魔力がある筈よ」
「対外的には聖女じゃ無くなっても聖女のジョブが無くなったわけじゃ無いですからね。次の聖女が現れるまでは能力はそのまま…最も魔族と停戦しているのですから、次の聖女は暫くは現れそうにありません。聖女のジョブを失った私とは違い、回復魔法に使う魔力量やスタミナに限れば人類最高レベルですね」
そんなマリアに技術をセシリアは教えたいのだと言う。
「そういう事か?」
「ええっ私も静子様から沢山の事を教わりましたから、その全てを教えてあげたいのです」
俺みたいに甘やかすんじゃなく、しっかりと鍛えてあげていたんだな。
それはそうと俺には疑問が一つある。
それはなんで此処にロスマン名誉教皇が此処に居るのかという事だ。
「そう言えばなんで、ロスマン名誉…ロスマンが此処に来られたのですか?」
「それは私がセレス様がコハネに来る事を伝えたからです」
俺がコハネに来る事を伝えた?
だからってコハネに態々来るものだろうか?
「何を驚かれているのですか?英雄であるセレス様の傍で仕えたいと言うのは当たり前の事です。普通の司祭だと出来る事に限界があります。そこで私が来ることになったのです。教会の支援が必要でしたら何時でもお頼り下さい」
流石に名誉教皇になにか頼むことは無いだろう。
「ありがとうございます」
「いえいえ、当たり前の事でございます」
お茶とお菓子をごちそうになり、マリアの様子を見て俺は教会を後にした。
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