第129話 リダとアンサラー




よくよく考えたら1人で態々いる必要は無いな。


1人で楽しめる事は保留にして誰かと合流すれば良いんじゃないか?


黄竜になって多分人間じゃ使えないような能力も手に入れた。


その中に『気配察知』がある。


魔法で似たような物をメルも使えるが、俺が使うのは違う。


見知った相手限定だが、誰が何処にいるのか?


距離に限界はあるがある程度の場所が解る。


魔法だと魔物や人間の気配は解るが、人物の特定までは出来ない。


その分竜の方が優れている。


教会に行くとまた『英雄』扱いで居づらいし、買い物の邪魔もしたくない、そう考えるとハルカたちに合流するのが良さそうだ。


気を集中するとおおよその居場所が解った。


街中から外れたひらけた場所にいるみたいだ。


流石に空を飛んじゃ不味いな。


俺は『ただ走ってみた』


やはり人間とは違う。


実際の所は解らないが、前世でいうならバイク位のスピードが出ている気がする。


これが魔法もスキルも使わないで出せるんだから、この体が規格外なのは良く解る。


走る事10分ちょい、4人を見つけた。


見た感じリダ一人にフレイとハルカとミサキが斬りかかっている。


幾らリダが剣聖でも本来なら苦戦するはずだ。


何しろフレイは元剣聖。


ジョブは無くなってしまっても経験があるから恐らく、本来はリダより強い。


そしてハルカとミサキも元はSランク、その三人相手に幾ら剣聖でも1人であしらえるわけが無い。


それなのに余裕でリダが三人をあしらっている。


これが、アンサラーの力か!


凄いなんて物じゃ無いな。


「此処迄強いなんて」


「三人掛でも駄目なの! ズルい!」


「私は力で行くわ!大剣で力ずくなら…嘘止められた」


フレイにハルカにミサキがこうも簡単にあしらわれるなんて。


凄いな!アンサラー。


リダが剣聖だから、それもあるかも知れないが。


明らかにリダの動きとは別に動いている。


剣の姿をした生き物。


そんな感じに見えなくもない。


「リダ! ストップ!セレス様が来たわ」


「セレス、凄いんだよ、あの剣」


「セレスちゃん、本当に凄いのよ力押しでも、スピードで翻弄しても全部対応してくるのよ」


そこ迄凄いのかな?


「アンサラーを持っている僕は無敵かもね」


いや、その剣の弱点はもう解ったから。


「リダ、良かったら俺と少し戦ってみないか?」


「そうだね! 幾らセレスでもアンサラーなら勝てるかもね!」


すっかり調子に乗っているな。


まるで昔の自信家のリダに戻ったみたいだ。


「そうか? 俺とリダじゃ実力に差があるから、俺はこれで良い」


そう言って俺は拳を握りしめた。


「幾らなんでも剣聖の僕に素手…セレス舐めすぎ、怪我しても知らないからね!我は如何なる強敵にも怯まない…この剣と共に!」


俺の体は竜公だから、多分剣を持った剣聖でも斬れない。


それ以前に、俺にアンサラーは多分効かない。


「それじゃ行くぞ!」


「ハァー-っ」


リダが俺に斬りかかってくる。


だが、俺はそれを躱してリダの頭を撫でた。


「どうだ、剣を躱して頭を撫でた、この意味が解るよな?」


これが拳なら殴られていた…そう言う事だ。


「ふんっ!そんなのは、まぐれだよ!行くよ!我は如何なる強敵にも怯まない…この剣と共に!」


俺はまたアンサラーを避けると、そのままリダのお尻を軽く叩いた。


「ほら、余裕だよ!」


「きゃぁ! だけど、なんで?なんで?アンサラーが通じないの?可笑しいよ!」


答えは簡単だ。


俺が武器を持ってなくて、殺気を放ってないからだ。


もし、目の前に居る人間を全て殺すような剣ならそれは呪われた剣だ。


だが、アンサラーはそんな事はしない。


事実、剣を鞘に納めて戦う気が無いからか三人に反応していない。


主人の考えを読み動く剣。


その可能性も考えたが『戦いたくないリダ』には反応しないだろう。


そこから考えた結果。


アンサラーは恐らく『武器』と『殺気』それぞれに反応している気がする。


だから、俺は武器を使わずに、殺気を放たず、ただ親友の頭を撫でるつもりで行動した。


そして、それが予想通りだった。


そういう事だ。


「その剣は恐らく『殺気』と『武器』に反応するんだよ! その二つが無ければ反応しない。俺はただ親友の頭を撫でたり、体に触っただけだからアンサラーが反応しなかった、そういう事だ」


「なんだ、それなら問題ないじゃん! 僕に危害を加えるような相手には反応するんでしょう?」


「そうとは言えないな…ほらっ」


俺は殺気を消し、ナイフを隠し持った。


素早く近づき俺はナイフをリダの喉にあてがった。


「セレス?! そんな?」


殺気を隠すのは一流の暗殺者なら難しくない。


「その剣の最大の弱点は『暗殺に弱い』という事だな」


最も、暗殺じゃなく正面切って戦うなら、普通の人間ならまず勝てないだろうけど。


勿論、マモンや竜は別だ。


「種が解れば簡単そうだね」


「そうね、それじゃ母さんと今度は一対一でやろうか?」


「その後はリダちゃん私ね」


「えっ?! 嫌だよ!僕…」


まぁ三人とも一流の使い手だから、殺気を押さえる事位簡単だ。


もう三人にはアンサラーは通用しない。


三人と立ち会っているリダの顔はもう泣き顔に近かった。


此方を助けて欲しそうに見てくるが…ゴメン無理。


「頑張れ…」


そうリダに伝えて、その場を後にした。







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