第107話 皆で
今日は11人全員と街に繰り出した。
「シャロンも欲しい物があったら、何でも好きな物買って良いからな」
遠慮しそうだから、先に声を掛けておいた方が良いだろう。
「本当に宜しいのでしょうか?」
「ああっ奴隷だからとか別に思ってないからな、何でも好きな物買って良いよ」
此処はジムナ村…どうせ大した物は売ってないな。
「セレスくん、そんな事言って良いの?」
「静子さん、此処はジムナ村だよ、幾ら町になったからってそんな高い物は売っていないと思うよ」
「そうかな?セレス、此処はもう私達が知っているジムナ村じゃ無いようよ?」
「そんな静子さんに姉さん、驚かさないでよ」
「だけど、セレスさん、シャロンさん、マリアーヌと一緒に宝石商に入っていったわよ」
宝石商? いつの間にそんな物が…
しかし、静子達は、弟子だったからか、王族なのにマリアーヌ達を呼びつけ、それに対してシャロンには『さん』をつけている。
うちの家族は上下関係は無いとはいえ、周りから見たらもうグチャグチャだな。
「セレスさん、此処はもう私達が知っているジムナ村じゃないみたいよ? ただ綺麗になっただけじゃないみたい…」
「セレスちゃん、よく見て!」
確かに全然違う…ただお店が綺麗になっただけではなく、店の数その物が増えている。
「あっクズがいた、静子ほら…」
「あらあら、ほんとにクズが居たわね…パラライズッ」
「うぎゃぁぁぁ手足がしびれるっー-」
「ちょっと、セクトール、ねぇセクトール大丈夫、ねぇ」
チワが涙目で駆け寄ってきた。
まぁ、まだ恨みが完全には消えてないのか…仕方ないな。
「セクトールおじさん、大丈夫! 静子さんもいきなり魔法は無いよ…」
「おっセレスじゃない…静子…」
「うふふふっお久しぶりね…セクトール、パラライズだから安心してすぐに痺れは取れるから」
静子の顔がドス黒い、完全に怒っている顔だ。
「いきなり、何をするんですか! こんな往来で魔法を掛けるなんて非常識ですよ…セレス様もなんで黙っているんですか!」
「いや、チワ…そこに居るのが前の嫁でな…俺が奴隷として売り飛ばしたんだ…この位当然だ」
チワは涙目になりながらこちらを見ている。
だが、チワは奴隷になった事があるからこそ、その行いの酷さを知っているのだろう、何も言わなかった。
「ふぅ…もうこれで良いわ…忘れてあげるわ!今は、その子を幸せにしてあげて!その子のお腹妊娠しているのよね?」
「ああっ…そうなんだ…本当に済まないな」
「もう気にして無いから良いのよ、それじゃぁね!」
「ああっ、それじゃぁな」
「その…すいませんでした!」
「貴方が謝る事じゃないから、気にしないで、うふふっ頑張ってね、次に来るときは赤ちゃんを見せて貰うわね」
そう言い静子は微笑んでいた。
「はい…ありがとうございます」
セクトールおじさんとチワは何回もお辞儀をして去っていった…
良い話に纏まった…そう思うだろう?
いや、セクトールおじさんは前に白髪になる位の禊をしているからな…
あれじゃ足りなかったのか…
俺も怒らせないように注意しないとな。
「セレスくん、どうしたのかな? 顔色悪いけど、大丈夫!」
「セレス…どうした顔色が真っ青だよ」
「セレスさん、どうかしたの?」
「セレスちゃん…平気?」
皆優しくて綺麗だけど…怒らせると怖いんだよな。
すっかり忘れていた。
「昔にゼクトと一緒に怒られた事を思い出しただけだから、気にしないで」
「セレスくん…私そんなに怖かったかな」
「セレス?!私は凄く優しかったわよね!」
「セレスさんを怒った記憶はないわ」
「私もセレスちゃんを怒った事、記憶に無いわよ」
俺単体では殆どないけど…ゼクトやリダの巻き沿いで良く怒られたな。
助け船をつい出してしまうせいで、いつも…巻き沿いだ。
「怖いと思ったことは無いよ…怒られている時にも不謹慎だけど…『綺麗だな』そう思っていたよ」
「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)」」」」
多分、これで良い筈だ。
リダはフレイに引っ張られている。
多分、あの方向にあるのは武器屋だな…フレイは兎も角、戦いたくないリダに武器は必要ない。
「あの、僕は武器にはそんなに興味…」
「リダも私と同じ元剣聖でしょう? 家臣ではあるのだから武器位見ないとね、ほら行くよ…リダと一緒に武器屋方面見てくるよ」
リダは助けて欲しそうにこちらを見ているが…
甘やかすと言われそうだから、今回は無視だな。
この間、俺を見捨てて逃げたしお相子だ。
「そうか…解った」
「それじゃマリア、私達は教会に行きましょうか?」
「私は今日は買い物を…」
「貴方も元聖女でしょう? 新しい教会が気にならないの? 折角だからお祈りしに行きましょう、それじゃセレス様いってきますね」
嫌がるマリアをセシリアが無理やり引っ張っていった。
仕方ないな、こちらも元聖女どうし口を挟まない方が良いだろう。
残ったのは静子達4人とメルだけだ。
「皆は何処か行きたい所ある?」
「そうね、それじゃコンビニに行ってみたいわね…どうかな? セレスちゃん」
シュートおじさんの所じゃないか…
「あの、ミサキさん、まさか何かするわけじゃ無いよね」
「セレスちゃんは心配性ね、何もしないわよ、ただあの怠け者が、少しは変わったのか見てみたいだけだわ」
「それなら、行ってみる? なかなか便利なお店だよ」
コンビニなんて物は他の場所には無いから、見て貰うのも良いかも知れない。
それに俺のアイデアがどれだけ反映されているか、見てみたい。
◆◆◆
「此処が、あの人のお店…なかなかじゃない?」
確かに本物のコンビニは遠いが『何でも屋さん』という感じで品揃えが良い。
これで24時間営業なのだから、この世界じゃ便利だろうな。
「俺が思った以上に良く出来ている…凄い」
「あれ、セレスくんじゃないか? それに、ミサキに皆も…凄いなセレスくん、4人とも娶って…なかなか、幸せそうだね」
特にわだかまりはないみたいだ。
「シュートおじさん、お陰様で…あれシャルロットさんは今日は仕事して無いんですね?」
「はははっ、実は子供がお腹の中にいるのが解ってな、大事をとって今日は休んで貰っているんだよ」
幸せそうで良かったな。
「随分、仕事熱心になったのね、幸せそうで良かったわ」
「ミサキも幸せそうでなによりだね、今日はマリアは居ないのかい?」
「あの子は今日は教会に行っているわ」
「まぁ元聖女だから、大変だな」
「そうね、しかし随分品数増やして凄いわね」
「そうだろう…セレスくんの考えなんだ、此処に来れば24時間何時でも欲しい物は買えるし…スイーツもあるし、更に目玉にはセレスくんやカズマから教わったレシピから作ったお弁当もあるんだ…なかなかだろう…そうだ、折角来てくれたんだから、紅茶でも入れるから奥でゆっくりしていけば良いよ」
「貴方が入れるの?」
「まぁね…惚気るわけじゃ無いけど…今の妻がね好きだから覚えたんだ」
「へーあのシュートがね」
「ハルカさん、僕だって変わる事もあるんだよ」
「そうね…悪かったわ」
紅茶にケーキをごちそうになった後、まだ、話し足りなそうなシュートを置いてコンビニを後にした。
お店から立ち去る時に、大きな袋4つにこれでもかと商品を詰め込んだ物をおみやげとして貰ったが...正直ちょっと邪魔だ。
まぁシュートおじさんらしいな。
「もしかしてミサキさん…シュートおじさんが心配だった?」
「あらっセレスちゃん焼きもちかな?」
「そうだね、ちょっと焼きもちやいたかも」
「そういうのじゃないわ…ただちゃんと生活が出来ているか気になったそれだけだわ」
確かに、前のシュートおじさんだったら心配になるな…
「確かにそうだね」
「ほらね」
ミサキさんもシュートおじさんもわだかまりも無くて本当に良かった。
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