第108話 住んでいる世界が違う
はわわわわっ、なんで私はマリアーヌ様と一緒に宝石商にいるのでしょうか…
私、元はたかがカジノのディーラーですよ?!
更に言うなら一応は奴隷の筈なのですが…
『シャロンも欲しい物があったら、何でも好きな物買って良いからな』
とセレス様は、お優しく言って下さいましたが…まさかの宝石商です。
普通は、その辺のお店での買い物だと思うのですが…どうしましょうか。
「このネックレス、凄く綺麗ね…凄く良いですわね」
「流石、お目が高いですね、それは当店でも至高の一品でして…」
「それじゃ、これ頂きますわ」
「ありがとうございます」
王都や帝都なら兎も角、幾ら英雄セレス様の街とは言っても、そこまでの品は無い筈です。
そう思っていましたが…なんであんな物があるんでしょうか?
マリアーヌ様が購入したネックレスは金貨6000枚(約6億円)もします。
私は仕事柄、多少は物を見る目があります。
確かに価値があるような気はします。
「シャロンさん、私は鑑定持ちなので『品物の質』は問題なく上物なのは保証しますわ! シャロンさんも私付きでもあるのですから、好きな物を沢山買いましょう」
「はい、選ばせて頂きます」
ですが、こんな物は私には買う度胸はありません。
だってあのネックレス1つで私の一生分の賃金分位の価値があります。
私は入り口に近い銀貨~金貨2枚で購入できるコーナーに移動しました。
「シャロンさん、其処には余り、良い品は有りませんわ…こっちの方にしか価値ある物は有りませんわ」
いや、確かにそれはわかりますが、そこには金貨500枚以下の物がありません。
幾ら買って良いって言われても私は奴隷、それに使用人ですよ…
そんな高い物を買う度胸なんてありませんよ。
私が以前行っていた贅沢とは桁が違います。
「ですが…どれも高くて」
「シャロンさん、それは気にしないで良いのですわ、確かにセレス様に買わせるなら気がひけるかもしれませんが、貴方は私付きの侍女でもあるのです…ここは、どーんと王家が持ちますわよ! 私は王女でしかも継承権第一位なのですわ…さぁ、好きな物を好きなだけ選ぶと良いのですわ」
「え~と…すみません、庶民だったので…どうしてよいか解りません」
「そうですわね…ですが、貴方は『英雄セレス様』と王女の私、帝国の王女フレイ付きなのですわ、ある意味侍女の頂点と言っても可笑しくありません、特に我が王国の侍女は貴族の子女が多いのですわ…それなりの物が必要なのですわよ」
「ですが、こんな高級な品、私は選べません」
それを聞くとマリアーヌ様は顔色を変えました。
「確かにそうですわ、気が利かなくてごめんなさい…私」
「あの…」
「こういう物は主である私が用意してあげるべきでしたわ、幸いこの宝石商には王都並みの品揃えがありますわね…取り敢えず、ネックレス3つに指輪5つ、それぞれ金貨2000枚位の物で見繕って下さいませ」
「畏まりました、少々お待ちください…」
そういうと店員さんが幾つかのネックレスと指輪をこちらに持ってきた。
「この辺りの品が宜しいかと思います」
「…」
見た瞬間からどれもが高価な物なのが解ります。
恐らく、貴族階級の方でもそうは買えない品です。
「こんな高価な物、私には不相応です」
「そう?だけど、この先必要になるわ…貴方は私の付き人なのですわ…仕方ありませんわ、鑑定! う~ん、丁度良いですわ、この中で価値があるネックレスが2個に指輪が3個ありますわ…これにしましょう…店員さんこれを頂きますわ」
「ありがとうございます…それではご用意させて頂きます」
「そう、お願いするわ」
「あの…本当に宜しいのでしょうか?」
「宜しいもなにも今後必要な物ですわ…公式な場所に今後いく際に必要な物なので気にする事はありませんわ…流石にドレスを販売しているお店までは無さそうですわね…そちらは今度また買って差し上げますわ」
「ありがとうございます」
よく考えれば、私の仕えている方の殆どが、凄い方なのを忘れていました。
これから慣れていけば良いのかも知れませんが…
果たして私はこの生活に慣れる事が出来るのでしょうか?
私にとって、皆さんは『住んでいる世界が違う』本当にそう思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます