第83話 魔族 停戦希望
どうやら、静子達とマリア達の間で話は納まったようだ。
「セレスくん、これからはもう料理を始め家事はしちゃ駄目よ」
やんわりと静子に言われた。
何でもこれからは三人に全部やらせるらしい。
本当に大丈夫なのだろうか?
俺だって最初は、少しは教えたんだ…だけど余りに酷いから匙を投げて…俺一人がする事にしたんだ。
ただ、花嫁修業だというなら…やらせるしか無いのだろう。
多分、三人には厳しい事になるだろう。
明日は此処に教皇、名誉教皇、帝王、前の聖女に前の剣聖で王女が来る。
なんだか、凄く大変な事になりそうな気がする。
このままの話の流れで行くと静子達4人に3人が加わり7人は確定だ。
そこに3人の娘が加わり10人…流石に此処じゃ手狭だ。
コハネの小城に引っ越せば良いような気がするが…
問題は『魔王』だ…ゼクトが勇者を辞めた以上、誰が戦うんだ…
どう考えても俺に白羽の矢が立つ気がする。
今考えても仕方が無い…明日だ、明日。
◆◆◆
「マモンが殺されただと」
「はっ」
馬鹿なあのマモンが死ぬなど考えられるぬ。
余より強い、あのマモンが死ぬ…という事は余を確実に殺せるという事だ。
「一体何人だ…5万か10万か、まさかそれ以上の数で…」
「いえ…それがたった1人に倒されました」
「可笑しな事だ、勇者ゼクトは弱いという話だった筈だが…」
「それがマモン様を討ち取ったのは『英雄セレス』という存在です」
可笑しいぞ…英雄と言う存在は魔族より対人が強い存在が多い。
少なくとも単騎でマモンを葬るようなジョブや存在では無かった筈だ。
『英雄が仲間を集め戦った』それなら解らなくもない。
だが…単騎の英雄は強い筈はない…
マモンはおろか四天王、いや幹部にすら届かぬ筈だ。
マモンはよく『バグ』と呼ばれている。
バグとは「通常では起きない事を指す」
もしかしたら魔族側に『マモン』というバグが生まれた様に人間側にもバグが生まれたのかも知れない。
「それで、そのセレスという人物はどの様にマモンと戦ったと言うのだ…」
「それが、空を飛びマモン様を運んでいかれたので解りません」
「嘘を申すな、人は空を飛ばない、それにもし空を飛べるにしても、四天王の『空のフェザー』ですらマモンを掴んで空を飛べないんだ、人間に等出来る筈はない」
「ですが、かの者は火を噴き、空を飛んだのです」
バグだ…そんな人間は居ない…人間側にもバグが起きたのだ。
これから先、魔族側に勝利は無い。
もうおしまいだ。
これからは魔族側に勝利は無い。
仕方が無い…
多少譲歩させられるが…『停戦』しかない。
今ならまだ魔族と人間では魔族側の方が優位に立っている。
立場が優位なうちに停戦しかない。
100年、いや300年の停戦をすれば『英雄セレス』はいない。
悠久の時を生きる魔族に対し人間はたかだか60年、100年生きる者はいないと聞く。
ここは多少の犠牲を払っても、セレスとの戦いを回避するために、停戦をするべきだ。
「残りの四天王を集めろ」
「はっ」
此処は停戦、それ一択しかない。
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