第81話 本当に運が良いのか?



これ、本当に『運』を味方につけているのか?


『私はセレス様の奴隷ですから、生涯貴方に仕えさせて頂きます』


ディーラーのお姉さんがストーカー化している。


勿論、奴隷商にいって書類の撤回をしたのに…ひたすらついてくる。


カジノも、あの時は腹がたったから、ああは言ったけど…よく考えたら『絶対負けない博打は酷い』そう思って権利を返そうとしたんだけど…


『何を言われるんですか? 英雄様の後ろ盾は喉から手が出る程欲しいので逆に助かります…これで貴族なんか怖くない』



と頑なに、俺の権利の返還を受け入れてくれなかった。


流石に5割は無いと思っていたんだ…


『寧ろ5割は安いですよ…今迄どれだけむしり取られたか…』


駄目じゃん…


これの何処が『運』が味方になっているんだ。


確かに博打には勝った。


定期収入も手に入ったし、美女ディーラーに好かれた、だがそこに俺の意思はなんで反映されないんだ…


他人から見たら幸せかも知れないが…俺的には決して良い結末じゃない。


「ドラゴンウィング」


取り敢えず、俺はその場を逃げるしか無かった。


◆◆◆


家に戻ってきた。


「だから、母さん、俺達にはセレスが必要なんだ!」


「うふふっ、今ね、母さん凄く幸せなのよ…まだ新婚なのよ? その幸せを息子の貴方が壊すのかしら? そんな親不孝じゃ無いよね?」


「お母さん、頼むからセレスを私達に返してよ!」


パシー――ン!


「セレスを物みたいに言わないでくれるかな? 追放したんだからもう関係ないじゃん? リダとはもう縁が無いのよ…自分達の事は自分でしなよ…折角、楽しい生活を送っているんだから邪魔をするなぁぁぁー-っ」


「お母さん痛いっ!ビンタする必要ないでしょう!」


「煩い」


「お母さん、お願いよセレスを返してよ!」


「あらあら、マリアちゃん、セレスちゃんはもうお母さん達の旦那さんなのよ? 返すって何を言っているのかな? 恋人でもパーティメンバーでも無い貴方に、そんな事いう資格はないわ…お母さん、今幸せなの…邪魔するならマリアちゃんでも許さないわ…親子の絆でも守れると思わない事ね…」


「そんな」


「お母さん…」


「メル…貴方最低よね、昔から仲良くしてくれた、セレスさんにあんな酷い事 したんでしょう? 貴方が選んだのはセレスさんじゃない! ゼクトなんだから、此処に来る意味あるのかしら?」


「…そんなお母さん…お願い助けてよ…」


なんだか、ゼクト達が押し掛けてきて揉めている。


「ゼクト殿何を言っているのです、可笑しいですわね? 貴方達はもう勇者では無いのですわ! その貴方達になぜセレス様が同行する必要があるの? 既に国王より地位が上の方なのですわ…それに私はこれでも王女ですわ…なぜ、只の平民が私に跪かないのですか…無礼ですわ!」


ああっ不味い、修羅場だ。


ゼクト達は悔しそうに跪いた。


「それでザマール王国の第一王女の名の元に言いますが、たかが平民が私の婚約者を何故連れまわそうとするのですか? 明日には此処に教皇様や帝王様も来られるのですわ…ゼクト、貴方はもう魔王討伐の任を解かれましたわ…自由に冒険者として生きれるはずですわ…セレス様は必要ないですわね…」


「俺達には必要な仲間なんです…お願いです返して下さい」


「「「お願い、返して」」」


「はぁ~良いですか『平民』、セレス様はこの先私と結婚して王配になる可能性がありますわ…それに帝国も同じ可能性が高いですわね、聖教国は教皇様に子供が居ないから元聖女を妻に…まぁそれを別にしても、セレス様は既に『世界で一番偉い』それを公式に発表されていますわね…よいですか? 貴方達には解らないかも知れませんが…これは各国の重要人物をセレス様が娶り三国統合、将来的にはそこ迄考えてなのですわ」


「そんな」


「「「それじゃぁ~」」」


「はい、セレス様は絶対に貴方達の所に戻る事はありませんわ」


ヤバいな…これかなりの修羅場じゃないかな?


「「「「セレスー-ッ」」」」


不味いな…4人と目があった。


「久しぶり…ゼクト」


「あの…セレス…お前は俺を見捨てないよな…」


「あのさぁ、マモンからも俺は助けたよな? しかもゼクト達はもう勇者じゃない…これからは自由に暮らせるんだ…自由は良いぞ」


「だけど、私にはお前が必要なんだ!」


「そうよ…今度はちゃんと優しくするから」


「うん…あの時はゴメンね」


ハァ~…自由に成れたんだから、後は良いだろう。


「俺はもう必要ないだろう? S級冒険者が4人も居るんだ、金なんて幾らでも稼げるし…魔王とは戦わないし、旅を続けないんだから…従者を雇えば良いだけじゃないか? それに大好きな者同士一緒に居られて幸せだろう」


普通に考えてもう障害はない筈だ。


この先、幸せな未来しか普通は無い筈だ。


此処で俺に拘る必要は無い。


急に此処でゼクトが爪を噛み始め…顔色が変わった。


「俺たちはもう終わりだ…」


ぽつりぽつりとゼクトは話し始める。


色々、言い訳をしていたが簡単に言うなら『怖くなった』そう言う事だ。


竜に恐怖し、マモンに負けた今…全てが怖くなったのかも知れない。


今でもオーガも狩れて普通より楽な人生が送れる。


だが、弱い魔物でも…負ければ地獄が待っている。


ゴブリンやオークでも負ければ男は殺され女は苗床にされる。


オーガの一撃が当たれば死ぬかもしれない。


冒険者はどんな弱い冒険者でも『その恐怖』を背負って戦っている。


だが、ゼクトを除く3人は…その恐怖に耐えられなくなってしまった。


「なぁ、ゼクト…お前は三人が好きなんだよな…なら責任もって養えば良いんだよ! オークマンを見ろよ10人近い妻を持ち、沢山のガキを養っているんだぞ、冒険者のクラスはお前より遥かに下だ」


「いや、セレス俺は…」


「もう俺なんて気にする必要は無い…もう何処にも障害は無いんだ」


「だが、俺は一夫多妻は勇者じゃないから出来ない」


「ゼクトそれは間違いだ、勉強しておけ『勇者パーティに1回でも所属すれば』だ、その証拠に前の勇者パーティで一時、荷物運びをしていたオークマンが多数の妻も持っているし、魔法戦士の俺も『英雄』になる前に静子さん達4人を妻にしている…だからゼクト大丈夫だ…もし駄目なら俺がどうにかしてやる」


大体、そのハーレムで暮らすのがお前の夢だった筈だ。


その夢が叶うのに歯切れが悪いな。


「いや…だから」


「良かったじゃないか? ようやく一線を越えられるんだ、さっさと童貞を捨てて、オークマンみたいに子供を沢山作ってしまえ」


「だからー-っ! セレスお前は勘違いしているが、俺は三人を愛して等いない…そうかセレスは戻らないし…此奴らは足で纏いだ」


「ゼクト…お前、何が言いたい?」


「セレスが手に入らないなら此奴らは要らない…此処迄は『情』で手元に置いていたが、最早パーティメンバーでも無い…それじゃセレス…お前に任せた…此奴らは置いてい…えぼばっぐっ」


馬鹿だな静子さんが居るのに…


殴られてやがんの。


「私の教育が間違っていたようね…ゼクト今逃げようとしたわね?」


「母さん…俺は…逃げるー――っ」


「悪いな、ゼクト…俺からは逃げられない」


俺は入り口に回り込んだ。


「なぁ、セレス…三人が好きなのは俺じゃない、お前だ!」


「流石にゼクト引くぞ…そんな嘘をつくなよ! 言いたくは無いが俺を追い出してまで欲しかったハーレムだろうが…今なら4人で楽しく過ごせるんだぞ…いい加減にしろ!」


「本当だって! 嘘だと思うなら三人に聞いてみろよ!」


「三人ともゼクトはこう言っているが嘘だよな…」


「「「…」」」


「ほら見ろ、三人とも答えないじゃないか?」


「ゼクト…いい加減にしろよ」


「私に必要なのはセレスだ…本当は恋人になりたいが、お義父さんで構わない…傍に居させて貰えないだろうか?」


「私も恋人が良いけど、駄目ならパパで良いから傍に居させて…確か勇者の一夫多妻は近親OKな筈だから母娘でも良い筈よ」


「セレス…酷い事言ってゴメン…私も真実の愛に気がついたの…駄目かな」


「リダ…ちょっとお話しようか? 母さんと張り合おうって言うのかな?」


「あらあら、マリアちゃん…私結構、貴方に優しくしていたけど、お仕置きが必要みたいね…」


「ねぇ…メル、泣かされたいのかな? 今なら『ごめんなさい』でゆるしてあげるわ…」


こうなったら放って置くしか無いな…


最早カオスだ。


「セレス様…巻き込まれると大変ですわ」


そう言ってマリアーヌに袖を引っ張られた。


巻き込まれると大変なので、マリアーヌと隣の部屋に移った。


何が『黄竜は全ての運を味方につける』だ…嘘つきー-。


こころの中で黒竜を罵った。













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