第80話 黄竜の力



なんだか凄く疲れる。


色々頑張った結果が自分の首を絞めている気がするのは気のせいじゃないだろう。


俺は静子達に断って散歩に出かけた…やばいな。


街から外に出ないと…マモンなんて比べ物にならない恐ろしい敵が迫ってきている。


『ドラゴンウィング』


相手の目的は俺らしい…だから俺は空を飛び、近くの森に逃げた。


此処なら街に被害は出ない。


「久しぶりだな!」


目の前には…俺を殺した黒竜ともう一人の男が立っていた。


黒竜1人でも怖いのに横の小柄な優男からも同等の気を感じた。


最早、恐怖しかない…自分が強くなった事で…更に二人の強さが良く解る。


だが、それだけじゃなく、何故か親しみを感じる。


「黒竜?それにもう一人は...」


「横に居るのは青竜、俺と同じく竜の王族『竜公』だ、お前、戸惑っているな…はっきり言おう、今のお前は俺達と同じ竜公、竜の王族になったのだ」


何となくは解っていた。


だから驚きはするがショックはない。


ただ、問題は…


「それで俺はどうなるんだ…まさか殺されたり、何処かに連れていかれたりする事になるのか?」


「ないない…数百年から数千年自由に生きて飽きたら、僕らの国、竜の国ドラゴ二ウムに来れば良いんだよ」


「竜の国? そんな物何処にあるんだ?」


「普通の方法じゃたどり着けない…だが竜の本能があれば来れる…いつか解る時が来る…俺達が此処に来たのはお前がどんな『竜公』になったか知る為だ」


「どんな竜公?」


「竜の王族、竜公…まぁ神でもある…だが、竜は不老不死だから、後は継げないから一生竜公だけどな、はははは...だが同じ竜公でも自分の色によって使う力は違うんだ」


確かに死なないなら跡取りなんて要らないな...だが色によって力が違うのか。


「それで俺は何をすれば良いんだ?」


「簡単な話だ、俺達の前で竜の姿になれば良い」


別に問題は無いか。


「解った…『竜化』」


俺は竜の姿になった。


「これで良いか?」


何故だ…黒竜の目が憐れむ様な目に変わった。


泣きそうに見えるのは気のせいじゃないだろう。


「黄竜か…可哀そうに、お前の人生…いや竜生はこの後つまらない事ばかりしかない…」


「ああっ、黄竜だなんてただでさえ退屈なのに...同情するよ」


「なんだ、何か不味いのか? 忌み嫌われているのか黄竜は?」


「違う...何もかもが恵まれすぎるんだよ黄竜は…一応お前は俺から生まれたから…加護を与える力は封じさせて貰う…悪いなお前の加護は人を腐らせてしまう…だがお前の力はそのまま、どうする事も出来ない…邪神も女神もバウワー様もお前には手出しできない…勿論俺達もな」


「そんな冗談を」


「竜滅気炎牙――ッ」


強大な大きな炎の竜巻が現れた…こんな巨大な物が放たれたら…誰も防げない…本当に国を亡ぼす力が俺の前にある。


「黒竜、やはり俺を殺す気かぁぁぁー-っ」


「黒竜は君を殺す事は出来ないよ...ほらね」


だが、放たれた竜巻は俺にぶつかる前に別の竜巻が現れかき消された。


「嘘だろう...何が起きたんだ」



「すべての運を味方につけすべての存在に愛される竜…それが黄竜…これで解っただろう…俺が殺す気で放った一撃を自然現象がかきけした…きっと、お前は…長く生きる中で、どうしようもない退屈な膨大な時間を過ごす事になる...まぁ頑張れよ」


「黒竜...『竜の掟』について忘れている...僕が説明するね...『竜公同士は何があっても争ってはいけない』『世界を亡ぼす様な事をしてはいけない』『全ての竜を慈しむ事』その三つ...まぁ普通はやらないよね」


最後まで俺に哀れみの目で見つめながら2人は去っていった。


◆◆◆


黒竜や青竜の言った事が良く解らない。


だが『運を味方につける』この意味が気になった俺はカジノに行ってみた。


運が本当に味方だというなら、ルーレットが良い。


確率は1/36の一点掛け。


0に連続して賭ける。


金貨1枚。


「凄いですね1点賭けですか?」


「まぁね…」


「流石、英雄運にも恵まれているんですね…0です」


金貨1枚が36枚になった。


「それじゃ全額0で」


「流石に2回は無いですよ…」


明らかに動揺しながらルーレットをまわした。


「なっ…また0」


確かに顔色も変わるだろう…金貨1296枚(1億2千960万)もたった2回で持っていかれたんだからな。


運が良いのが解った。


だから此処でやめようと思っていたのに…


「セレス様、勝ち逃げですか? 良かったら私とさしで勝負しませんか?」


ディーラーが変わった…


俺の好みではないが…なかなかの美少女だ。


ただ、若い…多分10代…好みじゃない。


「やっても良いけど? 俺はこのまま金貨1296枚一点賭けしかしないぞ、勿論数字は0だ…それで良いのか?」


「構わないわ…それで良いわ」


《馬鹿ね、この台には仕掛けがあるのよ…これで終わり》


「解った…それで良いなら受けるよ」


俺は金貨1296枚を0に賭けた。


「それで良いのね」


「ああっ」


ルーレットは周り、変な動きをしたが0に入った。


「嘘…こんな、こんなわけない」


金貨46656枚(46億6千560万円)


「流石に、これで終わりで良いだろう?」


「待ってこれじゃ終われないわ、もう一勝負お願い!」


「同じ条件なら受けても良いけど、払えるのか? 金貨1679616枚(1千679億6千160万)だぞ…この店より高くなるぞ」


「それは…」


「オーナーに聞かなくて良いのか?」



◆◆◆


「すげー…英雄は運をも味方につけるのか…レート無制限とはいえあの勝ち方…」


「その前に金貨46656枚払えるのか? この勝負カジノが負けたら金貨1679616枚…そんな金額貴族や王族だって払えないぞ」



◆◆◆


「オーナー…」


「お前…ふざけるなよ、金貨46656枚だってこの店にはないぞ、装置は使ったのか?」


「使ったのに駄目なんですよ…どうしましょう?」


「どうしましょうじゃねーぞ! 相手はセレス様だぞ、今や教皇様以上の貴人、それに…うちの用心棒じゃ歯が立たない…いや、後ろ盾の貴族も全部役に立たないんだ…どうするんだ?」


「こんなのは絶対にありえません…いかさまですよ!」


「だが、見破れなければいかさまじゃない…しかも調べればこちらのいかさまがばれるんだ…」


「それじゃ、どうするんですか!」


「仕方が無い…おいっ」


「へぃ」


いきなり後頭部に痛みを感じました。


そのまま意識を私は手放しました。


「おい、奴隷商を今直ぐ呼べ…金庫から金貨1296枚(1億2千960万)をすぐに持ってくるんだ」



◆◆◆


「セレス様…申し訳ございません…当カジノのオーナーゴードンと申します」


「ああっ流石に、このカジノは青天井とはいえこれ以上は無理だろう?」


「はい…無理でございます…それでこの度の件は、此奴が勝手にした事でございます…どうぞ…」


さっきのディーラーの女性が猿轡を噛まされた状態で手足が縛られて転がされた。


「これは?」


「まずはこれを?」


「これは?」


「はい金貨1296枚でございます…」


「待て!おれの現在の勝ち分は金貨46656だ」


「確かに納得いかないと思いますが…本来は金貨1000枚を超える勝負は行っておりますが、その際はオーナーに相談の上となっております」


「それはそちらの落ち度だろう?」


「いえ、この者の落ち度です…ですから、この者の前までの勝ち金と…勝手な事をした、この女で支払いとさせて頂きます…奴隷身分に落としまして、書類も作りました…お受け取り下さい…奴隷紋も刻む場合は王都の奴隷商なら支払い済みですので刻んで下さい」


「おい…」


「どうしても、これで許して頂けないなら…お金はご用意しますが、この女は…こちらで処分させて頂きます」


「随分と可笑しな話じゃないか? 俺にはトカゲのしっぽ切りに思えるが」


「これが法でございます」


「法…それなら簡単だ、俺は『英雄』で勇者と同等と扱われる…その為『勇者保護法』が適用される…そんな法律守る必要が無い、最もそんな法律あるとは思えないが? ロマリス教皇でも呼ぼうか? それとも明日、ザンマルク4世が来るから、どちらが正しいか判断して貰おうか?」




「そ、それはですが、私にも、このカジノにもお支払いする力はありません」


「そう…なら、無い物を言っても仕方ないから、このカジノを貰えば良いや」


「そんな…」


「多分、足りないと思うが、それで良いよ? なんならそこの用心棒けしかけるか? それならもっと簡単に…」


「解りました…カジノは差し上げます」


馬鹿な事言わなけりゃ…此処迄しなかったのに…


まぁいいいや…貰っても仕方がないな。


「取り上げるのも悪いから、やっぱり返す…その代りカジノの利益の半分を俺にくれれば良いや」


「それで良いのですか?」


「ああっ、良いよ」


只の腕試しのつもりだからな…










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