第77話 6人目の竜公とフレイ
マモンも倒したし、これですべて終わった。
だが、今の俺はもう…人間ではない。
見た目こそ人間だが、この体は竜だ。
それも、恐らくは竜の王族に近い力を持っている。
マモンと戦い、マグマを泳いでいた時に、この体の力が解り始めた。
『竜化――っ』
その瞬間、巨大な黄色と言うか黄金のような竜に変わった。
黒じゃないのか?
てっきり黒竜関係だから黒かと思ったら、黒じゃなくて黄色?
前世の記憶だと…金とか白はアルビノで体が弱い。
そのせいか黒竜よりも幾ばくか小さい。
だが…それでも解る。
黒竜には恐らく絶対に勝てないが、今のこの状態ならマモン等瞬殺。
マモンが本当に魔王より強いのなら…黒竜が1人で皆殺しに出来ると言っていた通り…恐らく俺でも魔王城に行き、皆殺しに出来る。
恐らく、この世界を支配しているのは竜だ。
今の俺は…竜の王族じゃなければ倒せない。
しかし、何故、本物の竜の存在を誰もが知らないのだろう。
冥界竜バウワー…竜の王族。
それ以外に俺に勝てる奴はいない...そう断言できる。
最も…逆にその辺りが来たら…俺は絶対に勝てないな。
『人化』
どう見ても元の人間。
だが、この状態でも人ではなく竜。
女性を抱く事は出来ても子供は作る事はきっと出来ない。
それよりも、あんな戦い方をした俺を人間は受け入れてくれるだろうか?
マモンと戦っていた俺は正に化け物だった。
もしかしたら、人間側はもう俺を受け入れてくれないかも知れない。
それに…魔族のマモンを『美味しそう』そう思ったし涎が思わず垂れてきていた。
多分、竜は悪食で魔族すら食料にするのかも知れない。
こんな人間で無くなった俺を果たして受け入れてくれるのか…
『ドラゴンウィング』
俺は羽を羽ばたかせ街へと戻っていった。
◆◆◆
「可笑しい…何故だ6人目の竜公が誕生した…あり得ん」
普通の竜と竜公は違う。
この世の中の生物は強いほど子を産む数が少なくなる。
竜の中の竜である、竜の王族は子供をなす事は出来ない。
自分の肝を与える事により仲間を増やす事は出来るが、それは生まれ持っていた肝、1回のみ…しかも、肝を食したとして、普通は『なりそこない』になり、竜とも元の種族とも違う知能が無い化け物になる。
無事竜公になる確率は限りなく低い。
その証拠に5大竜公のうち、4人の肝を貰い変わったのは…竜とも思えないただの悍ましい化け物…だった。
つまり、竜公が生まれるチャンスは後1度、それもこれまでの可能性からしたらかなり低い。
黒竜の肝を食べた存在のみわずかだが可能性はある…恐らくこれが最後の竜公だ。
今現在、竜公には黒竜 白竜 金竜 赤竜 青竜が居る。
6人目の竜公…果たして色は何色だ。
それより…
「黒竜…お前は一体誰に肝を与えたのだ」
「以前、バウワー様に頼まれて見に行った奴…セレス、彼奴にやった…俺と戦った時誤って殺してしまったんだが、ルール通りなら彼奴の勝ちだった…償いの意味も込めて肝をやった…まぁ死んでいたけどなぁ」
「そいつは死んでなどおらぬ…最後の竜公になりおった」
「新しい竜公など何千年ぶりだ…6人目最後の竜公だな」
セレスの肝を食べた者も竜公になり得るが…5大竜公の肝によって新たに竜公になれたのはセレス1人、確率は低い…しかも竜でなく他種族から竜公になった存在の肝は恐らく人の血が混じり…食しても竜公には成れぬ可能性が高いだろう。
「そうだ…それでお前…新しい竜公について調べて来い」
「また俺ですか? 偶には他の」
「顔を知っているお前が適任だ…それと会ったらお前からしっかりと『竜の掟』について説明をするのだ」
「バウアー様…俺にそれは向かない…解っているだろう?」
此奴は確かに自他ともに認める脳筋だったな。
「解った…青竜を連れて行くが良い」
「解った…竜公までなって…」
「今回の件はお前が原因だ…」
「ああっ…すまない…直ぐに行く」
「特に司る色についてしっかり見極めてくるようにな」
「解った」
6人目の竜公…何故今生まれたのか…解らぬな。
◆◆◆
ガルバン帝国にて
「これは本当の事か!」
「はっ帝王様…」
セレス殿が強者とは聞いていたが…まさか此処迄であったとは。
『黒の狂騎士ミサキ』『笑顔の切り裂き魔ハルカ』を妻に持つような男だから気にはなっていた。
帝国は『強き男』を優遇する…勇者などの肩書では見ぬ。
実際の武功でのみ判断する。
勇者とて強くなるまでは若造だ。
だが、このセレスという男、此奴だけは俺も注目していた。
竜種を狩り…ストイックに自分を高める。
実に見事な男だ…
詳しく調べれば…あの性悪な4人も妻にしている。
どう見ても只者じゃない。
あの4人で良いなら年増でいけるはずだ。
年増で良いなら娘とそのうち引き合わせよう…そう思っていたがまさかマモンまで倒すとは…
「だれかフレイを呼んで来い」
「はっ、ただいま」
「お父様、何か御用ですか? また縁談ですか? このフレイ魔王には負けましたが、未だに強者だと思っております、婚姻条件は私より強い男、それは曲げられません」
そうは言ってももう28歳。
行き遅れ感は否めない…
こんな性格で無茶な条件だからか、もう縁談も来なくなった。
『元剣聖』等に勝てる者など普通はいない。
「ああっその条件なら満たしておる、お前と引き合わせたいのは『英雄』セレス殿だ…」
「かの英雄ですか? 確かドラゴンスレイヤーの称号持ちとか…良いですよ、私と試合って勝ちましたら嫁にでもなりましょう」
「その必要は無い…セレス殿の4人の妻はハルカ殿たちだ…」
「あの、師匠の伴侶…ですが当人が強いかどうか解りません」
「だったら、これを見よ…」
「マモンと互角に戦っている…」
「お前が試合などせんでも、お前より遥かに強いぞ」
「そのようですね…異存はございません…進めて下さい」
さて…フレイの婚姻と次期帝位…そこから交渉していくか。
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