第78話 英雄逃げる



街までは一っ飛びで簡単に着いた。


ゼクト達も手足を治して貰ったみたいだな。


良かった、良かった。


翼を納め地上に降りた。


「あのぉ~お義父さん、俺お義父さんと一緒にもう一度パーティ組みたいな…なんて」


「私もお義父さんと呼ぼうかな? ねぇ一緒に旅をしようよ」


「ねぇパパって呼んだ方が良いのかな…助けて」


「あのお義父さん」


何だか気持ちが悪い。


てっきり、ゼクト達の方がダメージがあると思っていたが、これ俺の方がダメージ多く無いか?


「なんだか気持ちが悪いなぁどうした?」


「あのな…そのお義父さん」


「ゼクト、何だか気持ち悪いから、セレスで良いよ」


「セレス、あのな紹介したい人が居るんだ」


誰だ、紹介したい人なんて。


「セレス様、初めましてセシリアと申します! 元は聖女をしていました!」


「知っています、有名人ですから」


女神イシュタス様に瓜二つと呼ばれる美人として有名だし、元聖女だ知らない筈が無い。


「それなら話が早いですよ、私を5人目の妻にして欲しいと思いまして如何でしょうか?」


如何でしょうか? も何も…どんな人かも知らないのに…


「俺はセシリア様の事を何も知らないし、過ぎた嫁が4人も居ますので…」


「それなら大丈夫ですよ、私の師匠は貴方の妻の一人静子です、以前は姉妹の様にしていました…それに他の三人とも仲が良いので持って来いだと思います」



どうして良いか解らないな、だがそう言えば、静子達からも仲が良いとは聞いた記憶がある。


「そんなに話を急いでもセレス様がお困りじゃないか?」


今度はロスマン名誉教皇…


「ですが…」


「気持ちは解りますが、こう言うことはゆっくりと考える必要がありますからね…セレス様、所でマモンはどうしたのですか?」


俺は収納袋からマモンを取り出し見せた。


「かかか完璧に死んでいる…あのマモンを追い払うのではなく倒されたのですね」


「凄い、流石は私が生涯仕えたい…そう思えた唯一のかたです、生涯お慕いします、セレス様」


「さぁ受け取って下さい、約束しましたコハネの小城と周辺の土地の権利証でございます…爵位は申し訳ございませんが与えられません…そして、たった今からセシリアは妻として生涯貴方様に仕えます」


なんでロマリス教皇まで居るんだ…教会の重鎮二人が此処に居るなんて…可笑しいだろう。


「私から補足しますともはやセレス様に地位なんて関係ありません『真の英雄』なのですからこの私よりも、そこのロマリス教皇より上の存在…そんな方に爵位なんてもってのほか…だから与えないだけです…貴方より上の存在は、もうこの世に居ないのですから」


嫌われるよりは良い…だが、これは凄く面倒な事になった。


「いきなりそう言われても…」


「今、ロスマン名誉教皇様が言われた通り、この世界で女神を除き一番偉いのは『セレス様』です、いきなりではございません、セシリア様の件も含み私は以前に約束しました、その約束を今果たします」


そう言うと記録水晶に画像が浮かんだ。


『コハネの小城と周辺を領地と与えましょう、爵位も思うがままでございます…活躍によっては『先の聖女セシリア』との婚約も検討致しますぞ』


駄目だ…あの時の記録水晶…コピーがあったのか。


「解りました…謹んで褒美の品はお受け致します…ただセシリア様の婚姻だけは妻たちが受け入れたら…そういう事で許して貰えませんか」


「私は構いません…静子師匠やサヨさんとは親友と言っても良い位ですし、まず反対はしないと思います」


「そうですか…解りました」


確かにセシリア様は凄く綺麗だ。


長い金髪にスレンダーな体、女神に瓜二つと言うだけあって清楚な美人だ。三大美女と過去に言われただけあって外見だけならドストライク…ただ幾ら美女でも…何も知らない女性を娶れと言われても困る…


「それじゃ、早速…」


そう言うとセシリア様は通信水晶を取り出した。


水晶には…嘘だろう…静子達が映し出された。



「セレスく~ん、私達を騙したわねザンマルク王から聞いたわよ…」


「セレス、死んだらどうするつもりだったの? 私を未亡人にするつもりだったのかな? 帰ってきたらお説教するからね」


「セレスさ~ん、今回だけは私もハルカに賛成だからね」


「セレスちゃん、こういう時はどうするのかな?」


ああっ…こういう時の静子達は怖いな。


「ごめんなさい」


「4人ともセレス様を許してあげて下さい…皆さんのお子様たちがマモンに人質にとられて仕方なかったんです…責めるならゼクト達を責めるべきです」


「「「「セシリア?」」」」


「お久しぶりです皆さん」


「あの、セシリア…それでマモンはどうなったの? セレスくん怪我して無いみたいだけど、貴方が治してくれたの?」


「私が治したのは貴方の息子さんたちです…セレス様はマモン相手に無傷で勝利されたのです」


「「「「マモン相手に? 本当に?」」」」


「はい、死体を見せて頂きました…それで褒賞の一つに私との婚姻があるのですが…師匠たちが認めてくれたらとセレス様が言うのです」


「そう言うことね…それでセシリアは教会の意思ではなく自分の意思、そういう事で良いのね」


「はい」


「それじゃセレスくん、娶っても良いけど、娶るならセシリアだけじゃ無くてマリアーヌ王女とフレイ王女も三人一緒に考えて」


「あの、静子師匠…それってどういう事でしょうか?」


「あら簡単よ、セシリアちゃんだけ娶ったら教会の思う壺でしょう? 娶るなら三人一緒にしたら、今と同じ…つまりは何処の国にも左右されないじゃない? 皆で話し合って決めたのよ…あとはセレスくん次第だけど…私は反対しないわよ…」


「セレス様…」


この流れは不味い…そうだ…先延ばしにしよう。


「三国に関わる事だから…話し合って決めるから…それじゃまた今度…ドラゴンウィングー-っ」


教皇と名誉教皇も居るが、俺が一番偉いなら問題は無いだろう。


俺は空高く舞い上がり…その場を逃げ出した。


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