第75話 VSマモン 蟹は焼きすぎると食べられない




「俺の肉を食い千切るとはな…よくぞ此処迄、俺を傷つけた物だ…お前は強い…敬意を表する…俺は魔王の名前を忘れてもお前の名前を忘れることは無いだろう…」


何故だ、何故こんな話をする。


「そうか…」


「これを使えば、俺は力をかなり失う、最早四天王ではいられない…だが、それでも…お前と本気で戦ってみたくなった」


マモンは自分の二本の角を自ら折り、バリバリと食べ始めた。


このままでは不味い。


俺はマモンに掴みかかった瞬間投げ飛ばされた。


俺の体がぶつかり、4階建てのレンガ作りの家を20軒以上壊し、ようやく止まった。


「ぐはぁっ、やってくれる」


見るとマモンはやや黒くなり体は三倍位になっていた。


「魔族の角は力の象徴! 特に俺の角には大量の魔力が溜まっている…それを取り込む事により通常の何倍もの力を振るう事が出来る…これをしてしまったら、俺はまた数十年この力は使えない、さぁ行くぞ」


マモンが殴ってきた。


「うがっ…なんだ…あれっこの程度か、行くぞー-っ」


俺は手刀をぶち込んだ。


「ぐわぁぁぁぁー-っ、何だその爪は」


マモンを倒す…そう思った瞬間、俺の手から爪が伸びた。


その爪がマモンに刺さって折れていた…しかも折れた爪がもう再生している。


「俺も知らない」


だが、流石にもう自分に何が起きたのか察しがつく。


黒竜の影響に違いない。


「おらぁぁぁぁぁー―――っ」


「うおぉぉぉぉぉー―――っ」


俺の爪とマモンの拳がぶつかる。


爪はマモンに刺さるが折れる…そして生える。


お互いに決定打に欠ける。


殴り殴られ…その度に街が壊れていく。


俺とマモンの力が拮抗しているのを見て…街の人が逃げていく。


「お前らになんて構わぬ邪魔だー-っ」


俺は黒竜がやっていたように口に集中した。


「マモンこれでも食らえー――っ」


俺の口から炎が出てマモンに襲い掛かる。


「さっき迄の俺だったら今ので燃やされたかもな…だが、今の俺には効かぬわ!」


炎の中からマモンが出てきた。


岩をも溶かす炎でも効かないのか…


体の中の本能が呼び覚まされるような気がした。


「たかが魔族の分際で偉そうにするなー――っ ドラゴンウイングッ」


俺の背中に羽が現れた…だがかなり小さい。


普通ならこんな羽じゃ空は飛べない。


だが、物理法則に反して飛べる。


俺はそのままマモンの背後に周りマモンの背中に爪を突き立てる。


「うがぁぁぁーーっ、貴様何をするー-っ」


周りを見たら、街が半分以上壊滅していた。


怯える目でこちらを見る人々、戦いに巻き込まれかなりの人数が死んでいた。


「場所を変えさせて貰う」


俺は、マモンごと空へ浮かび…飛び立った。


目指すは火竜山脈…


「貴様ぁぁぁー-何時までこうしているつもりだー-」



「さぁな…俺とお前の決着にふさわしい場所に行くだけだ」


火竜山脈が見えた…


「ほう、誰の邪魔も入らない場所で決着をつけたいそう言うことか? 良いぜ、待ってやる!」


確かに、それもあるが、目的は違う。


「…」


火竜山脈の頂上…の火山が目的だ。


「そろそろ良いだろう?」


「ああっ、そろそろ良いな」


確信があった…俺の体は炎竜よりも熱に強い。


俺はマモンごと、そのままマグマにダイビングした。


「貴様ぁぁぁぁー-これが目的かぁぁぁぁー-」


俺はマモンを離さない。


マグマの温度は1000度を超える。


炎の様に一瞬なら兎も角常時その温度に晒される状態。


目から鼻から流し込まれてきたら…どうだ。


俺の知識じゃ前世のアニメではこれで倒せない敵は居なかった。


人類最強の決戦兵器でも防護スーツ着ていたな。


「さぁマモン、仕切り直しだぁぁぁぁぁー――っ」


「貴様…ぁぁぁ」


種族の差だ。


今迄は人間VS魔族だったが…竜?VS魔族。


恐らくマモンが幾ら強くても内臓までは熱に耐えられない。


この体は竜…内臓まできっと、多分耐えられる。


あれっ…マモンの動きが鈍くなっている気がする。


あれぇぇぇ?


「マッマモンー――っ、おい…おいってー――」


『焼蟹は凄く美味しい』


何故かそんな事が頭に浮かんだ。


マグマからマモンを轢きずりだした。


外傷はほぼない、だが顔は断末魔の顔をしていて目が無く髪も無い


目の穴から爪を差し込むも…動かない。


生きていれば、少しは動くはずだ。


恐らくは目や口、鼻や肛門からマグマが入っていき内臓を焼き溶かした…そんな状態だ。


蟹を焼いて甲羅が残った。


そんな状態なのかも知れない。


凄いなマモンの外側…まるで生きている様だ。


マグマを掻きだし、口や目から体を覗き込むと…中は全部無い。


目から覗くと…ミソも無い気がする。


収納袋に入れてみたがすんなり入った。


完全に死んでいるようだ…


結局、俺はマモンを食い損ねたようだ。


まぁ良い…これで全部終わったのか。


俺は街に向けて飛び立った。


※ この話がクライマックスです。

物語はもう暫く続きます。








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