第64話 勘違い
何だかお腹がすいた。
静子達は疲れ果てて寝ているし…
久々に朝食でも食いに行くか…
「いらっしゃいませ、セレスさん、今日は奥様たちはいらっしゃらないんですね」
「まぁ今日は休んでいるよ…何時もの…いやもし出来るなら、ミノのステーキ…お願いできるかな」
「朝から豪気ですね…勿論できます」
「それじゃ…2人前宜しく」
「はいよ…2人前」
自分ながら良く食べるな…
昨日の戦いと…その後で消耗したのか無性にお腹がすき、肉が食べたくなった。
ジューシーなステーキが2枚きた。
此処は冒険者や傭兵に人気がある。
簡単に言うなら、味は普通だがボリュームは満点だ。
このステーキも前世でいうなら500グラムを優に超え普通なら1枚で満足だ。
「セレスさん、言うから2枚焼いたけどよ…うちでステーキを何枚も食べるのはオークマン位だぜ…食べれるのか?」
「ああっ、多分問題ない」
凄くお腹がすいている。
恐らく2枚では足りないと思う…
ステーキ1枚をパクつきながら2枚目に取り掛かる。
「おじさん、ステーキ追加4枚」
「冗談だよな…そうかお土産だな」
「違う、今食べる…」
「…そうか、解った今焼くよ」
2枚目が食べ終わる頃4枚のステーキがきた。
恐らく、これを食べてもまだ足りない…
「追加で10枚」
「おいおい、冗談だろう? 6枚食べた奴だってこの店の客には殆ど居ないんだぞ…16枚なんて食えるなら間違いなく王都の大食いチャンピオンだ」
「大丈夫だ」
「そうか、幾らセレスさんが英雄でも、この店はお残し厳禁なんだぜ、もし残したら俺はキレるぞ」
「大丈夫だ…それは解っている、土下座でも何でもするよ」
「そうかい? 此処から10枚なんて絶対に食えない、もし食えなかったらマジで土下座させるからな、俺は食材を無駄にするのが嫌いなんだ…だがもし食ったなら代金は無料…その後も食えるだけ食っていけば良い」
「良いのか?」
「ああっ、男に二言は無い」
10枚のステーキが焼きあがってきたが…まだ全然俺のお腹は一杯にならない。
「う~ん、なかなか美味そうだ…」
俺はあっさりと10枚のステーキを食べ尽くし…
「それじゃ、また追加で20枚…」
「ああっ、だがこれは無理だ…食えば無料だが残したら土下座はさせるからな!」
「美味いお代わり30枚」
「おい…」
「美味いお代わり30枚」
「…」
しかし、100枚を過ぎた頃お店の方から音をあげてきた。
「…わはははははっ、これで肉全部だ、今日はもうおしまいだ…おしまい、勘弁してくれ…俺の負けだ」
「別にただ食いするつもりは無かったんだ、だが無性に腹が減ったからここのボリュームのあるステーキが食べたかっただけだ…だからほら…」
俺は金貨2枚置いた。
恐らく金貨3枚分位は食べた…幾ら勝ったとはいえただ食いは気まずい、明日から来れなくなる。
「流石に何時も世話になっているからな…無料は気まずいから金貨2枚払うよ…大将から言い出したんだ、残りは泣いてくれ」
「ああっ…本当に食えるのに文句言って悪かったな、気を遣わせて悪いな」
辺りにギャラリーも居るし…
俺はその場を、急いで立ち去った。
◆◆◆
森の方に歩いてきた。
お腹がすいたのは、あれだけで…今はもうお腹はすいていない。
その代わり、体から湯気がでている。
俺は汗は掻かない方なんだが…サウナにでも入った様に滝の様な汗が流れて湯気が出ている。
体は結構な熱を持っているようだが…凄く気持ちが良い。
近くの小さな泉につかる…暫くすると汗が止まり…体を見ると引き締まった様に見えた。
完璧に鍛えていたつもりなのに…此処から更に引き締まる物なんだな。
泉からでて剣を振るうと凄く自然に振るえる気がした。
気のせいかかなり体が軽い。
今迄より少し強くなった気がするが…それだけだ。
ただ、一つ可笑しな事がある…体が疲れない。
試しに素振りをしたが、いつもなら1000回を超えたら疲れるのだが、幾ら振っても体が疲れない。
実際は解らないが、静子達と体を重ねた時にも思ったが月という単位で休んだり寝たりしないで動けそうな気がする。
何があったのか解らないが、異常な程の持久力が手に入ったようだ。
◆◆◆
後は実戦…
竜を狩ろうと一瞬思ったが…また『黒竜に殺される』と思ったら怖い。
だから、オーガでも狩ろうと探していたら…何故、こんな時に限って岩竜に会うんだよ…正当防衛は…彼奴が認めてくれそうにないな。
あれっ。
『偉大なる…我らが王族に…して…守護者…お会いできて…光栄…』
これは岩竜が喋っているのか?
頭の中に直接声が聞こえてくる。
『俺の事を言っているのか? 俺は人間だ』
発音を変換しているのでなくテレパシーみたいな物なのだろう…意思を込めて念じてみた。
『あははははっご冗談をワイバーンなら兎も角、私には、しっかりと見えますぞ…黒き偉大なる竜のお姿が…何かご事情があり人化しているのでしょう…私はこれにて失礼します…竜公様』
俺がつい唖然としていたら…そのまま岩竜は立ち去ってしまった。
何があった…此処迄くると…確実に何かがあった筈だ。
黒竜と戦い死んだと思ったあの時…俺の知らない何かが起きていたのかも知れない。
そのカギは竜にありそうだ…
何だこれ…
竜種を探して今度は岩場に来たのだが…ワイバーンに懐かれた。
さっきの岩竜の時みたいに話は出来ないが…近寄った途端目が合い…気がつくと犬の様に傍にまい降りて座った。
触ってやると嬉しそうな顔になった気がする。
なぜだか…襲わない…味方だ。
それが瞬時に解った。
多分、俺は二度と竜は狩れないだろう…
流石に俺に懐いたり、話せる存在を簡単に殺す程俺は薄情じゃない。
きっとこれは黒竜の慈悲なのかも知れない。
確か彼奴は『人という種族でありながら、無数の竜を倒した武功見事である…褒めてやるぞ』そうも言っていた。
恐らくこれは…何か黒竜に考えがあり命を助ける代わりに竜と戦えないような…そう呪いの様な物を掛けられたのかも知れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます