第59話 セレスVS黒竜 ①
此処最近、何者かにつけられている。
しかも、物凄く恐ろしい存在だ。
静子達ほどの手練れに何も感じさせずに、俺にだけ偶に殺意を向けてくる。
その殺意を感じるだけで、俺の体は震えだす。
此奴は何者なんだ…
今迄戦ったどんな奴よりも恐怖を感じる。
こんな恐怖を与える様な奴は…魔王か?
いや、魔王なら魔国の魔王城からまず動くことは無い。
そうすると…四天王辺りしか考えられない。
だが…ゼクト達と一緒の時ならいざ知らず、俺一人を態々標的にする意味は無い筈だ。
静子達を巻き込みたくない。
この敵は態々『俺一人に標的を絞ってくれている』
これは…意味は解らないが都合が良い。
最悪、俺一人で犠牲が住む。
「ちょっとそこ迄買い物に行ってくる」
「そう…いってらっしゃい」
◆◆◆
俺は王都から外に歩き出し近くの森に向かった。
「どうせ、ついて来ているんだろう?」
「ほう、気がついたか?」
「流石に、そんな殺気を向けられたら気がつくだろう!」
「それで人気の無い所に来たという事は、戦って貰える…そういう事で良いんだな!」
見た瞬間から解る。
俺どころか…静子達にゼクト…全員が集まって、完璧な連携が取れても…絶対に勝てない。
「あんたには勝てそうも無い…その恐ろしいまでの気、四天王…もしくは魔王か?」
俺を殺そうとする相手…それ位しか思いつかない。
何だか、凄く不機嫌そうな顔になったな。
「魔王…四天王だと! 俺を愚弄するなー-っ、俺の名前は黒竜…竜の頂点たる五大竜公の1人…竜の王族だ、そんな下等な種族と一緒にするな!」
可笑しい…竜の頂点は竜王…確か大昔に魔族の様に君臨したが、その時代の勇者に討伐された筈だ。
「大昔に討伐された竜王の一族か…」
「人間は知らぬであろうが、あれは中位の竜にすぎぬ…人間にあわせて言うなら…只の兵士…強い竜の中で一番下の存在…あれより強い竜等、数千は居る…不老不死すら会得しておらぬ半端者よ」
不味い…とんでも無い奴じゃないか?
言っている事が正しいのであれば魔王と同等と伝説で言われた竜王より遥かに上の存在だ。
避ける…絶対に戦いを避ける…
何でだ…魔王討伐の旅から抜けられて…喜んでいたら…再び戻されそうな雰囲気になった挙句…
魔王より強そうな存在と何で俺は対自しているんだ…
どうすれば良い?
どうすれば…
「そんな神に近い存在が一体、俺みたいな者にどういったご用件でしょうか?」
「神? 俺の上に居る…冥界竜バウワー様は人間の女神より遥かに位が高く『冥界を総ていた』たしかに俺は神竜に近い、女神とて単純な戦闘力なら俺より下だ…神ではなく神竜と呼ばなければお世辞にもならぬ」
ヤバいじゃないか…勇者、魔王…どころじゃない…女神すら敵わない存在じゃないか…
「言い直します…そんな偉大な『神竜』であらせられる黒竜様が、私にどう言ったご用件でしょうか?」
この世界は怖すぎる…魔王すら雑魚の様に言える存在が居たのか?
そんな存在は歴史書にも無かった。
だが、さっきからの俺の体の震えが…嘘ではない。
そう俺に伝えてくる。
「うむ…人という種族でありながら、無数の竜を倒した武功見事である…褒めてやるぞ」
命は助かった…のか…
「有難き幸せ」
「うむ、竜は強き存在で強さを称える、多対一ですら負けない、それを1人で無数の竜を葬った、凄いなお前は人族の『勇者』として俺はお前の名前を忘れぬ、だが無数の竜種を殺したのも事実…ゆえに最大の敬意を払い、五大竜公の1人黒竜として決闘を申し込む…竜公と戦えるのだ…光栄に思うが良い」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…死ぬ未来しか見えない。
折角幸せに生きれそうなのに…
「私ごとき未熟者が偉大なる神の様な存在に戦いを挑む等、出来ませぬ…辞退…」
「ハンデをくれてやろう…この森の先にある山の上のクレーターで戦おう…お前は戦って勝つ以外に、この森まで再び逃げ込めればお前の勝ちで良い…そして俺は戦いの間は竜化しない、これがハンデだ…では行くぞ…竜化」
「うわぁぁぁぁぁぁー―――っ」
こんなのにどうやって勝てと言うんだ…大きさはまるで山だ…王城より大きい…怪人と戦う特撮ヒーローに巨大な怪獣と戦え…と言うようなもんだぞ…
簡単に俺を飲み込む様な口に咥えられ…俺は山頂のクレーターに落とされた。
此処から…森迄、どう見ても数キロはある…終わった。
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