第58話 4人の力
ようやく、皆で狩りに出かけられた。
オークかオーガを考え出掛けて、結局オーガになった。
何も言うことは無い…
というか、可笑しすぎる…
回復役、ヒーラーが静子の筈なんだが…
「ローブー-っ」
「うがぁぁぁぁー―――っ」
筋肉隆々のオーガの筋肉が萎んでいき、まるで老人の様になり死んでいく。
こんな呪文…聞いたことも無いし、見たことも無い。
「凄い…」
「セレスは初めてだから、驚くよね? 静子オリジナルの呪文なんだよ…普通のヒーラーは生命力を与える回復呪文だけだけど、静子はそれを逆に使う事を考えたんだよね…生命力を相手から奪うという方法をね」
「そうそう…凄いよね、アレ…女として恐怖しかないわよ…老婆の様に死んでいくなんて最悪な死に方私はごめんだわ…セレスさんもそう思わない?」
そういうサヨの横には無数のオーガが蝋人形の様にただ立っていた。
「サヨも怖いわよねセレスちゃん…あれねサヨのオリジナルスペル、なのよ…名前は『絶対零度』、いかなる生物も体の中から凍らせるのよ」
「セレスさん…幾ら私でも『絶対零度』なんて出来ないわよ、体の中の血液を一瞬で-200度位まで落として凍結させるだけよ」
※人間の冷凍保存が-196度という話からです。
俺は全く戦っていない…だが、俺の周りには次々とオーガの死体が増えていっている。
普通に話しているハルカの周りには細切れになったオーガの死体が転がり…ミサキの周りには真逆に叩き潰されるように頭から叩き潰されたオーガが転がっている。
「ハルカは何時も細切れよね…疲れないのかしら?」
「そういう、ミサキは何時も叩き潰すのよね…これなんかまるで亀みたいに頭がめり込んでいるじゃない」
使う得物は知っていたし、戦い方も何となく聞いていたけど…想像と全然違う。
確かに元Sランクだから凄いだろうな位は、思っていたけど…
強いより…上手い。
ゼクト達がまるで教科書の様な戦い方をしているとするなら、これは、まるで…相手が嫌がるような戦い方をあえてしている様に見える。
まさに、相手にとっては悪夢みたいな戦い方だ。
その証拠に…恐怖なんて感じない筈のオーガが…一部怯えている様に見える。
幾ら、脳筋のオーガであっても…目の前で残酷に殺される姿をこうも見せられたら…怯えるのか….
オーガが怯える姿など…初めてみた。
逃げ出そうとするオーガを風の様に走るハルカが細剣でバラバラにしていく。
普通に考えたら細剣で人だってバラバラにするのは難しいだろう…
その後をミサキがぶっ潰し、静子が干物の様に変えていきサヨが凍らせる。
完全に一方的な蹂躙にしか見えない。
俺が見くびりすぎたのかも知れない…強い。
しかも、これが全力ではない…そう思える…二人が戦い、二人がこちらに来て話している位だからな。
「どう見てもゼクトより強い」
「セレスくん…そんな事ないわ」
「私達は、大型の魔物は苦手だから…竜種は苦手だよ」
「そうよね…やはり人位の大きさが一番得意かな」
「まぁオーガやオークは余裕だけどね」
苦手という事は『狩れない』ではない。
だけど…これ程の実力者が何で冒険者を辞めてしまったのか?
何故村人になり、生活していたのだろうか…
ハルカは兎も角、静子にサヨやミサキなら…怒らせたら一瞬で旦那等殺せる力があるのに…
「なんで…冒険者辞めたんだろう」
思わず口から出てしまった。
「それはね、私達は、人を殺すのに疲れたし、怖がられるのに嫌気がさしたからね」
「姉さん、それって…」
「セレス、私達が一番得意な狩は『人』なのよ…そこがスタートなのよ…だからこそ、皆に恐れられるの…だから、冒険者を辞めて『普通に憧れた』んだ」
言われてみれば、
『セレス、自殺しろ…さもないと此奴を殺す…』
こんな戦い方…魔物相手にはしない…人を殺すのを前提にした戦いだからこそだ。
だけど…
「姉さん、一言良いかな?」
「セレス、なぁにあらたまって!」
「姉さんさぁ『前に俺がオーガキング他オーガ30体を狩ったのを凄いって言っていたけど…もしかして俺より遥かに強いんじゃない?』そう言った時にさぁ『セレス…それは流石に無いよ、多分半分位だと思う』そう言ったよね? いま何体狩っているのかな?」
「あれ?」
「もう既に100近く狩って、あそこで静子さんがキングを倒しているんだけど?」
「それは…っセレスー-っ」
痛い、久々にハルカに頭を叩かれた。
「私達だって女だから、好きな人にはかよわく思われたいのよ…察しなさいよ…男の子でしょう!」
「そうだね」
4人が危なくなったら助ける気だったけど…
出る幕が無い程…強い。
多分これでも本気じゃない…そう思えてならない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます