第57話 教会から
今日こそは静子達と一緒に狩に…そう思っていたんだが…出鼻をくじかれた。
トントントン…ドアがノックされた。
嫌な予感しかしない…
依頼ならギルドを通してくるし、プライベートな友人もまだ居ない。
だからこの家を訪ねてくる人は…厄介事を持ってくる人ばかりだ。
「はい」
「セレス殿、教皇様からのメッセージです…では」
恐らく司祭だろう…俺に教皇様からと記録水晶を持ってきた。
通信水晶が電話だとすれば記録水晶はビデオレター…まぁ動画の手紙みたいなものだ。
「セレスくん…それ記録水晶じゃない? 直ぐに見た方が良いんじゃない」
「こう言うのを後回しにすると面倒くさいよ」
「セレスさん…見よう」
「セレスちゃん…教皇様からなんだから直ぐにみないと駄目だよ」
仕方ない…少し狩りに行くのを遅らせるか…
『久しいですねセレス殿…』
今度は聖教国ガンダルからだ…内容は…
強制では無いが、出来る事なら『魔王討伐の旅』に再び戻って欲しい。
そして、俺の活躍次第では、コハネの小城と周辺を領地としてくれて、爵位もくれるそうだ…だがそれだけでなく『先の聖女セシリア』との婚約も視野に入れるそうだ…
「あらあら、聖教国からはセシリアちゃんなのね」
「静子さん…まさか知っているの?」
「セレス…知っているも何もセシリアは静子の弟子みたいなもんだよ」
「ハルカ、それは違うわ、まだ未熟な時に少し回復魔法の手ほどきをしてあげただけだわ」
「静子…本当かしら?貴方はそう思っていても、あの子は静子の事を『師匠』って呼んでいるじゃない?」
「サヨ…今となっては、もうあの子の方が上…師匠なんて呼ばれる存在じゃないわよ」
「まぁ…静子がそう言うなら…それで良いわ」
「セレスくん、そんなに凄いもんじゃないわ」
先代の勇者パーティと言えば、魔王に戦いを挑んだが…負けて逃げたという話だ。
だが、少し可笑しな事がある…
魔王の領地に入り魔王城で魔王と戦い…勇者パーティが負けた。
周りが全部敵の中から…どうやって帰ってきたのだろう。
勇者は死んだ…賢者も死んだ…残ったのは聖女と剣聖…そして周りは敵しか居ない。
その中から二人は生きて帰ってきた…
まさか…
「そう言えば、魔王討伐に失敗した状態からどうやってセシリア様と先の剣聖は帰ってこれたのか…不思議ですよね」
「それはねセレスくんになら話しても良いかな? サヨの仕業なのよね」
「私はサヨを手伝っただけだよ…『涙目の氷姫』怒らせたら…」
「でも…魔王や魔族からどうやって…」
「うふふふっ、それはね、ほら前にセレスちゃんに、卑怯な事は静子やサヨが得意だって言ったじゃない? サヨがね絶対絶命の彼らの為に交渉したのよ」
「一体…何を…」
「うふふっサヨったら酷いのよ…当時の魔王には目に入れても痛くない位に大切な娘が居てね…それが魔王城以外で生活していたから、誘拐するように指示したのよ…そして交渉して人質交換したのよね…そのやり方や交渉の仕方は…」
「ミサキ…それ以上は止めてくれない? セレスさん、信じちゃダメよ…私は優しいわよね…セレスさん?」
「うん、サヨさんは…女神みたいにやさし…」
「良い子ね」
◆◆◆
「それはそうと…二国が条件を言ってくるの…随分早かったわ」
「そう考えると…後はガルバン帝国…が言ってくれば三大国そろい踏みだね」
「多分、あそこが魔族に一番苦戦しているからね…一番待遇が良いかもね…竜が住み着いている火竜山脈もあるから」
「セレスくん…もう暫く静観する?」
「セレスはどうしたい?」
「私としては、後ろ盾は必要だと思うから…何処かにはついた方が良いと思うわ」
「私もサヨと同じかな?」
折角、魔王討伐から逃げられた…そう思ったのに…
こんな話になるなんて…
俺は戦いなんて余りしたくないのにな…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます