第52話 話し合い
結局、城から帰る頃には夜になっていた。
俺は城での事を静子達に伝えた。
「へぇ~『英雄』ねぇ随分と古い称号を持ち出してきたのね」
「英雄なんてここ数百年貰った人居ないんじゃないかな? 凄いねセレス」
「セレスさん…随分と破格値の称号をくれた物ね…ある意味、勇者より凄いわ」
「そうね…勇者は生まれながらだけど、英雄はその人の人柄や功績から貰える称号だから…王様がセレスちゃんを認めたという事ね!裏の意味では、王国の庇護下に置く代わりに王国専門の戦力にしたい…そう言うことだわ」
結局、皆で話した結果は…静観だった。
「セレスくん、後ろ盾は将来的に必要だわ、だけどまだ、ザマール王国に決めなくて良いと思うわ」
「セレス獲得に動き出したんだよ…恐らく聖教国ガンダルにガルバン帝国辺りからも何かしらの話が来るかも知れないわ」
「そうね…本来はSランクってだけで引く手あまただわ…そこにドラゴンスレイヤーに英雄の称号…これは大変ね」
「私達の時もSランクって事で色々誘われたわね…取り敢えず、静観しかないわ…まぁ、条件が出そろってから考えれば良いのよ」
なんだか随分と手慣れている気がするな。
「皆、随分慣れている気がする…」
「セレスくん、こう言うのは経験済みだから」
「セレス…大体、国は異性や爵位、お金を交渉に話をしてくるんだよ」
「それが面倒くさくて、冒険者を辞めたのよ…まぁお金もあったし『普通』に生活したくてね…まぁ拒みすぎて最後は相手に困ってしまったけど…懐かしいわ」
「まぁ、隣の芝生は青いと同じね…村には村の大変さはあるわ…今更だけど、冒険者ってC級位が一番楽しかったかもね…あの頃は若かったわね」
確かに、今は静観が良いかも知れない。
大きな手柄でもたてなければ…爵位の授与も王女との婚姻も無い。
大体、俺はこの四人で充分だ。
四人は仲が良いから助かっているが、ハーレムなんて楽しい物じゃない。
事実、ゼクトの所は二人とメルに明らかに差があり、俺がメルを構わなければならなかった。
貴族とかで愛人と本妻が裏でバチバチやりあって…最後にはどちらかが毒殺された、なんて事すらある…
元から4人は仲が良い親友だから上手くいっているだけで、本当に上手くいっている奴なんて、オークマンしか知らない。
最も、そのオークマンでも偶に顔に引っかき傷がある。
◆◆◆
「しかし、マリアーヌ様か懐かしいわね」
「静子さん、知っているの?」
「うふふっ、セレスくん、私達もS級だったんだよ…顔ぐらいはね」
「まぁ、顔見知りではあるよ…あくまで依頼者と冒険者の関係だけどね」
顔見知り…依頼。
「セレスさん、不思議だと思わない? バルダ国が滅んだのに王族の1人が何故か生き残っている…それにセレスさん記憶にない?私達4人で旅行に行ったじゃない?」
確かに記憶がある…『どうしても女同士で旅行に行きたい』とシュートやカズマが止めたのに出かけてしまった。
そんなのは見たことが無いから記憶に残っている。
しかも、男尊女卑の村なのに珍しく村長や相談役が『偶には女同士気楽に旅行に行かせる位の甲斐性を見せろ』と静子さん達が旅行に行く後押しをしていた。
「セレスちゃん、解ったみたいね…マリアーヌ王女をザンマルク四世に頼まれて救助しに行ったのが私達なの」
国を亡ぼす程の魔族の軍勢…そこから1人とはいえ王族を救助してくる。
そんな事は俺でも、いやゼクト達でも難しい。
「静子さん、前に俺がオーガキング他オーガ30体を狩ったのを凄いって言っていたけど…もしかして俺より遥かに強いんじゃない?」
何で、そんな驚いた顔するんだ?
「セレスくん、それは無いよ…そこ迄は強く無いよ、私達の中で、接近戦が得意のはハルカとミサキだけどどう?」
「セレス…それは流石に無いよ、多分半分位だと思う」
「私も同じよ」
それなら、国を亡ぼす程の魔族の軍勢からどうやって助け出したんだ。
「それなら、どうやって…」
「そうね、セレスは正面切って戦えば強いけど…倒し方はあるわ…ほらっ」
そう言うとハルカは静子の後ろに周り抱え込んだ。
そしてニコリと笑いながら…
「セレス、自殺しろ…さもないと此奴を殺す…」
「なっ…」
「勿論、これは冗談だよ…静子ごめん」
「良いわよ…だけど今のハルカを見て解ったでしょう? 力だけがすべてじゃないわ、相手の弱い所を狙い倒す…こういう手段もあるのよ」
「静子の得意な方法だよね…こういう卑怯な方法は静子やサヨに任せてセレスちゃんは正々堂々と…」
「あら、ミサキ、酷いわ…それじゃまるで私が腹黒いみたいじゃない?」
「そうね…酷いわ…凍らせちゃおうかしら」
「静子、サヨ冗談だから…本当に冗談よ」
「解っているわ…セレスくんは充分強い…だけど、搦め手は幾つもあるから気を付けてね」
「確かに…」
政治的な接触も搦め手ともいえる…これからは色々と気を付ける必要もあるな。
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