第48話 竜は狩り尽くされた
「セレス…いい加減私達にも働かせてよ!」
「別に構わないよ…それじゃ今日は装備を取りに行って、明日から狩りに一緒にいこうか?」
準備も整ったし、そろそろ良いかも知れないな。
「セレスくん…良いの?」
「セレスさん、それじゃ出かけますか?」
「セレスちゃん…そうだね、まずは装備だよね」
◆◆◆
武器屋に来た。
「セレスくん…この装備は一体…」
「静子さんの装備は『女神の癒しの杖』のレプリカに水霊の羽衣…本当は杖も本物が欲しかったけど、流石に手に入らなかったからミスリルで作って貰ったんだ、一応王都一の名工に作らせたから、かなり本物に近い筈だよ」
「セレス…私のこれ…まさか…本物?」
「姉さんの武器は『黒薔薇のレイピア』本物は歴史の中で失われたから存在しないよ、それに見立てて文献を元に近い物を同じく名工に作らせたんだ、鎧は戦うのに邪魔にならないミスリルの軽鎧、これで決まり」
「セレスさん…この杖は…なに」
「サヨさんの武器は『氷結のスワン』氷使いのメイジが使う最高装備の杖、ただ、これも伝説に消えちゃったからあくまでレプリカだよ…それでも同じく名工に作って貰ったからかなり本物に近い筈だよ、それに静子さんと同じ水霊の羽衣…これならまず大丈夫だよ」
「私のもなんか凄そうね」
「ミサキさんのは『炎帝の大剣』ミスリルに炎の魔法の術式を編み込んだ物、これもレプリカだけどね、それに鎧は、反射の鎧、魔法は無理だけど通常攻撃の多くは跳ね返すから安心だ」
幾ら元はS級とはいえ、結婚して村人生活をしていたんだからブランクがある、調子を戻すまで時間が掛かる…かといってゴブリン辺りからスタートしたんじゃ、誰かしらに陰口を叩かれるかも知れない。
そう考えたら、最低でもオークやオーガからスタートしないとならない。
足を掬われない様に、そのギャップを埋める装備が必要。
それを埋める装備を作る時間が欲しかった。
他の三人は兎も角、ハルカは体を動かしたい…そういう性格だから、そろそろ限界が近かかったかも知れない。
「セレスくん…この装備、まさか魔王と戦うとか言いませんよね?」
「セレス、こんな凄い装備…凄いけど、何を狩るんだ…やはり竜種?」
「セレスさん…獲物は何を狙うのかしら?」
「やはり、ワイバーン位から?」
「ブランクもある事だし、無理をしないでオーク位から始めよう、お金には余裕があるし、ゆっくりで良いんじゃないかな? 個人的には大きな目標なんて要らないから『楽しく暮らす』それは目標にしたい」
「『楽しく暮らす』セレスくん…良いわ、それ!」
「言われてみればセレス、その通りだわ…楽しく暮らせれば最高だわ」
「う~ん、それ凄く良いわね」
「楽しそう!」
「それじゃ、明日からは一緒に狩りに行こう」
「「「「うん」」」」
装備も整ったし、安全も確保した…これなら一緒に狩りに出かけても問題ない。
◆◆◆
「王都周辺の竜種が狩り尽くされているだと…それはまさか…」
「はっ! セレス殿が理由は解りませんが狩りまくっていたようです」
「報告を…」
何だ…この戦歴は…
火竜の上位種である炎竜が6体…1体だけでも騎士団の大隊が必要なのに…それを6体。
地竜の上位種の岩竜が4体…
水竜の上位種の水氷竜が3体…
風竜の上位種の風王竜が5体…
そして、通常の竜種やワイバーンを狩った数は百を超える。
最早この近辺で竜種を見ることは殆どないらしい。
「それをたった1人でセレス殿が行った…そう言うことかの…それで…」
「はい…もう王都周辺には竜種はおりません…狩られるのを恐れたのか竜種が逃げだし、竜その物を見ることも無い、そう聞いております」
なんだ、その強さは…一体倒せば『ドラゴンスレイヤー』の勲章が貰える…その竜種を狩り尽くす…存在。
本当に4職より劣るのか?
こんな存在が勇者や魔王に劣るのか…余には信じらない。
「オータよ…余は頭が可笑しくなったのか…勇者より魔王よりもセレス殿の方が強い…そう思えてならぬ」
「今後は解りませんが…今現在の戦力で言うなら、勇者たちは単独でワイバーンを狩れる程度…しかも、最近は不調でオーガキングに苦戦しているという話も聞いております…そこから一つの悪い噂がございます」
「噂じゃと」
「はい…実は勇者パーティは本当は弱く…その実績の全てがセレス殿の手柄なのではないか? そういう者も多くおります」
「流石にそれは無かろう」
「ですが…前はワイバーンを狩れた存在がオーガキングに苦戦…その事実…弱くなったのはセレス殿が外れてからでございます」
セレス殿を獲得する…それ以上の優先事項は無いのかも知れぬ。
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