第47話 出戻り王女 マリアーヌ


「オータよ、その後のセレス殿の様子はどんな感じだ!」


「はっ! 最近は、王都を拠点に冒険者として活躍しております」


これは凄く都合が良い…王都に居るのであれば…呼び出して会う事も可能だ。


「そう言えば、最近、大量のワイバーンや竜種の素材が出回っていると聞くが、それはもしや…」


「その殆どはセレス殿が狩っていると思われます」


本当に欲しい…このまま王都に住み着いてくれれば、それだけで経済効果が高い。



近くのワイバーンや竜種を狩ってくれるだけでも流通は安全になり、貴重な素材が出回るから、良い事ばかりだ。


「やはり、セレス殿は優秀じゃな、それでまだ追放にはなってないのか?」


「はっ、未だに籍はそのままのようです」


「そうか…外れた瞬間が勝負じゃ…引き続き気に留めて置くように」


折角、勇者達との切り離しに成功したのに…思うようにいかぬものじゃ。


「はっ…それで、もしこの先接触する機会があった場合どのように交渉を」


「それが問題なのじゃ…金銭という事であれば、セレス殿は既にかなりの財産を得ておる、爵位という事であれば、まだ勇者のゼクトにも与えていない以上体面的に授ける事は出来ぬ、婚姻もマリンを勇者ゼクトの婚約者候補にしてしまったから適齢期の者が親族におらぬ…」


「王よ…それなら、第一王女のマリアーヌ様がいらっしゃるでは無いですか?」


「オータよマリアーヌはバルダ国に嫁いで国が滅びた故に戻った、いわば出戻りじゃ、しかももう年齢も28歳…褒賞どころか、もし縁談があるなら、持参金を払う必要すらある身じゃ…どう考えても15歳位のセレス殿じゃ無理じゃ…お前も知っておるだろうが!」


何を考えておるのじゃ、見方によっては押し付けた様にみえるじゃないか…


「それが、今現在、セレス殿は4人の嫁を娶っておりますが…その全員がマリアーヌ様より年上です」


「本当か?」


「はっ」


マリアーヌはもう良い歳で出戻りじゃが、元は王国の宝とも言われた美女だ…あの歳の女で良いなら、我が娘ながら器量よしじゃ…さらに第一王女地位はマリンより上じゃ…問題は無い。


「そうか…ならば、交渉にマリアーヌとの婚約も盛り込むのもありじゃな」


これは良い縁談になるやもしれぬな。


◆◆◆


「お父様、私に何かようでしょうか?」


「喜べ、マリアーヌ…お前の婚約者候補が決まったぞ」


「あの、お父様…私はもう28歳です…どなたかに、下賜されるのでしょうか? 相手はどの様な方ですか…経産婦ですからどの様な方でも文句は言いませんが、せめて優しい方をお願いしますわ」


「相手はこれから打診をする段階じゃがセレス殿の予定じゃ」


「お父様、そんな事はおやめください、親子程歳の離れた縁談など恥さらしになりますわよ」


普通はそう思うはずじゃが、今回は違う。


「それがな、セレス殿はオータの話では小さい頃に母を亡くしたせいか年上の女性が好きなようなのじゃ」


「そんな…見目麗しい、ドラゴンスレイヤーの少年がですの?」


「余も信じられなかったが…今居る4人の妻は全員、お前より年上じゃ」


「本当なのですか…もし本当なら私に異存はありませんわ…」


「あくまで打診じゃが、進める方向で良いな」


「あの寡黙な美少年の妻になるなんて、出戻りの私には勿体ない位です…宜しくおねがいしますわ」

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