第39話 悪役令嬢とシュート
早速、支払いを済ませて書類を貰った。
村長たちには、折角街にきたのだから、少しの間買い物を楽しんで貰う事にした。
ちなみに彼女達の新しい服は…
「がはははっ、沢山買って貰うからサービスだ」
とオークマンがサービスしてくれた。
誰にも許可を取らないでサービス出来るのだ。
流石、オークマン、事奴隷に関しては顔がきくな。
エルフと手を繋いで出て行く、三人の爺さん。
傍から見たら、さぞ羨ましく見えるだろう。
大きなテントの方に顔を出すとシュートが興奮気味に迫ってきた。
「村長や相談役の相手は決まりましたか?」
「ああっ決まって、今は街に遊びに行って貰ったよ」
「そうかい、それじゃ次は僕の番に決まったから、宜しくね」
何でも俺が村長たちのお見合い?をセッティングしている時にじゃんけんで順番を決めたのだそうだ。
「それじゃ、次はシュートさんだね、用意が出来たら呼ぶから少し待ってて!」
「うん、宜しく頼むよ」
「任せておいて」
◆◆◆
「なぁセレス、本当に良いのか『貴族令嬢』って奴はなぁ…確かに綺麗だが...」
「ああっ、この間、話は聞いたよ、『役立たずの定番で、家事も手伝わないし教養を持ち出して人を馬鹿にする』だっけ、そして『王族や大貴族を怒らせた奴』だったよな」
「知っているなら、普通は村人に勧めないぞ」
「ああっ、それなら大丈夫だ」
だって、シュートが自ら望んだ理想のタイプだ。
後で文句なんか言わせない。
村だから領主位しか貴族とは付き合いが無いから、他の貴族と関わる事も無いだろう。
それに、シュートは村人とはいえ聖女であるマリアの父親。
万が一が起きても相手だって少しは躊躇するだろう。
「本当に良いんだな? まぁ器量の良さと知識だけは保証するが…犯罪奴隷だぞ」
「別に良いよ」
本当に復讐なんて考えていない。
わざと、変な人間を選んだわけじゃ無い。
ただ、本当にシュートに似合いだと思っただけだ。
◆◆◆
時は少し遡る。
「本当に貴方が私を買うつもりなのですか?」
普通に考えて彼女を買う人間はまずいない。
もし、買う人間が居たとしたら貴族で、敵だった人間が『拷問して殺す為』に買う位だろう。
何しろ彼女は『上級貴族の令嬢』を殺している。
「実際に、君と過ごすのは俺じゃない…知り合いだ」
彼女の顔が真っ青になる。
「やはり、そう来たのね! 他の人に買わせてから引き取り、辱めに合わせ、拷問の末に殺す…あはははっ、これで詰んだわね」
流石に犯罪奴隷に落とされたという事は法的に『罪は償った』事になる。そこからは本来相手側は手出しが出来ない…勿論、その奴隷を買う事も出来ない、だが抜け道として他人に買わせて手に入れる、そういう方法がある、それを彼女は言っているのだろう。
「俺は、そんな事はしない、確かに代理人だけど、君を嫁にする人は30歳位のただのおじさんだ」
「本当ですか? 私を殺しにきたんじゃないのですか?」
「君に紹介する人間は…村では知識人で通っている、根は良い人だと思うんだが…凄く癖のある人物でね、出来る事なら君にどうにか人格の修正をお願いしたいんだ…」
シュートは、少しひねくれているが、悪い人じゃないと思いたい。
ただ、あの自己中な考えは頂けない。
代々村に住んでいる…だから『いけすかない奴』で済んでいるが…
なにかと孤立気味だ。
この位の方が良い。
「私は人を殺していますのよ? しかも相手は大貴族です」
「貴族の世界は謀略の世界…皆は見える所しか見ていないが、それは当たり前の世界だよな?目的を達成したのは素晴らしい事だ…ただ『ばれた』それが失敗だ、14歳にしては素晴らしいと思うよ、多分隠ぺいに失敗しなければ家にプラスになった行為なんだろう」
「随分と理解がありますね…理由は言えませんが、その通りです…私、貴方が気に入りましたわ、貴方の妻にはなれませんの? 『何でもしますわ』」
「あははっ、ごめん嬉しいけど…俺はもう妻がいるから駄目だ…どうだ?引き受けてくれないか?」
「ふぅ~奴隷に命令じゃ無くて頼むのですね、貴方は命の恩人ですから引き受けますわよ…あと、私の主人に成る方にはこれは内緒に…そういう事ですわね」
「そうしてくれると助かる」
「命の保証はしますが、私『鞭つかい』ですのよ、直せというなら本当に直しますが…結構相手は辛いと思います…あと薬も使います、勿論、恩人との約束ですから『毒』をつかって殺したりしませんけど、場合によっては少量つかって…」
悪役令嬢。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
「構わないよ」
「貴方は本当に優しい人ですね。私が敵対していた貴族に買われる、もしくは貴族令嬢だったのに、生涯娼館落ち…それが解っていたから選んだのでしょう…困らせるからもう言いませんが『貴方が理想』です…ですがそれは叶わない…拷問より娼館より、ましな人生をありがとう…」
同情したのは本当だ。
だけど、そこ迄思われる事はしていない…
「奴隷紋は刻まない約束だから、充分に躾けて欲しい…手に負えなくなったら逃げだすのもありだ」
「何処まで…まぁ良いですよ…頑張ってみますわ…死ぬことはあっても、直らない、そんな事はありませんからご安心下さいね」
「命は保証してくれるんだよな」
「言葉のあやですわ…お任せ下さい」
「頼んだよ」
この子が一番お似合いだ。
◆◆◆
「連れてきたぞ」
「シャルロットと申します、宜しくお願いしますわ」
スカートのすそを掴み挨拶をシャルロットがすると、シュートは顔が真っ赤になった。
「この子、この子が僕の相手…本当に『妻』になってくれるのかい?」
「御眼鏡にかなったかな?」
「叶うも何も…まさに理想の子じゃないか? 僕は君を友人とも息子とも思っていたが…今日ほど君が…素晴らしいと思ったことは無い…親友だ」
「シュートさん、感動してくれるのは嬉しいけど挨拶をしないと」
「そうだったな…シュートです、宜しくお願いします」
「私の方こそ宜しくお願いいたします」
シュートにとって憧れの貴族令嬢、そしてシャルロットは助かった。
どちらにも良い事ばかりだ。
静子達には性根を叩きなおすような人を選んだ。
そう言えば、大きな問題にならない。
もう一つの理由もちゃんと説明すれば復讐と考えてくれる筈だ。
まぁ、頑張れ…シュートさん。
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