第38話 エルフと老人
「よく来たなセレス」
「オークマン、今日は宜しく頼むよ! しかし暇そうだな」
「がはははっ、本当にな、季節間違えた、奴隷商は頭抱えていやがる…だからこそ、今回沢山の奴隷を買おうという、お前には全面協力だ…そこの大きなテント、二つは自由に使ってくれ」
「ありがとうな」
「良いって事よ…それじゃ、最初はあの三人を連れてくれば良いんだな?」
「ああっ、頼むよ」
「任せろ」
「それじゃ、ナジム村長にカジナさんに、カシムさんは、こっちのテントに…それ以外の人はあっちで待機してくれ」
「ほう? トップバッターは儂達じゃな」
「見合いみたいで緊張するな」
「婆さんの時以来じゃ」
この三人は意外にも愛妻家だった。
実際の所は解らないが1人の女性と結婚をして最後まで添い遂げた。
まぁ、奥さんに恵まれたのもあるだろう。
それに、もう枯れている…だからこそ、彼女達がお似合いだ。
「連れてきてやったぞ、ほら、挨拶だ」
「ナジです…」
「スルトです…」
「テレアです…その方達が先日話していた方ですか? 本当にそうなのですか?」
「あの時は、あくまで予想だったが、確認したから大丈夫だ」
爺い3人じゃなかった…村長達は三人に見惚れている。
「村長、相談役…挨拶、挨拶しなくちゃ失礼だろう? 幾ら奴隷とはいえ、俺は『嫁』として彼女達を買うつもりだから」
「ああっ、まさかこんな綺麗な方だと思わなかった…セレスお前は儂を殺す気か! 初めましてお嬢さん、儂はナジムじゃ」
「同じく三長老が1人カジナじゃ」
「同じくカシムじゃ」
何だ? 三長老…そんなの聞いた事も無いな。
気のせいか後ろが爆発して見える…さらに今日の村長はイケメン3割り増しだ。
「お嬢さんだ何てそんな…私恥ずかしいわ」
「多分、私の方がお姉さんですよ」
「うん、そうだよ」
村長たちが驚くのも無理はない…
彼女達はエルフなのだから。
「なぁ…セレス、本当にエルフを儂に贈ってくれるのか? 次の村長に指名して欲しいんか? よし、次期村長はお前じゃ…」
「そうじゃのう…セレスで良いだ」
「儂もセレスじゃな」
「あのさぁ…俺は、村長なんかの椅子に興味はない…孫みたいな者でしょう…死んだ後の悲しい話はしないでくれ…もしお返しがしたいなら長生きしてくれよ…それ以外は要らない」
「「「セレスや」」」
泣かれても困ってしまう。
「この三人は間違いなくエルフだけど、村長が思っているような高額じゃないよ…エルフって歳をとっても見た目は若いままなんだ…それに皆が皆、辛い過去を抱えている、きっと村長達なら仲の良い茶飲み友達にもなれるし、気も合うと思うんだ…どうかな?」
「お嬢さんは儂みたいな爺でよいのかのう」
「私は、貴方よりお婆ちゃんですよ、それに凄く魅力的です」
「儂は?」
「私からみたら可愛い位です」
「儂もかな」
「はい!」
どうやら上手く言ったようだ。
彼女達エルフは綺麗だからどうしても『性の対象』にされてしまう。
幾ら美しくても心は老婆なんだ。
もしエルフの里に居たら長老と呼ばれ茶でも飲んでいる婆ちゃんだ。
そんな彼女達が、死ぬまで男に抱かれ続けるのは苦痛な筈だ。
だから枯れている三人がベストな筈だ。
歳相応の老人同士、きっと上手くいく。
ジムナ村は田舎で緑も多い、エルフの彼女達の老後には良い場所だ。
奴隷ではなく『嫁』と馬車で俺は話した。
子供だった俺に優しくしてくれた、爺ちゃんに似合いの婆ちゃんを紹介した…そんな感じだ。
6人で楽しく話し合い…
ナジとナジム村長が、スルトとカシムが、テレアとカジナという形で決まった。
三人は好みが被らないから楽だな。
「セレス、お前は村の誇りじゃよ」
「お前は儂が一番欲しいもんをくれた、儂が目が黒いうちはなんでも相談に乗るぞ」
「儂もじゃ…なんなら3人目の相談役になるか?」
「はははっ気にしないで…」
さらって言っているけど…これ凄い話だ。
村社会で相談役は…村の中で村長以外逆らえる人間は居ない。
それを冗談でも持ち出すなんて、余程嬉しかったんだな。
「セレスさん、本当に下心のない方をありがとうございます」
「理想の殿方です」
「本当にお世話になりました」
「うん…よかったね、幸せになりな」
「「「はい」」」
幾ら寿命が残り少ないとはいえ、エルフは村長達より長生きするだろう。
村長たちもきっと彼女達に亡くなった後財産が行くようにする筈だ。
幸せな老人カップルの達成…良かった、良かった。
◆◆◆
静子達には…
『村長や相談役に『エルフの奴隷の妻』を与えてやった。ゼクトはエルフが好きだったが、勇者だから亜人を妻に出来ないから死ぬ程悔しがるし、見たら泣くぞ』
そう言えば良いさ。
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