第36話 奴隷市場への誘い



俺は村に帰ってきた。


その足でナジム村長の家に向かった。


「どうした? セレス、何かようか?」


運が良い、二人の相談役も居る。


丁度良い…


「村長、ちょっと孫のつもりで話して良いですか?」


「ああっ構わんよ…お前は本当に孫だと思っている、カジナにカシムも良いじゃろう」


「ああっ構わんよ」


「儂の家の手伝いもようやってくれた、儂も構わぬ」


これからする事は、村長たちを絡めた方が良い。


そうしないと問題が起きる。


「じゃぁ孫として話すよ…爺ちゃん達は性欲はある?」


「何じゃ…まぁ良い流石にないわい」


「儂らもな…なんじゃ嫌な事きくのう」


「まぁ寂しいもんじゃ」


だろうな…もう良い歳だ。


「そうですか…実は皆にプレゼントがあるんだ」


「プレゼント? 何をいまさら、セレスには何時も貰っておる、もう充分じゃ」


「んだな」


「村に帰るたびに金貨もろうとる…悪いわ」


「多分、もう少ししたら俺たちはこの村を離れようと思うんだ、そうしたら爺さんたちが心配だ、そこで奴隷をプレゼントしようと思っているんだ…皆、子供も巣立って妻も居ない…心配なんだ」


「お前は…本当に、それで聞いたんだな…ありがたいな老後の世話はどうするか、何時も考えていた、すまない…助かるわい」


「気を使わせてすまんの…助かるわ」


「ほんに、本当の孫や息子すら、こんな孝行せん、ありがたい」


「それじゃ、明日隣り街にいきましょう…実は目ぼしをつけて予約してあるんだ…それじゃ宜しく」


「「「ああっ、ありがとう」」」


「セクトールおじさん、貴方もだよ」


「俺…良いのか?」


「まぁね、今回は世話になった人全部だから…」


「ハァ~お前は本当に俺の家族みたいだな…ゼクトだってこんな事してくれん」


「気にしないで良いさ」


◆◆◆


「カズマ兄さん」


「なんだセレスか…どうした? 金なら返したろう? 済まなかったな」


「そんなのは良いんだ…隣の街で奴隷市場が開かれているんだけど、買いにいかないか?」


「そうしたいが、資金を考えたらな…」


「何言ってるの?カズマ兄さんに金なら返して貰ったから俺が買うよ…実はカズマ兄さんの好みの女性を予約しているんだ…明日行かない」


「そう言うことなら、明日は店は休みだな…なんだか気を使わせたみたいで済まないな」


「良いんだよ…もうじき此処を離れるから、少しカズマ兄さんに孝行がしたい…それだけだ」


「そうか…お前は俺にとって兄弟であり、息子みたいな者だ、王都の店が上手くいったら食べにきてくれよ」


「必ず行くよ」


「ああっ待っている」


◆◆◆


「カイトさん」


「なんだセレス、まだようか?」


「カイトさんは若い後添いが欲しい、そう言ってましたね」

「おう…」


「明日買いに行きましょう」


「おいおい、儂は金は預けてあるんだ、明日じゃ間に合わん」


「何言っているんですか? そんなの俺が出しますよ」


「何故じゃ、儂はそこ迄して貰うことはしとらん」


「サヨさんを譲って貰いましたし…それに、あんたは俺の親父みたいな者だ…多分、俺は暫くしたら4人を連れて此処を出る、次はいつ帰ってくるか解らない…1人身のあんたが心配だ」


「本当にお前は…良い奴じゃな…娘のメルなんて仕送りもせん」


勇者パーティじゃ難しいよな。


「そうですか」


「ああっ親不孝者じゃ、よっぽどセレスの方が孝行ものだ…ありがたく好意を受け取ろう」


「それじゃ明日の朝、村長の家の前で」


「おう…必ず行く」


◆◆◆


「シュートさん」


「いや、セレスくん、今日はどうした?」


「シュートさん、実は隣町で奴隷市をやっているんですよ」


「へぇ~そうなのかい? 確かに奴隷を買うつもりだけど、少しね」


「実は、そこで貴族の娘を見かけたんですよ、頭も良さそうだし、絶対にシュートさんにお似合いですよ」


「本当かい?」


「はい、あっお金の事は気にしないで下さい、子供の時からお世話になっていたから、俺が出すから」


「いいのかい?」


「勿論」


これで良い…これで、誰も傷つかない方法で復讐みたいに見せる事が出来る。


きっと皆も納得してくれる筈。


してくれると良いな…



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