第29話 【閑話】心の別れ



結局、セクトールはそのまま、ナジム村長の家で俺達が去る迄居候する事になった。


反省の意味も込めて、暫くは家の中の事をやらせるそうだ。


恐らくは村長なりに、セクトールと静子が顔を合わせない様にと考えてくれたのだろう。


後は…俺には最早どうでも良い『ゼクト達への仕返し』をどうするかだが、朧気的に考えは浮かんできたが、もっか悩み中だ。


何もしないでもゼクト達は家事が真面に出来ないから困っている筈だし、めんどくさい書類もあるのに、追放されて、そのまま別れたから引継ぎもしていない。


前世で言うなら『家事を一切してこなかった子供が親を追い出した』『会社で引継ぎもしないで追い出した』その状態だ。


普通に困らない訳ないな。


俺としては静子たちの気がおさまる方法を考える…それだけだ。



◆◆◆


「俺は本当は気が進まないし…したくはない、だがこれしかもう浮かびあがらないんだ…先に謝っておく…すまない」


もうこれしか思いつかない。


側室とはいえ、生涯を共に歩むはずだった相手にこれを言うのは…


心が痛い。


「ああっ解っている、我々の誰かがセレスの婚約者、いや場合によっては直ぐに妻になれ…そういう事だよな…」


「正確にはリダか私..どちらかね…メルはセレスを傷つけたんだから…」


「待って…私はあの時間違いなく恋人だった…私が反省して心から謝って…セレスが許す…それが一番よ…心からの愛を示せばきっとセレスは許してくれる」


「果たして、それで足りるだろうか…事の発端は、俺がお前達の魅力に負けて独り占めしたのが問題なんだ…だから、俺は彼奴が望むなら誰でも差し出す…三人全部を望むなら…その時は全員でも差し出す…本当にすまないな…ごめん」


「あはははっ、良いんだよ、仕方が無い、セレスが居ないと、私達は無力だ、特に私は…役立たずになる…セレスの剣の手入れがないと戦力にならない…仕方がない…仕方が無いさ…少し考えさせてくれ」


リダは涙ぐんでいるが仕方がない…


仕方がないんだ…


「ふぅ、仕方がないわね…私は子供の頃から、貴方と結婚すると思っていたわ、まぁ貴方が勇者になったから側室…そう思っていたけど…現状を考えたらかなり無理があるわ…でも、セレスは2番ではあるの…婚姻相手が1番から2番になる…仕方ない考えるわ」


「悪いな」


「ゴメン…元を考えれば、私が悪いの…だからゼクトは謝らないで…あの時私が馬鹿をしなければ…きっと、ごめん」


「本当に済まない」


俺はこの日、幼馴染をセレスに差し出す覚悟をした。



※ 今回の話は短いですが…此処から三者三様の話になります。

その為、此処で切る必要がありました。





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