第22話 俺はそんなに恨んでない。


静子から話を聞いた。


弱ったな…


俺はそこ迄、ゼクト達を恨んではいない。


確かにパーティを追い出されたのは腹が立つが、それは『解放』に近い。


肩の荷が下りたな。


その程度しか考えてないんだ。


一緒に居た時は体が大変だったし腹も立った。


だが、その程度なんだ…復讐なんて考えて無い。


この世界には労働基準法は無いのだから…


この世界で商人を目指すなら同じ位大変だろうし


職人になるなら見習いは給料も悪く厳しい。


コックも怒鳴られながら仕事を覚える。


そんな世界なのだから、この程度の事大した事じゃない。


そもそも、マリアもリダもメルも異性として好きな訳じゃない。


抱けるか?


そう言われたら…きっと抱けない。


彼らに対する愛は恋人や夫婦の愛じゃなく友情や家族の愛に近い。



俺の立場は、『子供のお守りを頼まれたからしていただけ』『子守りしている子供にもう要らないから』と言われ辞めた。


それだけだ。


傍から見たら可哀そうに思えるかも知れないが、俺の内情はそんな物だ。


「静子さんの気持ちは凄く嬉しいけど、そこ迄しないで良いよ」


「セレスくん、悔しくないの?」


「確かに少しは悔しいけど、仕返しする迄は悔しくないな」


「セレスくんは優しいからそうは言ってくれるけどゼクトのしたことは良くない事だよ、良く考えて」



考えれば、考える程、俺にはどうでも良い。


いや、寧ろ勇者パーティに所属したから複数婚が許される権利が貰えたから悪い事ばかりじゃない。


「良く考えたよ…余り、いや殆ど恨みは無いな」


「セレス、遠慮しないで良いよ」


「セレスさん、本当に気を使ってない?」


「セレスちゃん…本当に良いの?」


「だってさぁ、気がつかない? 俺の女性の好みは静子さんに姉さん、ミサキさんにサヨさんみたいな包容力があって優しく、綺麗な女性なんだ…あの中に居ないよ」


「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)」」」」


「精々こき使われて追い出された、それだけだよ…これは結果論だけど、その分の報酬はもう貰っているよ…ゼクトのパーティに居なければ『複数婚』の権利は貰えなかった、今こうして静子さんだけじゃなくて皆を妻になんて出来ない、そう考えたら恨み切れないよ」


「「「「セレス(くん)(さん)(ちゃん)」」」」


「確かに嫌な事もあったけど、それがあるから幸せになれる…それで良いんじゃないかな?」


これで良い筈だよな。


「セレスくんは優しいからそう言ってくれるけど…悪い子には叱るのも大事だよ」


「セレス、セレスが許しても、私はリダを許せない」


何でだ…


「セレスさん、メルがした事は最低の事だわ…母として絶対にゆるせないわ」


「セレスちゃん、許しちゃ駄目だよ」


駄目だ…俺が許しても4人が許してくれない。


仕方ないな…


「そんなに言うなら罰は与えるけど…そこ迄はやはり、やりすぎだと思う、少し考えさせてほしい」


関わらなければそれだけで良い…そう思っていたのに…それでは済ませてくれないらしい。


何か良い方法を考えないと…


結局、この話は一旦保留にして貰い、先にミサキさんとサヨさんの問題を片づける事にした。












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