第17話 夜這い失敗
静子に夜這いの作法を教わった。
確かにこれなら傷つけることは無いな..そう確信した俺はハルカに夜這いを掛ける事にした。
「良い…セレスくん、ちゃんと作法は守ってね..守らないと大変な事になるから」
夜這いにルールがあるなんて知らなかった。
1. 相手が24歳以上か未亡人である事
2. 相手の布団の右横に正座して座り女性が起きるまで待つこと
3. 女を驚かせない為、女から話しかけてくるまで自分から話し掛けない事
4. 受け入れてくれた女性に恥をかかせない事
5. 受け入れられなければ、罵倒などせず速やかに立ち去る事
6. 断られたら諦める事
概ねこんな感じだ。
話で聞いていたのとは全然違い、かなりソフトなものだ。
それでも、見知らぬ男が枕元に立っていたら怖いだろうが、そこは村社会…知らない人は殆どいない。
この夜這いだが静子の話ではどういう訳か7割近く成功するらしい。
カギはどうなのか?
そう思うかもしれないが、知らない者が殆どいない村では鍵など掛けない。
ちなみに、ルールを破り無理やり等したら村の若い衆に袋叩きにされ村から追い出される。
夜這いと言うのはちゃんとルールに則った恋愛の手段と言えるのかも知れない。
※このルールは本当にあったとされる昔の夜這いのルールを参考にしました、但し婚姻目的の誠実な方を採用しています。
静子は挨拶に回ったあと、仲の良い二人と久しぶりにお酒を飲むからと言って挨拶に出掛けていった。
「まだ時間があるから俺も挨拶には行こうか?」
そう伝えたが
「今から心を落ち着かせないと失敗するわよ、挨拶は任せてね、あと今日は帰ってこないから、セレスくんも頑張って」
他の女性に夜這いをかけるのに静子に応援される…なんだか気恥ずかしい思いをしながら、俺は夜を待った。
◆◆◆
夜になった。
昔でいう23時位だ、村の朝は早いからこの位にはもう皆寝ている。
定食屋カズマも明かりが消えて二人とも寝ているのが解る。
裏側に周り、裏口から中に入った。
子供の頃、何回も遊びに来ていたから部屋の作りは解る。
うん…待て。
俺の勘違いじゃ無ければ二人は一緒に寝て無かったか?
駄目じゃないか…そもそも夜這いが出来ない。
流石にカズマと一緒に寝ているハルカの横にいるなんて出来ないな。
此処迄きた以上、様子だけでも見ていくか。
そのまま廊下を歩き、二人が一緒に寝ていた部屋を覗いた。
カズマが一人で寝ていた。
昔は此処で確か一緒に寝ていた筈なのに、何でハルカが居ないんだ?
隣の隣の部屋にハルカが眠っていた。
「う~ん」
熟睡しているようなので、布団の右横に正座をして座った。
起こさないのが男の誠意。
例え足が痺れようが起こさずに待たなくちゃいけない。
起きなければ何時間も正座を続けなくてはならないから結構大変だ。
女の所に無理やり押しかけるのだから、これで誠意を現すのだろう。
村では男女の数が釣り合わない事が多い。
ゼクトが勇者にならなければ男が2人に女が3人女が1人余る。
この場合は別に困らない、あぶれた1人が他の村へでも嫁げば話は終わる。
大変なのは男の方が多い場合だ。
俺は孤児だから関係ないが、男の場合は基本村から離れない。
農民なら畑を耕して生活、つまり土地持ちだから跡継ぎと嫁が必要になる。
商売人でも村で商売しているなら跡継ぎが必要になるし、この村は裕福だから次男、三男であっても畑を分けて貰えるし、開拓できる土地も多くある。
『男が余った時にどうにか出来ないか』
そこから、旦那を亡くした未亡人とかと婚姻をさせたらどうか?
という考えから出来た制度だ。
更に時代が進み、未亡人だけじゃなく、子供を作り妻としての役目を終えた女性も含むようになった。
この世界は大昔の日本に近くて20歳じゃもう年増扱いだからこその制度かも知れない。
最も、この制度は多少の違いはあるが、多くの村にある。
ただ、行う人間は少ない。
俺からしたら勿体ない話だが24歳はもう完全におばさん。
こんな制度があっても殆どの若者は使わない。
10代半ばの少年が好んで年上を選ぶ者はいない。
※この世界の人族の寿命は50年位、見栄えは別だが18歳の少年が40~50歳の女性を相手にするのに意味合いは近い感じです。
いざ事に及んで、女性を罵倒する者がいたのかも知れない。
だから罵倒しない等の約束ごとが出来たのかも知れない。
今では、多くの親が子供に泣きつかれ畑を少し手放し若い奴隷を買う、そちらを選ぶようだ。
その為、制度として残ってはいるが今は余り行う人間はいないらしい。
まぁ静子から聞いた話だけどね。
◆◆◆
起きるまで正座。
これを我慢するのは案外辛い物がある。
ハルカはさっきから寝息を立てて寝ている。
前の世界のタンクトップに近いシャツにホットパンツに近いズボンを履いて寝ている。
ハルカは寝苦しいからか毛布を足でどけている。
ブラジャーなんて村には無いから形の良い胸がシャツの間からチラチラ見えるし、綺麗な長い脚も見えて凄くそそられる物がある。
『ハァハァ…ううっ』
別に興奮しているだけじゃ無い。
足が痺れて我慢が効かなくなってきた方が強い。
『ハァハァ、足が痺れて痛いな』
そう思っていたら、ハルカと目があった。
「セレス…なにしているの?」
「姉さんこれは、その..」
「右側に座っている、その意味が解っているの? セレスの馬鹿―――っ」
バシッ
いきなりビンタされた。
「姉さん、ちょっと待って」
「待たないわ、セレス、私を馬鹿にしているの? ねぇねぇ! ふざけたじゃ済まないのよー-っ」
ドカッ
後頭部は流石に痛い…
まさか蹴られるとは思わなかった。
「ちょちょ、話を聞いて…落ち着いて」
「セレス、私は落ち着いているわ…なんでこんな事をしたか聞いているのよ!」
「姉さん、俺は姉さんが、好きっ…うげっ」
「セレス、それは姉弟としてよね?良そういう笑えない冗談はやめなさい! 女の子が傷つくわ…私もね」
またビンタされる…思わず目を瞑ってしまった。
ハルカは怒らせると怖い、すっかり忘れていた。
「ハルカ、何の騒ぎだい!セレス大丈夫か!」
カズマが起きてきてビンタをしようとしたハルカを抑えてくれた。
はははっ終わった。
兄姉弟の関係ももう終わりだ。
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