第16話 静子の提案



「ねぇセレスくん、ハルカの事好きでしょう?」


静子さんに不意をつかれてしまった。


「そりゃ姉さんみたいな者だし、好きだよ」


「そう言う事言っているんじゃないのよ? 姉弟という意味じゃ無くて男と女という意味でよ? うふふふっ違うかな?」


「子供の頃はね、多分静子さんが初恋の相手なら、姉さんはそうだな、好きになった二人目かな?」


「確かに、見た目ならハルカはセレスくんと居ても可笑しくない位には見えるもんね」


確かにハルカは見た目が凄く若く見える。


リダの母親なんだから、20代後半から30代なのは間違いないのに、20代前半にしか見えない。


良く前世でいうTシャツにホットパンツモドキにエプロンだから余計にそう見える。


「そうだね、確かに姉さんは若く…」


「うふふっ凄く若く見えるわよね」


何だか静子の笑顔が一瞬黒く見えたのは気のせいだろうか?


「だけど、静子さんも凄く若いと思うよ」


というか、その若い子が俺は駄目なんだが、それは言わない方が良いだろう。


ゼクト達とは無理やり話を合わせているが、明らかに考え方にギャップを感じる。


話していて煩いな、そう感じる時も多々ある。


「うふふっ、嬉しいわ、だけどハルカの事好きなら行動を起こさなくて良いの? 随分私の時と違いを感じるわ」


静子さんはなんとなくだが、心の中に昔から『俺の方が幸せに出来る』そんな気持ちが何処かにあった。


だが、ハルカは違う。


俺が兄と慕うカズマの嫁さんだ。


カズマが良い人過ぎて、どうしようという気持ちが起きなくなった。


俺が両親を亡くして孤独を感じ泣いていた時も抱きしめてくれてくれ一緒に泣いてくれた。


カズマは転生者の孫だから、俺の話をよく聞いてくれ、他にも小さい俺と魚とりをするなど、よく遊んでくれた。


ハルカとカズマは何時も一緒にいて励ましてくれた。


俺が料理をしたいと言ったら喜んでくれて、厨房を貸してくれて解らない事を沢山教えてくれた。


食材もこの世界と前の世界じゃかなり違う。


代替品の食材を考えてくれたのもカズマだった。


そんなカズマの嫁さんがハルカ。


好きになっても敵わない、何よりカズマは優しく、傍にいるハルカがいつも笑顔だ。


だから、俺は二人の弟になる事にした。


息子でも良かったが…そういったら『姉さん』ってハルカに言われてビンタされた。


二人は何時も仲が良く笑っていた、その輪に俺を招いてくれた。


そんな二人に割って入る…幾ら俺でも出来ない。


カズマもハルカも俺には大切な人家族同然になっていたから…


「姉さんは確かに素敵だけど、カズマ兄さんが居るから諦めた、もう兄姉弟の間柄だよ」


「セレスくん…あの時なら確かにそうだわ、でもね今なら恐らく事情は変わっているから、今でもハルカが好きなら、諦める事はないわ」


「そうは言っても姉さんの相手はカズマ兄さん、割り込む隙なんて全く無いよ」


「そうかしら? 今ならきっとセレスくんにも、割り込むチャンス、うふふっ円満に話が進むチャンスがあると思うわ」


「静子さん、また冗談を…」


「うふふっ冗談じゃないのよ、だから今日の夜、セレスくんはハルカに夜這いを掛けなさい、少し寂しいけど今晩は我慢してあげるわ」


「夜這い? そんな事俺は…」


「うふふふっ、夜這いはこの村に昔から伝わる伝統的風習よ? セレスくんが思っている様な物じゃ無いわ」



「でも、夜這いは夜這いですよね?」


「そうね…だけど、ちゃんとしたルールがあって、その通りに行うなら問題ないのよ! それにカズマさんも多分平気だと思うわ」


「え~と」


「良いから、良いから…そうと決まったらこれから夜這いの練習よ」


「皆に挨拶しなくちゃ不味いよ」


「それなら、私が妻として挨拶を代わりにして置くから大丈夫よ…そうね、今日はセレスくんが夜這いで居ない訳だから私はミサキ(マリアの母親)とサヨ(メルの母親)でも誘って飲み明かすとするわ、あの二人には結婚した事も報告したいしね」


「そう…だけど、夜這い何てして本当に良いのかな?」


「ちゃんとルールに則ってやれば違反じゃないわ…良い?絶対にルールは守るのよ」


こうして俺は静子に言われるままにハルカに夜這いを掛ける事になった。













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