第15話 ハルカとカズマ
「おはよう」
「おはようって、もうお昼過ぎよ」
「久しぶりだったから、ゴメン」
「別に悪くないわよ、この齢で女として求めて貰えるなんて凄く嬉しいもの、ただこの時間じゃもう皆、仕事しているわね邪魔になるから挨拶は夜になるわね」
確かに村の朝は早いからそうなるよな。
「そうだ、挨拶と昼食を兼ねて、カズマに行かない」
「そうね、ハルカにも逢いたいし良いわ、行きましょう」
カズマとはこの村で唯一の定食屋さんだ。
カズマの名前はオーナーの名前その物。
カズマはリダの父親でハルカ(リダの母親)と一緒に店をまわしている。
カズマは俺にとっては兄の様な人でゼクトも俺も頭が上がらない。
凄いイケメンで定食屋をやっているだけあって料理上手。
俺の前世の料理の再現も、カズマの手伝いをする代わりに手伝って貰った。
俺にとっては血こそ繋がってないけどカズマは兄さん、ハルカさんは姉さん…そんな風に思っている。
まぁハルカに無理やりそう呼ぶように言われているんだけどね。
「ハルカ、ただいまぁ~」
「姉さんただいま~」
「あら、静子にセレスじゃない? そう言えば静子大変だったんだって」
「うふふ、まぁ少しね、だけどセレスくんに助けて貰ったから問題ないわ」
「へぇ~此奴でも役に立つんだ…セレスやったじゃない」
バシッ。
「姉さん痛いっ」
ハルカは何故か俺の事を平手でバシバシ叩くんだよな。
「私みたいにか弱い女が叩いたっていたくないよ、全くもうセレスったら大げさなんだから、もう」
バシッ
「だから姉さん痛いから背中叩かないで」
「あらあら、本当に姉弟みたいで焼けちゃうわね…私の旦那なのに」
「そう言えば静子、セレスと結婚したんだって、随分思い切ったわね」
「うふふふっ、セレスくんたら本当に私を愛してくれてね!こんな、おばさんでも良いって言うからしちゃったわ」
「セレス良かったじゃない! 前から貴方静子好きだったもんね!」
なんでか解らないけど、ハルカは昔から良く俺とじゃれあいながら叩くんだよな。
「だから、姉さん、痛いよ」
「ハルカ、セレスくんは貴方の事も…」
「ハルカ、パスタが上がった…なんだセレスに静子帰って来ていたのか?」
「カズマさんお久しぶりね」
「カズマ兄さんただいま!」
しかし、いつ見てもカズマ兄さんはイケメンだな。
歯がきらりと光るイケメン料理人そんな風に見える。
俺の両親が亡くなった後『俺の事は親父や兄貴と思ってくれて良いんだぞ』そう言ってくれた。
必然的にカズマが兄さんだから、当時カズマの彼女だったハルカの事を姉さんと呼ぶようになった。
ハルカは、ショートカットの亜麻色の髪にヘアバンドをつけていて、
スタイルも良く胸もお尻も大きくも無く小さくも無い、綺麗と可愛いを両立している。但し俺には凄く粗暴だ。
カズマさんに言わせると、それが羨ましいらしい。
ハルカにも当然カズマさんにも言えないが、俺はハルカを好きだった時期がある。
カズマは兄さんみたいな存在でハルカはその彼女。
しかもカズマはゼクトと違いパチモンじゃない本当のイケメンなのでこの思いは自分の心に押し込んだ。
今にして思えば口に出して、兄さんのように思っているカズマと姉さんのように思っているハルカを失いたくなくて自己完結で諦めたのかも知れない。
二人は、お似合いだしな。
「静子にセレス、今コーヒー入れてピザ焼いてやるから、ゆっくりしていけよ、俺は仕事があるからハルカの相手をしてやってくれ、頼むよ」
「カズマ兄さんごちそうになります」
「それじゃ俺厨房に戻るな」
それだけ言うとカズマは厨房に戻っていった。
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