第13話 ギルド婚
ジムナ村に行く途中の街で冒険者ギルドによってみた。
聞いてみたら、俺はまだ勇者パーティに籍があるようだ。
「勇者であるゼクトと話して円満離団となった筈なんだが」
「ギルド側としましては、リーダーのゼクト様とセレス様の両者の署名の離団届けが出されていませんので、そのまま籍が残っていますね、口座管理は別だし、干渉は無い感じですから、別にそのままでも良いんじゃないですか? 弊害は無いでしょう?」
「弊害が無いなら別に構わないよ、多分ゼクトと会う事も無い可能性があるんだけど、それでも問題は無い?」
「この状況なら全く問題は無いですね」
だけど、可笑しいな?
それなら、何で静子とパーティが組めているんだろう?
「あの、ですが俺、他の仲間とパーティを組んでいるんですが問題ありませんか?」
「ちょっと待って下さい! ああっ成程! 問題無いですね…『希望の灯』の別動隊扱いになってますよ、パーティを組む時にパーティ名の登録の話を職員がしなかったでしょう?」
「確かに言われれば、聞かれなかった気がします」
「別動隊としてのパーティ登録だからですよ」
「それだと、静子さんの扱いはどうなるのですか? ゼクトと話をして無いのですが」
「別動隊のリーダーはセレス様だから問題はありませんね、公の肩書としては『希望の灯別動隊 リーダー セレス』『希望の灯別動隊 メンバー 静子』となります」
そうなると、勇者パーティの特権は残る事になるのか?
「勇者パーティの特権はどうなりますか?」
「勇者パーティの特権はそもそも、一度でも所属すれば、そのまま通用します! 通常は勇者パーティから抜ける時は、死ぬか、戦えなくなる時です、そんな方から特権を奪う事など国もギルドもしません」
確かに五体満足で勇者パーティを抜ける存在なんてまず居ないよな。
「それだと私も勇者パーティ所属となるのかしら?」
「正確には別動隊の所属ですね、本隊とは関係なく、セレス様の部下という扱いが一番近いかも知れません…あっあと前のギルドでドラゴンスレイヤーの称号の申請が出されまして許可が下りたみたいですね」
「本来、それは王様や教皇様から勲章と一緒に直接貰うんじゃないですか?」
「勇者パーティの旅の途中だからと特例で略式で許可が降りたみたいです、肩書きは冒険者証に後で記入しますから、今日から名乗って大丈夫ですよ…報奨金は後日振り込まれます、岩竜のお金も一緒みたいです…叙勲は多分ゼクト様の魔王討伐後とかになるかも知れません」
「凄いじゃないセレスくん、ついでに聞くけど他のメンバーで竜種を狩った人は居るのかしら?」
「ゼクト様が亜竜のワイバーン、リダ様が同じくワイバーンを単独で狩っていますが亜竜なのでドラゴンスレイヤーの称号は貰えません…ここ数年ではセレス様だけですね…おめでとうございます」
「へぇ~あのゼクトがワイバーンをね、少しはやる様になったじゃない」
「幾ら親しくても相手は勇者様です『様』をつけた方が良いですよ!遊撃隊扱いなのですから」
「静子さんはゼクトの母親なんだ、だから構わないと思うんだが、どうかな?」
「お母さまでいらっしゃいますか? 失礼しました」
「うふふっ、別に構わないわ、今はセレスくんの恋人だから」
受付嬢のお姉さんがペンを落とした。
「はい? ですが静子様はセレス様の奴隷ですよね?」
「そうね、うふふふっ『愛の奴隷』かしら?」
「セレス様…これはどういう事でしょうか?」
今日会ったばかりの受付のお姉さんに何で話さないといけないのか?
そう思ったが、此処迄話したならしっかり説明した方が良いだろうな。
仕方なく、今迄の経緯を話した。
「そのセクトールって親父、女の敵ですね! 事情は解りました、ギルドとして何か出来る訳じゃありませんが、記録にしっかり残して置きます…それでですね、愛し合う二人に提案があるのですが『ギルド婚』なさいませんか?」
「そんな、私…おばさんなのに…うふふっ恥ずかしいわ」
静子は知っているらしい。
顔を真っ赤にしてクネクネしている。
可愛いからいいんだけど。
「ギルド婚って何でしょうか?」
「結婚の事ですよ…ギルドに『結婚しています』そういう届けを出すシステムです、結婚と言えば教会が主流ですが、最近では利便性から冒険者の方はこちらを選ぶことが多いです、何かあった時の連絡や口座の管理も便利になります」
静子は顔を真っ赤にしているし…もう既に嫁さんにしたつもりだから、けじめとして良いかも知れないな。
要は前世でいう『籍を入れる』のと同じだ。
「静子さんさえ良ければ『ギルド婚』しないか?」
「あの…本当に良いの? かなり私は年上だし…これは正式の物なのよ、後悔しない?」
「後悔なんてしないよ! 先に好きになったのは俺だから」
「そうね、うん、私とギルド婚して下さい…これで私が正室だわ」
「喜んで」
あれっ、いま何か静子が変な事言った気がするけど、まぁ良いか?
「おめでとうございます! 心から祝福します…それで登録料としまして銀貨2枚頂きます、それとお揃いのリングは如何ですか?いま冒険者の間では流行りなんです、こちらはペアで金貨1枚です」
商魂たくましいな。
静子が欲しそうにしているから良いか。
「それじゃリングも貰おうかな」
「ありがとうございます、それじゃお互いに嵌めてあげて下さいね」
おずおずとお互いに手を出し合ってリングを嵌めた。
簡単な魔法が掛かっているのかリングは丁度良い大きさに自動的に変わった。
「おめでとうございます、それではこちらの書類にサインをお願いします」
「それじゃ俺から書くね…はい」
「うふふっ、それじゃ今度は私ね」
お互いにサインをすると『結婚』したんだ…そんな気がこみ上げてきた。
何故か酒場や受付している冒険者が無言でこちらを見ている。
何故だ?
「もし宜しければ、酒場で皆さんに奢ってあげては如何ですか? エール一杯奢る位で、皆さんから祝福して貰えますよ…銀貨5枚です」
この受付嬢、商売がうまいな。
静子が喜んでいるんだから断れないだろう。
良いやトコトンやってやる。
「みんな~!俺はエール1杯なんてケチな事は言わない…今日一日好きなだけ飲んでくれ、金貨5枚置いていくから…お姉さん頼むよ」
「皆、セレス様と静子様のおごりだよ~今日は貸しきりだ祝ってやってあげて~」
「「「「「「「「「「おめでとう」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「幸せに成れよ~この色男っ」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「静子さん、セレスさんご結婚おめでとうございます」」」」」」」」」」
皆に祝福されながらギルドを後にした。
受付嬢に乗せられてしまったが、腕を絡めている静子が嬉しそうだから…うん安い物だ。
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