第4話

 美波はくるみの死因を探ることに一生懸命になってしまっていたせいか、恋のことをすっぽらかしにしてしまっていた。


 決して彼に気がなくなったわけではない。ただただ今はくるみのことで精一杯…

 そう、だから美波は白黒はっきりさせに廊下を走った。



「廉…!!!」


 美波は自分の手足を素早く動かし、廊下の先に立つ廉の名を呼んだ。




「どうしたの?轟さん」



「好きです…付き合って!」


 すぐに告白の言葉は口から飛び出していた。

 顔はみるみる赤へと染まっていき、その表情を隠すように下を俯く。


 美波は廉がどんな顔して、どんな気持ちで自分を見ているかなんて、俯いていたらなんもわかりやしなかった。



だから――


 思い切って顔を上げた。





「は?何で?」


 そこには軽蔑した表情に染まった廉の姿があった。

 美波にはとても正直信じられない光景だ。

 廉は成績優秀で、優しくて、かっこよくて、いつも笑顔で、それで――



 自分にずっと言い聞かせていても、耳と目から入る情報のせいで効いてくれなかった。

 美波は考えるのをやめたくなり、ここから逃げ出したくなった。



「じ、自殺をとめてくれたり…さ。いつも優しくしてくれたり…さ。色々、感謝しててさ」



「それはきっとね」


 美波はごくりと唾を飲んだ。

 彼がどう思っているのかこの返事によって判明する。緊張の瞬間だ。




「――君の一方的な気持ちだよねぇ?????」


 見開いた目は恐ろしく、彼の硬い表情で美波は凍りつかせられた。





 美波はきっと夢を見ている。


 酷く辛い悪夢だ。


 正夢にもならないし、今起こっていることでもないんだ。

そう、だから美波は何にも悪くないんだ――――




 そうやって言い聞かせたけれど、変わったことなんてなんにもありやしない。

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