第45話 やる気が起きません
家に着くと、そのまま部屋へと駆け込んだ。
「ちょっと、ジュリア。一体どうしたの?」
お母様がびっくりして、私の元へと駆け寄ってきた。
「お母様、ごめんなさい…ちょっと体調が悪くて…」
「そう…わかったわ。ゆっくり休みなさい」
珍しく私が泣いているのを見たお母様、何かを感じ取った様で、そのまま部屋を出て行った。どうしてリュカ様は、マリーゴールド殿下を抱きしめたのかしら?もしかして…
いいえ、リュカ様に限ってそんな事はない。でも、本当にあの記事にあった様に、2人が愛し合っていたとしたら…
そう思ったら、涙がこみ上げて来た。ダメだ、今は何を考えてもネガティブな気持ちになるだけだ。とにかく、ジャージに着替えよう。
急いでジャージに着替え、ベッドに横になる。私、今日学院をズル休みしてしまったわ。どんなに辛くても、休む事なんてなかったのに。でも…今はどんな顔をしてリュカ様に会えばいいのか分からない…
ダメだ、こんな時は、一度頭をリセットさせよう。よし、寝よう。寝るに限る。ゆっくり目を閉じたのであった。
「…様、お嬢様、そろそろ起きて下さい。お嬢様」
この声は…
ゆっくり目を覚ますと、目の前にはファリサの姿が。部屋も随分と薄暗くなっている。どうやらあの後、ずっと眠っていた様だ。
「お昼ご飯も召し上がらずに、ずっと眠っていらっしゃるのですもの。そういえば、リュカ殿下がいらっしゃいましたよ。随分と長い間待っていらしたのですが、一向にお嬢様が起きないので、諦めて帰られました。奥様がお嬢様を起こす様おっしゃったのですが、せっかく気持ちよく眠っているのに、起こしては可哀そうだからと。本当にお優しい方でございますね」
リュカ様が…
そうよね、リュカ様はいつも私の事を一番に考えてくれている。でも…それならなぜ、マリーゴールド殿下に抱き着くのよ。
「とにかく、もう夕食のお時間です。皆様お待ちですよ」
ファリサに連れられ、食堂へと向かう。
「ジュリア、大丈夫なの?」
食堂に着いた瞬間、お姉様が私の方に向かって走ってきてくれた。お兄様も心配そうな顔をしている。
「ジュリア、辛かったわね。可哀そうに」
そう言って抱きしめてくれるお姉様。辛かった?確かに、マリーゴールド殿下とリュカ様が抱き合っている写真を見た時、鈍器で殴られたような衝撃を受けた。ショックだった…
あの時の事を思い出すと、再び涙がこみ上げて来た。
「あぁ、ジュリア。泣かないで。でも、リュカ殿下はあんな事をするような人ではないと思うわ。きっと何か事情があるのよ」
「事情が…でも、もし本当にマリーゴールド殿下の事を好きだったら?」
もし、私との婚約を破棄し、マリーゴールド殿下を選んだら、私はどうすればいいの?リュカ様と一緒に過ごすうちに、いつしかかけがえのない存在になっていた。きっと私は、もうリュカ様なしでは生きていけないだろう。
「もう、どうしちゃったの?あんなにもリュカ殿下から愛情を受けているのに。でも、あんな写真を見たら、誰だって不安にもなるわよね。気持ちが落ち着くまで、学院はお休みしなさい。いいですよね?お父様、お母様」
「ああ、もちろんだ。とにかく、お前が行きたくないなら、行かなくてもいい。それから、ジュリアの気持ちが落ち着くまでは、リュカ殿下が訪ねて来ても、帰ってもらう様にしてもらおう」
「そうね、それがいいわ。でも、いつも誰になんと言われようが、自分の道を突き進んでいたジュリアが落ち込むなんて、珍しいわね。それだけリュカ殿下の事が、大好きという事よね。ジュリア、後悔だけはしないで」
そう言って笑ったお母様。お父様もいつも通り、私の事を考えてくれている。確かにお姉様の言う通り、リュカ様は私の事を誰よりも大切にしてくれていた。きっと何か事情があるのだろう。頭ではわかっていても、どうしても心が付いて行かないのだ…
とにかく、しばらくは学院は休もう。こんな気持ちで、リュカ様には会えないもの…
翌日、皆私に気を使ってか、特に何も言ってこない。暇だな、こんな日は、やっぱりあそこに行こう。早速私の為に建ててくれた建物へと向かった。いつもの様にぬか床をかき混ぜるが、なぜだろう…やる気が出ない。
そんな私に、いつも一緒に作業をしている使用人が声を掛けてきた。
「お嬢様が今開発している、お酒。かなりいい出来になっていますよ。味もかなり美味しいです。早速見て下さい」
日本酒がうまく出来ているのだろう。本来なら喜んで見るはずなのに、なぜだろう。今はそんな気分じゃない…
「ごめんなさい、なんだか今日は疲れているみたいで。また別の日に見せてもらうわ」
そう伝えると、早々に建物を後にした。
せっかくだから、料理でも…そう思ったものの、やっぱりやる気が出ない。
結局部屋に戻って、ベッドに横になる。暇ね…
ボーっとしていると、ついリュカ様の事を考えてしまう。
リュカ様、今頃授業を受けている頃かしら。もしかして、今頃マリーゴールド殿下と…
またくだらない事を考えてしまう。
結局その日は何も手に付かずに過ごしたのであった。
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