第43話 トラブル発生です
フェリース王国からゴーン王太子殿下とマリーゴールド殿下がいらしてから、1週間が過ぎた。相変わらず私とリュカ様に絡んでくる2人。さすがにいい加減にしてほしい。
マリアナも同じことを思ったのか
「ちょっとあの2人、図々しすぎない?大体、周りの空気なんてお構いなしにグイグイ来るのですもの。それに、毎回ジュリアのお弁当を奪い取っているし。リュカ殿下が怒っても、お構いなしだものね。ジュリア、あなたちょっとはガツンを言いなさいよ。あなたが優しすぎるから、あいつらが調子に乗るのよ」
そう言われた。でもやっぱり私には、他国の王族に文句を言う度胸はない。
そして今日は、ゴーン王太子殿下を街に案内する日。とりあえず、一番大きなお店を案内したら、さっさと帰ろうとリュカ様とは話している。物凄く気が重いがリュカ様もいてくれるし、なんとかなるだろう。
いつも通り授業が終わり、リュカ様と一緒に校門のところまでやって来た。なぜか今日に限って、いつも絡んでくるはずのマリーゴールド殿下の姿がない。もしかしたら、先に校門で待っているのかしら?あのマリーゴールド殿下が、着いてこないはずがないものね。
そう思っていたのだが…
「やあ、ジュリア嬢。今日はよろしく頼むよ」
馬車の前で待っていたのは、ゴーン王太子殿下だけだ。あら?マリーゴールド殿下はどうしたのかしら?そう思った時だった。
「リュカ殿下!大変です、リューゴ王太子殿下が…とにかく、早く来てください!」
1人の男子生徒が、血相を変えてやってきた。
「兄上が?ジュリア、君も一緒に…」
「とにかく大変なのです。今すぐ!早く」
男子生徒が無理やりリュカ様の腕を引っ張り、連れて行こうとしている。かなり切羽詰まっているのか、すごい迫力だ。一体何があったのかしら?
「すまない、ジュリア。すぐに戻るから、そこで待っていてほしい」
そう言い残すと、男子生徒と一緒にどこかに行ってしまった。ちょっと待って、この状況は…
「なんだかリュカ殿下、かなり慌てていた様だね。外で待っていても仕方がない。馬車の中で待っていよう」
そう言うと、私を無理やり馬車に乗せようとするゴーン王太子殿下。さすがに2人きりで馬車になんて乗りたくはない。
「私は大丈夫ですので、ここで待っていますわ」
そう伝えたのだが、それでも無理やり馬車に乗せようとするゴーン王太子殿下。どうしよう…その時だった。
「待って、ジュリア、ゴーン王太子殿下。私も行くわ」
やって来たのは、マリアナだ。そのまま馬車に一緒に乗り込むと、私の隣に座ろうとしたゴーン王太子殿下を押しのけ、私の隣に座った。
「マリアナ、あなたここにいて大丈夫なの?今リューゴ王太子殿下に何かあったみたいで、血相変えてやってきた男子生徒に、リュカ様が連れていかれたわよ」
「あら?おかしいわね。リューゴ様は今日は生徒会の集まりで、今の今まで生徒会室にいらしたわよ?」
なぜかジト目でゴーン王太子殿下を睨むマリアナ。まさかさっきの男子生徒は、ゴーン王太子殿下の指示でリュカ様を連れて行ったのかしら?
「とにかく、早く行きましょう。どうせリュカ殿下を置いていくつもりだったのですわよね」
満面の笑みでそう言ったマリアナ。そんなマリアナをゴーン王太子殿下が睨んでいる。結局そのまま馬車は走り出してしまった。リュカ様の事、待っていなくてもいいのかしら?
そんな事を考えていると
「今日は王都のお店を案内してくれるんだよね。どんな風にお店で作っていて、どんな風に販売されているのか見るのが楽しみだよ」
嬉しそうにそう言ったゴーン王太子殿下。元々おせんべいに興味を抱いて下さってこの国にいらしたのだ。もしかしたら、純粋にお店を見たかっただけかもしれない。
「お店では、王宮ではお披露目できなかったお菓子もたくさん販売されておりますので。ぜひ試食してみてください」
「そんなにいろいろなお菓子があるのかい?それは楽しみだな」
そんな話をしている間に、お店に着いた。相変わらず、すごい行列が出来ている。
「すごい人気店なんだね。さすがジュリア嬢だ」
「ありがとうございます。どうぞこちらからお入りください」
裏口から入ると、今日も忙しそうに皆が作業をしていた。せっかく来ていただいたのだから、1つ1つ丁寧に説明していく。でも、なぜかお菓子を見ず、私の方ばかり見つめているゴーン王太子殿下。さすがにやりにくい…
「あの、殿下…お菓子を味見してみますか?」
とにかくこの状況を打破したくて、大判焼きを差し出した。
「ああ、頂くよ」
早速食べ始めた。お味はどうかしら?
「これは、とても滑らかな舌触りだね」
「あい、丁寧にあんこを潰しておりますので」
「やっぱり君は天才だ!そうだ、お店の見学はこれくらいにして、今から君に贈るプレゼントを買いに行こう。何がいいかい?宝石?それともドレスかい?遠慮する必要は無い。私は王太子だ。金ならいくらでもあるからね」
ものすごい勢いで迫って来るゴーン王太子殿下。どうしよう、正直この程度の案内で、プレゼントなんて貰えない。そもそも、リュカ様以外の男性からプレゼントをもらうなんて…
隣で呆れた顔をしているマリアナに、目で助けを求める。すると、は~とため息をついたマリアナ。
「ゴーン王太子殿下、ジュリアにはれっきとした婚約者がおりますので、プレゼントはいかがなものかと。それから、今回お店を案内すると言うお話しでしたので、これで目的は達成です。さあ、帰りましょう」
私の腕を掴み、お店を出ると、そのまま馬車へと向かって歩き出す。後ろから物凄く不満そうなゴーン王太子殿下も付いて来た。
「マリアナ嬢と言ったね。少しくらいプレゼントをしてもいいと思うのだが。これは私の気持ちなんだ!第一、君にとやかく言われる筋合いはない」
「いいえ!私はこの国の王太子でもある、リューゴ様の婚約者です。さらに、ジュリアの親友でもあります。親友が困っているのを、みすみす見過ごすわけにはいきませんわ。それでは、私たちはこれで失礼いたします。殿下は気を付けてお帰り下さいね」
そう言うと、いつの間にか来ていた公爵家の馬車へと乗り込んだのであった。
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