第26話 有名声優の日課を実際にやってみた
「あああああ――ごぼぼぼぼぼ――ゲホッ!! ゲホゲホッ!!」
シャワーから出てくる水を口に含みながら、ああああああって言っていたら、気管に水が入ったかも知れない。
「あー、目ぇ覚めた」
有名声優さんの日課の喉ケアを試しにやってみたけど、逆に喉痛めそうだな、これ。
朝起きてすぐに、俺は目覚ましを観てげんなりした。
いつの間にやら昼まで寝ていたらしい。
服装は昨日の夜のままだ。
どうやら家に帰ってからそのまま寝たらしい。
鏡を見るとゲッソリしている。
久しぶりに酒を飲んだせいだけじゃないはずだ。
「行かなきゃ良かったな、同窓会……」
やっぱり同窓会なんて参加しなければよかった。
こんなに酷い気分になるとは思わなかった。
友達なのに気を遣って話していた気がする。
正直、前澤社長と話している時の方が気が楽だった。
ひたすらマウントを取って来て、しょうもない過去話ばかりして、ただただ自分の立ち位置を確認する為だけに同窓会をしているようだった。
「あと、酒飲めるのがそんなに偉いのかな」
大学生の時とかだったら分かる。
ずっと禁止されているものが解禁されて嬉しがる気持ちは。
だが、社会人にもなってお酒の強い弱いでマウントを取って来るとは思わなかった。
俺はお酒が飲めないから、ひたすら飲まされた。
ビール、三杯、四杯でもキツいっていうのに。
「タバコ自慢は減ったんだけど、なんで酒自慢は減らないんだ……」
タバコは健康に悪いからか知らないが、世間のヘイトは高い。
タバコが吸えない施設も増えて来た。
ただ、お酒はアリなんだよな。
あれはあれで飲酒運転に繋がるから不味いと思うんだけど。
あと、太る。
腹のぜい肉を指で掴む。
酒と揚げ物のせいでまた太った気がする。
だから飲み会は嫌いなんだ。
運動しないと。
本当だったらスイミングスクールとか通って痩せたいんだけどな。
その金と暇がない。
「はあ」
風呂場から出てバスタオルで全身を拭いていると、何やら部屋の奥から振動音がしてきた。
「ん?」
俺は部屋に戻ると、振動音が止む。
振動していたのは、スマホだった。
結構長い間鳴っていた気がするな。
「え?」
ズラリ、と『ビサイド』の事務所から着信履歴があった。
五回以上は着信があったみたいだ。
昨日の夜辺りから、ずっと着信があったみたいだけど、何があったんだろう。
「あの、すいません。天音です」
「遅い。何やってたの!!」
頭に響く大きな声で、前澤社長が怒鳴る。
思わずスマホを遠ざけて耳を触る。
「す、すいません。昨日は飲み会があって、さっきまで寝てました」
「そう……」
「何かあったんですか?」
誰が問題でここまで鬼電されたのかは大体予想できてしまうが、そう聞かざるを得なかった。
「あなたの担当Vtuberのキラリが大変なの。今すぐ私がそっちに向かうから」
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