第24話 一つのパフェを二人で食べるEND
キラリと会議室で打ち合わせをしていると、食品の配達員がやってきた。
キラリが注文したものは、まさかのスイーツだった。
「甘いものがないと生きていけません!!」
と何故か偉そうに言い放ったキラリは、大きめのパフェを二人で食べようと提案してきた。
当然最初は拒否をしたのだが、こんなパフェを一人で食べたら太ると言い出した。
だったら、最初から頼まなければいいのに、と思いながら、俺は反対側からパフェを食べ始めた。
「はあ……」
まあ、大きめのパフェと言っても、SNSで拡散されるようなドでかい映えるパフェではない。
そのぐらいの大きさのパフェだと崩れるだろうから、配達しづらいんだろうな。
配達のメニューには載っていなかった。
「二人でパフェを食べるってやってみたことだったんですよ!! これってカップルっぽいですよね!!」
「ま、まあ……」
またもや写真を撮っているけど、あんまり共感できないな。
異性とパフェを食うのが楽しいって、きっと若いから憧れているんだろうけれど、俺的には恥ずかしさの方が勝っているんだよな。
俺は時計で時間を確認する。
まだ時間は大丈夫だな。
打ち合わせは終わったのに、キラリに付き合って遅れるなんてしたら嫌だからな。
時間はちゃんと確認しとかないと。
「今日はなんだか時計よく見ますね? 待ち合わせですか?」
「いいや、そういう訳じゃないけど」
「怪しいですね……。もしかして彼女でも出来たんですか?」
「えっ……」
思わず固まってしまうが、その俺のリアクションを変な意味で解釈したらしい。
「えっ……本当に……」
「ち、違うから!! ただまあ、人と約束しているのは当たっているかな」
「そ、そうですか!! あ、安心しました……」
「なんで?」
「私よりも先に、モテなさそうなマネージャーが異性のお付き合いしている人ができたらショックじゃないですか」
「キラリにそう思われていることに俺はショックだよ」
そこまで露骨に思われているなんて。
まあ、彼女なんて将来出来る訳ないしな。
この年齢で結婚していなかったら、もう彼女もできないだろ。
三十代、四十代で未婚よりかも、バツイチの方がモテるって聞くし。
この年齢で一度も結婚していない方が世間的にはおかしいらしい。
そう考えると俺の人生って虚しいもんだな。
「それじゃ、友達ですか?」
「友達、ね……」
世間的には恋人よりかも友達の方が、作るハードルが低いことになっている。
だが俺は一概にはそう言えないと思っている。
「知ってるか? 友達の意味の英単語『Friend』の最後のスペルって『end』って読むってこと……」
「なんでいきなりポエマーみたいになったんですか?」
「……タイムマシーンができるのっていつになるんだろうな……。ドクが作ってくれるはずなのに……なんでまだ作られてないんだ。やっぱりジゴワットが存在しないから理論上不可能なのか……」
「……何の話をしているんですか?」
ネタでも何でもなくキラリはドン引きしていた。
これがジェネレーションギャップってやつか。
知識ハラスメントともいえるかも知れない。
うーん。
割と有名な話かと思ったんだけど、全然響かなかったな。
今度からはこの話なるべく控えるようにしよう。
あまりにも名作で有名作品のネタだったから、誰でも分かると思ってしまった。
「友達なんてものはいなくなるもんなの。クラスの中心人物だっていつかは友達なんていなくなる。大人になれば、みんな自分一人か、家族以外のことに目を向けることができなくなるんだ。キラリの両親には友達がいるか? 家に遊びに来るか?」
「それは、まあ、来ないですね……」
「そう。たまに旅行に行くぐらいだろう。だから、友達なんていなくてもいいんだ」
「……長々と友達がいないいい訳をしたんですね……」
ようやく理解してくれたみたいだ。
ただ、そのまとめ方だと俺が全部、自己正当化の為にベラベラ喋っていたと思われそうなので辞めて欲しい。
「じゃあ、誰と待ち合わせなんですか? まさか……ミラちゃんとか」
「なんでそこでミラちゃんが出てくるんだ」
「最近ミラちゃんと会う度にマネージャーのこと訊かれるんですよ。何かしましたか?」
「いや、特に」
そうかー。
ミラちゃん俺のこと気にしてくれているのかー。
それを知れただけでもなんか癒されるなー。
「何ニヤニヤしているんですか。気持ち悪いですよ」
「してない!!」
俺はスマホに無意識に触る。
少し前に連絡がきたのだ。
名前は覚えていたけど、最後に会ったのはいつだったかは覚えていない。
「友達じゃない。ただの昔のクラスメイトからだよ」
高校生の時のクラスメイトなんて記憶にある訳がない。
俺以外の奴はみんな集まって何やら遊んでいたこともあったみたいだが、俺は誘われてない。
誘われたとしても俺は行かなかっただろうけどな。
「いつもの俺だったら行く気にならなかったな」
「どうして行く気になったんですか?」
「……なんとなく、かな」
この年齢ということもあるし、それに天職っていう大きな転換期を迎えた。
だから、いつもと違うことをしたくなったんだと思う。
「クラスメイト数人と会うんですか?」
「いいや、数十人だな」
大勢で飲み会をすることになっている。
きっと、酒飲まないと、もっと飲めとか言われるんだろうな。
「今日は同窓会なんだ」
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